長野県は切り花や花木があふれる「花の生産県」です。県内でも千曲市は「栽培発祥の地」として花きの栽培が盛んです。
全国1位の生産量を誇るトルコギキョウ、別名リシアンサスは、現在、流通している品種のほとんどが日本で生まれ、品種改良が進んでいます。
今回はリシアンサス農家であり、育種の第一人者である中曽根 健さんを取材しました。
フリンジ咲きの大輪「コサージュ」の生みの親
中曽根さんは千曲市・力石(ちからいし)の花き農家に生まれ、24歳から家業である花の栽培・育種に携わっています。そして2003年に発表したフリンジ咲きの大輪で人気の「コサージュ」の生みの親です。
コサージュシリーズは、花弁がフリルのように波打ち、180°以上に開く立体感があります。
栽培には高い技術を要するため、全国にいる「コサージュ会」という生産者の会の会員にのみ種子を販売し、生産してもらっています。
中曽根さんは晩生品種を主力に生産しており、白やピンクをはじめアッシュや茶系など、最盛期の6・7月には約4000本、年間で7万本出荷しています。面積は2000坪で、そのうちの1/3は品種開発のため使用しています。
気温の高い場所での栽培は難しいため千曲市では5~7月・10~12月に栽培し、夏場は長野県・上田市の菅平高原で、1~4月は沖縄県など暖かい地域で栽培されているものが市場に出回り、通年でコサージュを楽しめるのです。
リシアンサスのつぼみは、花の色に限らず最初はすべて緑色で、開花とともに徐々に変化していきます。
栽培で気をつけるのは、芽が伸びた際、首が垂れずに真っ直ぐ上へ伸びるようにすること。また、栄養過多にならないように土を洗い流すこと。
さらに、伸びる途中で先をいくつか切り落とし、一つひとつの蕾に栄養を集中させることで花の輪が大きくなり、長持ちするそうです。
栽培の様子はこちら!
フリンジピンクと呼ばれる品種
フリンジマンゴー
NF-ケイト。NFは「中曽根系フリンジ」の略で、中曽根さん開発のフリンジ咲き品種のこと
アンティークブルー
「今年は暖かくなったり寒くなったり気温差が激しいため、ばらつきがあります。病気になる花もあるので、消毒などを行って、栽培管理を徹底しています」
「ハウス内の温度を20度くらいに保ち、ゆっくり育てることを意識しています」と語る中曽根さん。立派な花を作るために栽培管理を徹底していました。
収穫したリシアンサスは、ひと晩水を吸わせて鮮度を保つ処理をして、1束5本を束ねたものを2束ずつ丁寧に箱詰めして、出荷します。
アルストロメリアなどの花は完全に咲く前に出荷しますが、リシアンサスは花が咲いた状態で出荷することで、咲く前に比べてエネルギーの消費が少なく花の持ちがよくなるそうです。
選花から出荷準備までの様子です!
品種育種へ毎日一歩ずつ踏み出す
「バラは4,000年の歴史がありますが、リシアンサスは約60年。これからも品種開発に取り組んでいきたい」と述べる中曽根さん。
リシアンサスの育種は多くの手間と年月を要します。定植してから開花まで最長で10か月かかるため、親を掛け合わせて咲かせたい花にチャレンジするのも、なかなか難しいそうです。
チャンスは1年に1度。トルコギキョウと向き合い続け、日々挑戦しています。
リシアンサスについて語る中曽根さん
おまけ・選花場もお花で彩られていました
中曽根さんの自宅にある選花場では、きれいな押し花が飾ってありました。こちらは奥さまが趣味で作られているものだとか。
「リシアンサスの作品は少ないですが、桜など、さまざまなお花を使って作っているんです」
どれも素敵な作品ばかりで、クオリティーが高く驚きました。
奥さまの作品はこちらです!