長野市街地から車で約30分ほど、標高500~700mに位置する上水内郡飯綱町は、初夏のサクランボやブルーベリーに始まり、夏から秋にかけての桃や梨、リンゴなど、フルーツの収穫ラッシュが12月まで続くという、フルーツ好きにはたまらない場所です。なかでもリンゴは、この町を代表するフルーツのひとつです。
夏真っ盛りの今、この町で真っ赤に実っているリンゴのひとつが、2018年にデビューしたシナノリップ。「千秋」と「シナノレッド」を交配して生まれた長野県のオリジナル品種で、長野県だけで栽培されているリンゴです。
退職を機に数年前から本格的にリンゴ栽培を始たという渋澤正敏さんに、畑を案内してもらいました。
樹高2mほどのリンゴの樹が整然と並ぶ畑には、時折ヒンヤリとした風が吹き抜けます。農村の原風景をそのままに、夏の青空と田んぼのたくましい稲、そしてリンゴの赤い実が何とも見事に映えています。
リンゴならではのこの赤色、通常は気温が低くなることでアントシアニンという成分の働きによって赤く色付きます。よって、これまでは一日中気温が高い夏場は、赤く色づかせることは難しかったのだそうです.このシナノリップは、夏に赤く発色する特徴から「リップ」という名前が付けられたのだとか。
また、夏に収穫されるリンゴは酸味の強いものが多かったのですが、シナノリップは甘味と酸味が適度に楽しめ、かじった時に口いっぱいにあふれる果汁も魅力です。ちなみにシナノリップの開発には、19年もの歳月がかかっています。
収穫はお盆明け頃と少し先ですが、色付きが良いものを試しにひとつ、もいでいただきました。
「夏のリンゴってどうなの(おいしいの)!?」って半信半疑の人だって、「全然アリ!」って思ってもらえるでしょう。驚きのおいしさです!
栽培上でも他の品種と違いがあり、シナノリップに加えて「シナノスイート」「秋映」「サンふじ」といったリンゴを作っている渋澤さんは、「シナノリップはとにかく樹の勢いが強いんです。
花芽をつけてそれが実になるよりも、樹が成長しようと枝を伸ばす勢いのほうが強いために、"誘引"という枝を下に引っ張って紐で固定し、実をつける体制にする作業がこの品種ならでは。手がかかるんです」と教えてくれました。
さらに、「新わい化栽培」によって1本1本の日当たりを良くすることで、糖度の増加が期待できる一方、一番日差しが強い時期ですから「ともすると日焼けを起こし、せっかくのきれいな表面の色や状態が台なしになってしまう恐れもあるんです」と。
とはいえ、秋口に多い台風被害を逃れること、そしてリンゴの収穫がピークを迎える前に収穫できることは、作業の分散にもなりありがたい存在、とも話してくれました。
リンゴの栽培は、春先の凍霜害や夏の水不足など、毎年気象への対策が変わる苦労もあるなか、「今は技術を確実なものにしたい」と、渋澤さんはハッキリした声で言いました。
「もう少しすれば、もっと発色が良くなり、甘味と酸味が濃いものになっていきますよ」。渋澤さんは待ち遠しい様子で目を細めます。
シナノリップは長野県内各地で栽培されていますが、出荷はお盆明けから8月下旬までのわずか半月間。また、栽培が始まったばかりのため生産量もまだそれほど多くありませんが、これから徐々に収量も増えていくことでしょう。
これから多くの人々に受け入れられるリンゴに育っていくか、その成長に期待したいところです。
こちらは 2020.08.04 の記事です。農畜産物や店舗・施設の状況は変わることもございますので、あらかじめご了承ください。
すし☆すぶた
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