長野県の農産物といえばりんご、ぶどう、桃などの果樹、白菜やレタスなどの高原野菜。意外に思われるかもしれませんが、「花」もまた、生産者が切磋琢磨しながら産地を守る農産物のひとつなのです。
食べものに比べて、花がどこでどうやって作られているのか、あんまり考えないですよね。今回は「母の日」といえばのあの花。長野県が生産量日本一を誇るカーネーションの産地一緒に見てみましょう！
長野県でカーネーションの生産が盛んなのは、県の東部に位置する佐久地域。「JA佐久浅間」が管轄するエリアです。
JA佐久浅間管轄エリア
佐久市・佐久平駅は軽井沢駅のとなり。北陸新幹線で東京駅から、およそ1時間20分です。
標高約1000mの軽井沢は避暑地として有名ですが、標高700mを超える佐久地域も涼しい気候です。新宿駅が標高40mですから、まさに高原地域ですね！
JA佐久浅間本所から望む浅間山（JA佐久浅間公式Xより）
ちなみに佐久出身の有名人といえばコミック『北斗の拳』の作者、武論尊さんです。佐久南ICすぐの道の駅「ヘルシーテラス佐久南」ではキャラクターグッズが売っています。
そして佐久平駅前には『北斗の拳』の登場人物、ラオウ、トキ、ユリア、ジャギ、ケンシロウ、サウザー、レイの7人が描かれたマンホールのふたが、北斗七星状に配置されているそうです…。
また、佐久市には男子高校駅伝の強豪校・佐久長聖高校もあります。
カーネーションの和名は「オランダ石竹」（初代～金銀ポケモンのセキチクシティを思い出した方は同世代…）。
カーネーションは高温多湿や長雨には弱く、日当たりの良い、乾燥した気候を好みます。
佐久地域は全国トップクラスの晴天率を誇り、気候は乾燥し、気象観測開始以来、熱帯夜を記録したことがありません。さらに昼夜の寒暖差が大きいので、色鮮やかな花が育ちます。県内では比較的降雪量が少ないため、ビニールハウス倒壊の心配も少ない、まさにカーネーション栽培にぴったりな土地です（人間も住みやすい！）。
道の駅「ヘルシーテラス佐久南」からの景色。訪れた日も晴天でした
では、カーネーションの生産現場を見てきましょう！
今回はJA佐久浅間管内、佐久穂町の花き生産者 阿部和博さんの栽培ハウスを見せていただきました！
カーネーション生産者の阿部和博さん
阿部さんは2棟のビニールハウスで約2万本のカーネーションを育てています。取材は2月中旬、標高が高く寒い地域ですが、ビニールハウスの中はあたたかい！
.jpg?width=680&height=510&name=noutiku04-20250226%20(2).jpg)
阿部さんのハウス内部の様子
１年を通してどんな作業をしているのか、栽培のサイクルを教えていただきました。
1月中旬：苗を種苗会社から購入し、ポットに仮植
3月上旬：土づくり、消毒、ハウス内へ定植
6月上旬～：収穫開始
7月上旬～8月上旬：一番花の収穫で最盛期を迎える
8月中旬～3月上旬：二番花の収穫が続く。並行して苗の管理、土づくり
「7月上旬までの花は一番花といって生育が早く、一気に育ちます。この頃が一番忙しい最盛期。8月お盆過ぎから温度が下がり、ゆっくり生育していくのが二番花。これは3月上旬まで収穫しています」（以下、阿部さん）
一番花、二番花は同じ株から収穫し、1株から合わせて10本くらいとれるそう。すべての株の一番花が同時に咲くと作業が立て込んでしまうので、一番花の開花がずれるよう調整して苗を植えます。
「気温が高く、一番花はあっという間に育ってしまう。朝5時から収穫して、お昼の時間帯は暑くてハウスじゃ作業できないから、夕方から作業開始。収穫した花を等級ごとに選別してJAへ出荷する準備をします」
「作業は1年を通してすべて大変だけど、最盛期は収穫・脇芽取り・水あげ・消毒が重なるから、特に大変ですね」
