リンゴの王様と言われる「ふじ」と同じ晩生種の王林(おうりん)は、青リンゴの代表品種。ふじの陰に隠れがちですが、その香りと味はしっかり個性を主張していて、なかなかあなどれないリンゴです。青リンゴ独特の風味に、隠れたファンもきっと多いことでしょう。リンゴ農家でも、実はこの味が一番好きという方も多いのです。来週からシリーズでお届けする「ふじ」情報を前に、今週はひとまず王林のお話を。
王林はこんなに魅力的
長野県の王林の生産は栽培面積で422ha、収穫量8,970トンと、リンゴ全体のわずか5%足らずです。年々栽培は減っているものの、リンゴ園には必ずと言って良いほど王林の樹が残されています。なぜかわかりますか?
それは、王林の特徴である色と香り、そして味が、リンゴ作りのプロにはたまらない魅力があるからでしょう。
まず、色。色は黄緑色で、熟すと表面に薄いピンク色がところどころに出ることがあります。リンゴの色と言えば赤が多いため青リンゴの代表格の王林は、箱詰めした時に良いアクセントになります。
次に香りですが、王林は品種独特の揮発性の香り成分があり、実にナイフを入れると、青リンゴの良い香りがします。この香りが好きで王林のファンという人も多いのではないでしょうか。
そして味ですが、見た目はすっぱいと思われがちですが、王林は酸味が少なく、甘さが強いリンゴです。リンゴの酸味がダメな人にも、王林はおすすめです。
リンゴのなかの王様だから王林
王林は、福島県伊達郡桑折町の大槻只之助氏が1943(昭和18)年に育成しました。ゴールデンデリシャスと印度のかけ合わせで、伊達農協の大森常重組合長が1952(昭和27)年に「林檎の中の王様」という意味の王林と命名し、その年から東京の市場に出回るようになりました。
王林は着色のための葉つみなどの管理作業がいらず、しかも多くの葉から養分をたっぷりともらえるため、甘みが増す優秀な品種です。ただ、過熟になるとボケやすいので注意が必要です。
緑色が強いものは未熟で、黄色が強すぎるものは過熟の場合があります。表面にうっすらと赤みがさし、固いものが良いでしょう。すぐ食べないのであれば、冷蔵庫で果実の温度を下げておくとボケが進むのを防げます。
平和のリンゴを巡って続く争い
さて、青リンゴでみなさんがイメージすることと言ったら何でしょう。文化の違いから、欧米の人たちはリンゴと聞くと普通は緑色のリンゴを思い描くようです。ビートルズのレコード盤(若い世代はご存知ないかも)のシールには半分に切られた青リンゴ――グラニー・スミスという品種――が印刷されていました。はたまたアップルコンピューターのかじりかけのリンゴでしょうか? ビートルズが設立し、彼らが残した音楽的な資産や事業を管理している英国アップルコープス社と、MACの愛称で親しまれているアップルコンピュータ社は、どちらも社名と商標にリンゴを使用しているため、長年「アップル」という名前をめぐって争って来ました。
1991年には両社の間で商標契約が結ばれ、それぞれにアップルの名称とロゴを使用できる分野が定められました。アップルコンピュータは音楽を配信するためのデバイスとソフトウエアに、アップルコープスは楽曲の制作と販売にアップルという名称を独占的に使う権利が認めらました。ところが、アップルコンピュータがはじめた音楽配信サービス、iTunes(アイチューンズ)Storeでアップルの名称とロゴを使用することは契約違反に当たるとして、アップルコープスが再び訴訟を起こしたのです。結局この裁判は、アップルコンピュータが「データを転送しているだけ」ということで勝訴となりましたが、青リンゴを愛する人々に愛と平和が訪れることを祈るばかりです。
Apple Corps Ltd
王林がブレイクしています
「発掘!あるある大事典Ⅱ」(フジテレビ)というテレビの健康番組の10月22日の放送で「あなたのダイエットフルーツはどっち?みかんorリンゴ」と題し、リンゴやみかんのダイエット効果が紹介されました。「リンゴでヤセる黄金法則その1」では青リンゴを食べるべしと紹介されました。青リンゴに多く含まれるリンゴポリフェノールにはダイエット効果があるからです。その中に含まれるプロシアニジンが胆汁酸に吸着して、脂肪の吸収を抑える上に、肝臓の脂肪燃焼を助けるのです。特にリンゴの皮の部分に多く含まれるので、皮ごとガブリが良いようです。メタボリック症候群の予防・体内脂肪燃焼に、王林が今年ブレイクするのか注文が殺到しています。