急に暑さが増して、一気に夏模様。かと思いきや、梅雨らしく大雨が降ったり、6月らしい気まぐれな気候が続いています。それでも夏へと向かう雰囲気に、冷え性の筆者の心は踊ります。
さて、県内で6月下旬から旬を迎える果物のひとつがブルーベリー。某食品会社の歌が脳内に響きます(♪ブルベリai…以下自粛)。
上品な佇まい。熟度によってカラフルで、目にも楽しい実のつき方
じつは長野県はブルーベリー生産量が全国1位! 今回は長野県飯田市山本の生産者、小笠原 美奈穂(みなほ)さんに収穫の様子を見せていただきました。
長野県はブルーベリー生産量全国1位!
ブルーベリーといえば「目に良いフルーツ」としておなじみですね。
名前のとおり青紫色の天然色素アントシアニンには、視覚機能の改善などの効果があるといわれ、サプリメントなども開発されています。
北米原産の低木性果樹で、5月頃に花を咲かせ、6月下旬から8月まで収穫されます。
個人的にはジャム(またはガム)のイメージが強く、いつが旬か知らなかったのですが、まさに初夏から夏の果物なのですね。
長野県では冷涼な気候と火山灰土壌の場所が多いことを生かし、全国に先駆けて70年代後半から長野県北部の信濃町で栽培研究がはじめられました。
ブルーベリーの花(JAあづみ提供)
わいわい楽しく!早朝からの収穫作業
今回、作業を見せていただいたのは、長野県飯田市の生産者、小笠原 美奈穂さん。飯田市は長野県の最南に位置し、静岡県と隣接し、温暖な気候です。
秋の南信州の風景
いつもは収穫が始まるのは朝の5時から。
取材の日は開始時間を30分遅らせてもらって(感謝)、5時半からスタート。近所のお手伝いの方も一緒に作業開始です。
早朝から始めるのは暑さ対策で、収穫する人だけでなくブルーベリーのため。気温が上がる日中は収穫作業には向きません。農家の朝が早いのはそれが理由なんですね。

「JA出荷分は早めに。近所へ配る分は真っ黒に過熟させてから。食べるときにおいしくなるように収穫時期を調節しています」と小笠原さん。
熟度を見極めながら収穫していきます。一粒ずつつまんで、ぽろんと手の平に落とし、ビク(収穫した実を入れる小さなかご)に入れます。
ひと粒ずつつまんで…
ポロンと手の平に落とします
「ポロポロ採れて楽しいの。これは早生だから小さくて大変だけど、大きな品種は本当に収穫が楽しい」と小笠原さん。
熟度を見極めます
「小さいのはかわいいね」 「小さいから難しいね」「全体が色づいているか裏までしっかり見ないとだから、樹のまわりをぐるぐる(笑)」「取り忘れもあるから、あっちこっち何回もぐるぐる(笑)」
わいわい楽しくおしゃべりしつつ、口だけでなく手も忙しく動かしながら収穫していきます。
朝から楽しく収穫作業!
取材日の6月中旬は、収穫量はまだ少なめ。色がついていない実も、2~3日もすれば収穫時期を迎えます。
この時期はまだ熟していない部分が多いようです
「雨の日が大変なのよね~」と言うとおり、適熟収穫のために雨でもかっぱを着て収穫します。梅雨と収穫時期が重なるブルーベリーの大変なところ。
小笠原さんの農園では安全安心にこだわり、消毒や除草材は最小限に留めていますが、病気はほとんどないとのこと。
「5年前にマイマイガが発生した時は消毒をしたり、かなり対策しましたが、普段は収穫終盤の過熟した実をハチが食べにくるのを『甘いからおいしいんだろうな』と眺めて楽しむくらいですね」とのこと。