栽培サイクルを見るとおり、1年を通して作業が止まることがありません。休めるタイミングはあるのでしょうか。「2月中旬の今くらいなら、調整して旅行とかに行けるかな」とのこと。
「気をつかうのは生育段階に合わせた肥料の管理、さらに近年の温暖化で夏場の害虫の予防、防除も大変です。高温対策に設備も検討しているのですが、最近は肥料も何でも値上がりしているので、なかなか」
取材時は、収穫が終盤に近づき、土づくりが始まっていました。
土づくりでまず大事なのは消毒。100℃の蒸気で土を消毒します。
苗の定植を待つ土
「良い菌を含んだ土が良い土。人間の腸内細菌と同じです。悪い菌を取り除いてからでないと、施肥をしても意味がないんです」
驚いたのは、土がすごくフカフカなこと！ 定植した苗は、この柔らかい土の中で育ちます。
ご自宅のハウスでは苗が育っていました。時期がきたら先ほどのハウスに定植していきます。
最初はこんなに小さい！
阿部さんのハウスでは現在7品種を育てています。そして、阿部さんのカーネーションは全農長野の信州フラワーショーで、さまざまな賞を受賞しています。
栽培されている品種の一部をご紹介します。カーネーションといえば赤や白のイメージですが、改めて見るといろんな色がありますね。
モモカ（花の写真はすべてJA佐久浅間提供）
バイパーワイン
バイパー
ブリザ
ミモザ
JA佐久浅間のカーネーションは「母の日」が過ぎてから収穫期を迎えます。ご覧のとおり、さまざまな色合いで、ブライダルから仏花まで用途は多岐にわたり、花の中では手頃で扱いやすいため、年間をとおして高い需要があります。
阿部さんが栽培でこだわっていることは「カーネーションはお日様が好きな植物だから、日に当てることを特に心掛けています。ただ、夏場はハウスの温度が上がりすぎてしまうので、遮光カーテンで調節したり、換気をしながら様子を見ています」とのこと。
確かに、ハウス内ではこれから咲く花のつぼみが一生懸命お日様の方に向いていました。植物としては当然なのですが、実際に見るとかなり感動します。
日の差す方へつぼみを向けるカーネーション。なんだか健気です
阿部さんは、就農して30年以上になります。親が菊やカーネーションなど切り花の栽培をしていたものの、自身は育苗の技術に興味があったため、独立して育苗を専門に農業を始めたそうです。
しかし、苗を出荷していた種苗会社が国内生産を停止し、切り花生産に転換することに。「紆余曲折あったんですよ」と笑います。
産地としての歴史を築いてきたJA佐久浅間で、地域の生産者同士で「どの薬が効くか、どの肥料が効くか」などの情報交換をしながら、「仲間とのつながりは本当に大事」と阿部さんは言います。
なかなか生産者のことは見えづらいですが「消費者のみなさんには長野県ナンバーワンの佐久浅間ブランドを知ってもらえたらうれしいですね」と思いを語ってくださいました。
「近所の方におすそわけしたときに『阿部さんの花は、ほかのより持ちが良いね！』と言ってもらえるのがうれしくて。もっといい花を作ろうと励みになります」という阿部さんに、家庭でカーネーションをさらに長持ちさせる方法を教えてもらいました。
「水が汚れないように、こまめに変えてください。漂白剤を数滴入れると水が汚れにくくなります。涼しい場所に置くのが良いので、長く楽しむなら冬場かな」
「母の日に売っている鉢植えのカーネーションは、花が咲き終えた後、根元ギリギリまで茎を切って、根をほぐして植え替えてください。うまくいけば、さらに2、3回咲かせられますよ。日当たりの良い場所に置くのが良いですが、外だとすぐ虫がついたり病気になってしまいます」
ぜひ参考にして、冬場こそカーネーションを楽しんでみてください！
佐久地域は、カーネーションのほかにも魅力たくさん！ ほんの一部をご紹介します。
この仕事に就くまでプルーンといえば「ミ●プルーン」しか知らず、食べたこともなかった筆者なのですが、生のプルーンめちゃくちゃおいしいんです！
