JAみなみ信州青年部の果実班が、自分たちの畑で取れたりんごだけで作ったシードル「THE・COZY(ザ・コージー)」。
構想から8年、販売開始から6年。今年もおいしくできあがりました。
プロジェクト発足時にリーダーを務めたJAみなみ信州組合員の福田博之(ふくた・ひろゆき)さんにお話をうかがいました 。
シードル作りのきっかけ
福田さんは長野県南部に位置する飯田市座光寺の果樹専業農家として、りんご・なし・もも・市田柿を栽培しています。
りんごを発酵させて作るお酒・シードル作りを勧められ、自身が所属するJAみなみ信州青年部 果樹班5人のメンバーとともに挑戦してみることに。
青年部とは、日本農業の担い手・中核者と期待される、おおむね20歳から45歳までの青年層が中心となった組織です。
「当時、自分を含めたほとんどのメンバーがシードルというものを知らなかったけど、とにかくやってみようとなりました」
自分たちで作った生食用のりんごが原料
地元ワイナリーへ自分たちで栽培したりんごを持ち込み、できあがったシードルをドキドキしながら初めて飲んでみると「意外といける!」。
その一方「りんごそのものの味や風味、香りが感じられない」とも思ったそう。シードルは、いろんな品種を入れることで味が深まるといわれます。
「りんごの風味や香りを出すにはどうしたらいいだろうか」と考えながら、原料に使用する品種を増やしていきました。
開発当初からの定番品種は、サンふじ・紅玉・王林・シナノゴールドの4品種。
「サンふじとシナノゴールドは味を、紅玉と王林は香りづけを意識して配合しています」
りんごの王様、サンふじ
酸味と甘みのバランスに優れたシナノゴールド
香りの良い紅玉は、製菓にも向きます
香りのよい王林
原料に使用する果実は、発足当初からのメンバーに1名加わり、6名の畑から収穫したもののみ。加工用ではなく、生食用の品質が高いものを使用します。
「りんごの配合率や定番以外の品種など、年ごとに少し変わります」。そして「6人のメンバーがいることで、たくさんの品種をそろえられます」と福田さんは言います。
地域の特産品をめざして
商品名の「THE・COZY(ザ・コージー)」は、メンバーの多くが生産を行う座光寺(ざこうじ)の地名と、英語「COZY(居心地のよい)」をかけて名づけました。
ラベルもかわいいデザインです。
「飯田市では、国際的なイベント『いいだ人形劇フェスタ」』が毎年8月に開催されます。人形劇のまち・飯田を意識してもらえるようラベルデザインを依頼しました」
辛口ラベル。人形とりんごのモチーフ
甘口ラベル。こちらもりんごが!
「飯田市の特産品として地域をアピールする一助になってほしい」という思いを込めて作られたこのシードル。
「ビールの苦手な人にも気軽に手に取ってもらえるように」と開発を始め、できあがった辛口シードルは、すっきりとした味わいが好評だそうです。
看板商品の辛口に加え、要望に応えて甘口の販売も開始しました。
果実の質に自信あり。今年も上出来!
昨年10月に収穫したりんごを原料にした商品が、5月に仕上がりました。
今年はサンふじ・シナノゴールド・紅玉・王林、さらに商品化以降、定番品種に加わったシナノスイートの5品種に加え、千秋(せんしゅう)・スリムレッド・ぐんま名月・北紅(きたくれない)・グラニースミスを入れて、今までで一番多くの品種をブレンドしています。グラニースミスは、加工を前提とした酸味のある品種です。
「きっと今までで一番深い味になっているはずです」と福田さんは胸を張ります。
名前の通り甘みが強く、酸味の少ないシナノスイート
「地域を盛り上げる一助になって地元に恩返しがしたい」と福田さん
写真左から、辛口750ml・375ml、甘口375ml・750ml
商品は辛口・甘口の2種類で、サイズは750mlとハーフサイズの375mlで展開。
販売開始6年目となる今年は、辛口750mlを80本、375mlを720本、甘口750mlを80本、375mlを670本まで生産を伸ばしました。
加工品として販売することで、果樹農家にとって収穫がない時期に収益を得られるメリットもあります。
「りんごの旬ではない時期に観光に訪れた方にも、りんごのまちであることを意識してもらえる飯田の特産品となるように、これからも作っていきたいです」と福田さん。
JAの組合員が作るシードルが、きっと地域を盛り上げてくれるはずです。
いただきました!
筆者も辛口・甘口の両方をいただきました!
辛口は当然甘みがなく、香りはフルーティで、キリっとした飲み口です。単体でいただきましたが、肉料理や濃い味のものに合いそう! おつまみやお料理といただくとよりおいしくなると感じました。
甘口は飲みやすく、後味にしっかりと甘みが感じられました。こちらは辛口とは逆に、単体でも楽しめる味わい。ぐんぐん飲めてしまうので、飲みすぎ注意です(アルコール度数は辛口・甘口ともに8パーセント)。
福田さんによると、辛口の方が人気とのことですが、個人的には甘口が好みでした! デザートのようにちょっとずづ味わいながら、じっくり飲みたい1本です。