山辺地区のぶどう団地から松本市内を眺める
眼下に広がるその眺めは「ぶどう団地」と呼ばれ、ぶどうの葉が辺り一面を覆いつくして家が埋れてしまいそうなほどです。晴れていれば、乗鞍岳や北アルプスといった素晴らしい展望が望めるのだとか。 標高600~1,000mに位置する松本市山辺地区は、県内で最初にぶどう栽培が始まったとされるデラウェアの一大産地です。
この地で農業に腰を据えて17年目となるJA松本ハイランド ぶどう部会副部会長の村田厚さんのもとを訪れました。 「今は色付くのを見守っているところ」というデラウェアは、若干色付き始めたところで、ほとんどは若くて青い房。はるか先まで格好の同じぶどうが連なっている景色は幻想的ですらあります。
大人から子どもまで比較的手軽に購入できることもあってか、デラウェアは誰にでも親しまれるぶどうです。学校給食で食べた方も多いことでしょう。最近は、種なしのシャインマスカットや巨峰といった大粒種(粒が大きい品種)が持てはやされることが多く、村田さんの周りのぶどう農家でも、デラウェアから大粒種に切り替える人が多いそうですが、市場関係者からは「もっと山辺の『デラ(デラウェア)』を出して!」との熱い要望が。巷では根強い人気があるデラウェアです。
現在、6反歩ものデラウェアをはじめ、シャインマスカットや黄華(おうか)、シナノスマイル、巨峰、ピオーネといったぶどうのほかに、桃とりんごも栽培している村田さん。「とにかくデラウェアづくりは奥が深い!」と言葉に力が入ります。 しっかりした甘味とそれを引き立たせる酸味との調和によって、当たりハズレといった味のブレがなく、安心しておいしく食べられるデラウェア。ちなみに、巨峰の糖度は16度以上のところ、デラウェアは18度以上で、最高では22度にもなるという果物の中でもダントツの甘さです。 しかし、じつは一番栽培に気を遣うデリケートなぶどうだそうで、「とにかく気難しくて、手間がかかるんだ」と。それは「ぶどうづくりはデラをつくらせればわかる」といわれるほどなのだとか。
色づき始めるぶどうたち、今は色づきを見守っているところ
その理由を簡単にいくつか教えてもらいました。 まず、デラウェアは種なし化のためにジベレリン処理を行いますが、処理後3日以内に雨が降ってジベレリン液が流れ落ちてしまったり、処理の翌日に露が降りなければ、効果がなくなってしまうため、再度処理を行わなければならないのだそうです。 また、摘粒(粒を間引くこと)によって成長前に粒と粒とに隙間をつくっておくことで、各粒が大きくなれるようにしますが、間引く粒の数は多いもので、ひと房につき30~40粒。シャインマスカットの摘粒が10粒程度であるのと比較すれば、いかに労力がかかっているかおわかりになるでしょう。それを出荷規格に合わせて10~12cm程の房の長さに調整しています。加えて、太陽の強い日差しを浴びすぎるとしなびるし、雨に当たれば粒が割れる(皮が破ける)...と、日々の気象状況には気の休まる時がありません。
8月、収穫期を迎えたデラウェア(写真提供:JA松本ハイランド)
デラウェアは「技の見せどころ!」と手を焼きながらも、村田さんの表情は自信に満ちた様子でした。あと2、3週間経てば、見た目も味も、より一層デラらしくなってくることでしょう。さらに、後半にいくほど酸味よりも甘味のほうが勝ってくるといいますから、何度も食べれば味の変化が楽しめますね。
「子どもの頃は、夏の暑い時期、そうはアイスが買えなかったから、これ(デラウェア)を冷凍して、よく食べたもんだよ」を笑う村田さんを真似て、冷凍しても良し、食べ方を工夫してみるのもアリです。
そうそう、購入したら房の中を覗いてみてください。軸の先に粒が付いていない部分を見つけたら、それは誰かが先にこっそりと味見をしたわけではなく、房の成長に必要だった摘粒の名残です。
JA松本ハイランドのデラウェアは、8月上旬から9月中旬頃まで生産される予定です。
<販売先> ■JA松本ハイランド ファーマーズガーデンやまべ 住所:長野県松本市入山辺1315-2 TEL:0263-32-3644 ■JAタウン「全農長野 僕らはおいしい応援団」
こちらは 2020.07.21 の記事です。農畜産物や店舗・施設の状況は変わることもございますので、あらかじめご了承ください。
すし☆すぶた
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