長野県オリジナル品種も開発されており、個人的には「オータムキュート」という品種が大好き！（旬になるとお裾分けしてくれる、佐久から出勤する職員に感謝）
丸かじりすると甘くてジューシー。なのに、さっぱりとした味わいが口いっぱいに広がります。
佐久がプルーンの産地だということ、ぜひ知っておいてください。
〇佐久浅間のプルーンを詳しく知りたい方はこちらの過去記事をチェック！
秋も元気に美しく！ビタミンたっぷりのプルーンを食べよう
甘くて大玉のプルーン「オータムキュート」を食べたい！
JA佐久浅間ヨーグルト工場で作られるヨーグルト商品は、その5km圏内の酪農家から集められた新鮮な牛乳を使用した、まさに地産地消商品です。
残念ながら小売りでの全国展開はしていませんが、ネットショップで買えますよ！
約30年の歴史を誇るロングセラー商品。歴史がそのおいしさを証明していますね。まろやかな口当たりと甘みが、どの季節に飲んでも変わらぬおいしさです。
〇「望月高原ヨーグルト」を詳しく知りたい方はこちらの過去記事をチェック！
地元の新鮮な牛乳で作る望月高原ヨーグルト
搾乳したての生乳で作る「望月高原ヨーグルト」
望月高原ヨーグルトの購入はこちら（CTA）（ヘルシーテラス佐久南オンラインショップ）
https://healthyterrace-shop.jp/products/list?category_id=20
佐久地域といえば、鯉！
佐久では伝統的に鯉を食べる文化があります。鯉といえば、池で泳ぐあのイメージですが、清流で適切に管理され、泥を吐かせた鯉は臭みがなく、とてもおいしい…そうです。
じつは、筆者はまだ食べたことがなくて…。今年は佐久の鯉料理食べてみたいなあ。食べたら鯉に恋しちゃうかもね！（うわッ…）
左奥が「鯉の洗い（刺身）」。右奥は「鯉こく」。筒切りの鯉を味噌汁にしたもの。手前が「鯉のうま煮」。筒切りにした鯉をしょうゆ、砂糖、みりん、酒で煮たもの
〇佐久の鯉に恋したい方は、こちらの過去記事をチェック
さっぱりおいしい佐久鯉 地域に根差したあっぱれの食文化
「むしり」を知っていたら、相当の信州マニアかも!? 塩尻・松本エリアのローカルフード「山賊焼き」が徐々に市民権を得てきているように感じますが、こちらは知る人ぞ知るといったところでしょうか。
シンプルな味つけで鶏肉の旨みを思い切り「むしって」味わい尽くしてください！
〇「むしり」って何？という方はこちらの過去記事をチェック
ジューシーでパリパリ！ご当地チキン「むしり」を囲もう
佐久地域では。冷涼な気候を生かした高原野菜作りが盛んで、ほかの地域では作れない夏場に最盛期を迎えます（カーネーションと一緒ですね）。
夏に出回る葉物野菜は、ほどんどが長野県産のはず。ぜひ産地をチェックしてみてくださいね。
〇JA佐久浅間の高原野菜について知りたい方はこちらの記事をチェック！
みずみずしい朝採りの高原野菜を味わって：軽井沢町
今回はカーネーションの生産現場と、その有数の産地である佐久地域をご紹介しました。「母の日」から少しずれて登場し、ブライダルから仏花まで幅広い需要に応えてくれるJA佐久浅間のカーネーション。
野菜の産地を確認することはあっても、お花屋さんで産地を意識することって、あまりないですよね（筆者もそうでした）。
店頭の美しいカーネーションを見たら、産地である佐久地域のこと、そして育てている生産者のことを思い出していただけたらうれしいです♪
取材の後、阿部さんからお土産にいただいたカーネーション。花持ち抜群です！
こちらは
の記事です。
農畜産物や店舗・施設の状況は変わることもございますので、あらかじめご了承ください。
JA佐久浅間の農産物が買えるところ
〒385-0061 長野県佐久市伴野7番地1
電話：0267-78-3383
JA佐久浅間について
おとうふ
関連記事
前のページ
