ずっしり持ち重りのするカーネーション

カーネーション

スタンダードモモカ

今回は八ケ岳連峰の反対側(北東側)、JA佐久浅間管内の佐久穂町を訪ねました。

長野県は夏でも涼しい気候を利用して花き栽培が盛んです。カーネーションは長野県が日本一の生産量を誇る花のひとつ。県内では八ケ岳連峰を挟んでJA信州諏訪とJA佐久浅間が1、2位を占めている代表的な産地です。

同町花岡地区。小林芳文さんはハウス2棟、約17aでカーネーションを栽培しています。

父に学び、父と議論しながら整えた栽培方法

訪ねた6月末の午前10時過ぎ。小林さんは収穫したカーネーションを草丈など規格ごとに選別する作業に当たっていました。5時前から収穫していたそうです。
カーネーションもコロナ禍で結婚式などイベント需要が激減。市場は低迷していますが、花の生長は待ってはくれません。小林さんは、秋の婚礼需要など回復に期待して作業を進めています。

カーネーション

小林さん夫妻。今年91歳になる芳文さんのお母さんと3人でカーネーション栽培に取り組んでいる

同地区は、日本の切り花栽培の草分け。養蚕から転換して、昭和30年代に始まった菊の栽培では、「薦(こも=荒いむしろ)で巻いてタクシーで高崎まで運んで(市場に)出荷。それでも相当な利益が出た」といった父親らの話を聞いているそうです。
とはいえ、小学校時代から、夏休みといえば朝から出荷の手伝い。「早く学校が始まらないかなぁ」とつくづく思っていたとか。夏場に出荷が集中する菊に代えて、父が試行の末選んだカーネーションは6月から11月まで、比較的コンスタントな収穫、出荷が見込まれますが、「自分が継ぐとは思ってもみなかった」と振り返ります。

カーネーション

 

きっかけは14年程前にさかのぼる突然の父の病。半年の入院中は妻の和子さんが保育士の仕事を辞めて母の手伝いをすることでしのぎましたが、いつまでも女手任せにしておけません。
福祉関係の職から転身。退院した父が、まだ元気だった3、4年の間に、学び、議論しながら整えた栽培方法が現在の小林さんの栽培のベースになっているそうです。

仮植のひと手間で健康に

一番の特徴は、苗を購入してから花をつけ、出荷するまでに育て上げる定植の前に、仮植という段階を挟むこと。育てた苗を一回抜いて植え直す手間はかかりますが、こうして育てたカーネーションは節の数が多く、茎の中もしっかりとつまり、ずっしりと持ち重りがします。日持ちも「全然違います」(小林さん)。目指す「ずっしりと重たくて健康なカーネーション」作りには欠かせない作業です。
「もともとは早く花を咲かせるためにおやじが取り入れた方法ですが、最近はそれだけではないと気づきました」
苗をそのまま定植して育てる一般的な直定に比べ、仮植をする小林さんのハウスでは、葉先が枯れる障害など、多くの農家で問題になっている病気の発生も少ないそうです。直定では比較的簡単に苗を抜くことができますが、仮植をした苗は根が張り、ねじり切らないと抜けないほど太く丈夫です。小林さんは、高品質で健康なカーネーションづくりの第一歩と考えています。

カーネーション

トラクターに付けてハウス内を深耕する農具を手にする小林芳文さん

土づくりでも独自の工夫をしています。
もともと水田地帯で、水はけの良い土壌を好むカーネーション栽培には厳しい面がありました。父の結論は、11月の収穫終了後、毎年、バックホーで大規模に天地返しをすることでしたが、灰色の粘土層まで掘り起こす作業に疑問を持った小林さんは、プラソイラと呼ばれる専用の農具で、溝を切り、地下の堅い耕盤を壊して水を抜く形に改めました。さらにもみ殻など有機質をたくさん入れ、肥料は最小限にとどめるのが小林流です。
このため、小林さんのハウスでは一般的な栽培ベッドが見当たりません。通路を含めて毎年、徹底的な土づくりを施すため、病害虫の発生も抑えやすいと言います。

納得できる作品を目指して

カーネーションは大別して1本の茎の先に1輪の花をつけるように仕立てるスタンダード系と、枝分かれした茎に複数の花をつけるスプレー系の2種類があります。小林さんのハウスでは、主にイベント需要で活躍するスタンダードが中心。それも赤、白、ピンクのオーソドックスな花色の品種に絞っています。
「自分で『ああ、きれいだな』と思う花を作りたいから」
理由は明確です。

カーネーション

アメリカ

カーネーション

ドヌーブ

虫がつきやすく生産者には敬遠されがちな真っ赤な「アメリカ」は、手掛けて15年ほど。上品なピンクの「ドヌーブ」は10年ぐらい、淡いピンクで紫の縁がつく花弁が特徴的な「クリスティーナ」は7、8年、それぞれ作り続けています。

カーネーション

花の状態を確かめながら収穫する小林さん

「なくしていい品種はない」が信条。1年で思い通りに作れると思ってはいないので「最低3年は続ける」という自身の掟(おきて)をつくり、毎年品種ごとに工夫を加えながら取り組んでいるそうです。

出荷の始まりとなる6月。例年ならジューンブライドで秋とともに需要が盛り上がる時期ですが、今年はほとんど動きませんでした。
「長年やっているといろんなことがある」と小林さん。「ブライダル用の品種を使ってくれていた人が一番困っているだろう」とイベント関係者の心情を思いやります。一方で「こんな時だからこそ、家の中に花があれば、気持ちも優しくなれるのでは」と、一般家庭での花の利用シーンにも思いをはせています。

カーネーション

 

最後に長く花を楽しむコツを伺いました。日持ちをさせるには、なるべく涼しいところに置き、まめに水を替えること。塩素系の漂白剤を花瓶1本に2、3滴たらしておけば、雑菌の増殖を抑えることができ、さらに有利だそう。首が折れてしまったら、茎を切り詰めてガラスのコップや皿に浮かべて置けば、きれいに咲いて楽しめる、とも。

※小林さんのカーネーションを飾りたい、という方はJA佐久浅間花卉果樹振興センター(TEL 0267-68-1117)阿部さんに相談を

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農畜産物や店舗・施設の状況は変わることもございますので、あらかじめご了承ください。

この記事を書いた人

昭和人Ⅱ

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