やさしく丁寧に、選別は手作業で
さて、収穫したブルーベリーを出荷するため、次は選別の作業です。色、サイズで選別し、規格ごとにパック詰めします。
まずは収穫したブルーベリーをビク(手元にある水色のかご)から出し、葉っぱなどを取り除きます。

実の色味を確認して、消費者の手元に届くまでの時間を踏まえた適熟の実を選んでいきます。
収穫時も見て確認しますが、光の加減で思ったより赤みがあったりするそうで、この段階でもしっかり選別します。一粒ずつやさしく触って、硬さでも熟度を確認。
ちらほらと色むらがあるものを丁寧にはじきます
次はサイズの仕分け。規格ごとの大きさに選別するため、3種類のふるいにかけます。
ふるいの網目の大きさで、実のサイズを選別します
ふるいの網に、みちっとはまる実がかわいい…
色と大きさの選別を終えたら、重さを量ってパック詰めしていきます。
1パック100g、容器を合わせて117gを目指します(※JAの規格は115g。小笠原さんは少し多めにしているそう)
最後に載せるフタの重さを加味しつつ、プロの感覚で微調整…
フタをして…
ドキドキ…
117グラムぴったり!
最後は専用ダンボールに並べて、出荷準備完了です!
ダンボールに描かれたのはJAみなみ信州の「みなみちゃん」
多くの工程のなかで、ブルームという実の表面にある白い粉ができるだけ取れないように丁寧に作業します。ブルームは天然のものであり、実を乾燥から守っています。
収穫→選別→パック詰めまで、ご覧のとおりすべて手作業。熟度の見極めやパック詰めは長年の経験の賜物です。
「一粒ずつ、本当に手間がかかるの。でも、できるだけ規格に合った良いものをしっかり出荷したいから」と手間を惜しみません。
ブルーベリー栽培が健康の秘訣
「栽培のきっかけは、35~40年前に父が大鹿村から苗木を持ってきたこと。挿し木で増やして、近所にも苗木を分けたりしましたよ」
多い時は5〜6軒で栽培していましたが、今は小笠原さんのみ。
「父が亡くなってからは私が栽培を続けました。剪定も除草も何もかもひとりで、70歳まで勤めと両立してやってきて。樹も良い感じになってきましたが、自分も良い年齢になってしまいました」

毎年、収穫が始まると近所の方に手伝いをお願いして、妹を含めて4人で収穫。午後には妹とふたりで出荷準備をするそう。
「お手伝いに来る方も毎年楽しみにしてくれています。みんなで大きく実ったブルーベリーを収穫するのが楽しいんですよ。ブルーベリーがあるから張り合いがあって、健康の秘訣。何歳まででも続けたいですね」と小笠原さんは笑います。
採れたてをいただきました。味も香りも濃厚!
店頭に並んだ粒ぞろいのブルーベリーは、生産者の手作業による収穫と選別の賜物です。
ジャムにしてもおいしいですが、この時期しか味わえない生ブルーベリーを楽しんでみてはいかがでしょうか。
おまけ:小笠原さんお気に入りの品種
小笠原さんの園地ではブルーレイ、スパルタン、アーリーブルー、ウェイマウスなどの品種があり、約150本が栽培されています。
なかでも小笠原さんのお気に入りは「スパルタン」(強そう)だそうで、「一番甘くて大きい」品種とのこと。
お気に入り品種のスパルタン。収穫はまだ先かな?
「生産者はよく言いますが、自分の作ったものをあまり食べないんです。少しでも良いものをたくさん出荷することに一生懸命だから」と笑います。

今年の初物を冷凍保存したもの(スパルタンではないですが)を、おみやげにいただきました!
「おすそ分けした方からは、ジャムにしたり、グラニュー糖をまぶして冷蔵庫においてヨーグルトにかけて食べていると聞いています。数粒をアイスクリームに乗せたり、ちょっとした来客のおもてなしに良いみたい。お上品で彩りもきれいだから、喜ばれるようですね」とにっこりする小笠原さんでした。