果物

このリンゴが戴いている王冠が見えますか?

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11月になって、信州はグッと気温が下がり、寒さで身を震わせる日が多くなってきました。そしてこの本格的に冷え込む時期になると、今までさまざまな品種でわたしたちの味覚を楽しませてくれたリンゴも、いよいよ晩生種の「ふじ」で最盛期を迎えることになります。

しかし「ふじ」と言っても、普通のふじとは一線を画した、特別とも言われるリンゴのふじが、長野県にはあるのです。そのベリー・スペシャルなリンゴが作られているのは、県東部の上田市。県内でも晴天率が高く、降水量が全国的にも少ない地帯でありますが、ここはまた野菜、果樹、水稲や花作りなどが盛んにおこなわれているところでもあります。そしてそんな場所で、この特別といわれるふじが栽培されているのです。

そのりんごは、まさに王冠(crown / クラウン)を与えるにふさわしい存在のリンゴとして、あえて「クラウンふじ」と呼ばれます。

クラウンふじはりんごの王様
このクラウンふじは、「JA信州うえだ やまじょう果樹部会」(※やまじょうは、部首名が"やね(∧)"で、その中に「上」という字を書く、このために作られた文字)のなかにある、リンゴではこだわり栽培の先駆けとされる1105-2.jpg「クラウンふじの会」のメンバーによって、全国で唯一生産されています。

現在クラウンふじの生産農家は27戸。このリンゴの栽培をはじめた当初の昭和58年から一貫してクラウンふじ作りに取り組んできた、現在の果樹部会副部会長でもある川上満男さんを訪れました。

1.2ヘクタールもの畑で、リンゴだけでなく、ブドウやサクランボ、モモやプラムなど各種の果物を栽培する川上さんですが、お目当ての「クラウンふじ」は、上田市民におなじみの「太郎山」が丁度今紅葉で色づいたのを正面に眺められる眺めのよい場所で作られていました。

普通のリンゴが王冠を戴くまで
どんなところが一般のふじと違うのかを川上さんに訊ねると、「品質と味の良さを追求し、おいしくて、安心して食べられる安全なりんごを作ろうと生産者がこだわりをもって栽培しているところ」と即座に答が返ってきました。この王冠をかぶったふじも、もともとはふつうのふじりんごなのですが、こだわりの栽培によって「クラウンふじ」となるのです。

まず、5アール以上の畑において栽培されている樹齢6年以上の木を対象とするなどのいくつかの条件をクリアすることによって、クラウンふじになる資格が与えられます。

めでたくクラウンふじ候補の資格を得た後、生産者が「クラウンふじ」のためにあらかじめきめられた栽培基準を守り、全栽培園の点検などにも必ず出席するなど、クラウンふじの品質と誇りを維持しながら栽培に取り組み、晴れてクラウンふじとしての出荷となるのです。

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このクラウンふじを生産するにあたり、川上さんがまず取り組んだことは、土づくりでした。地元の畜産農家から出された糞尿に樹皮を混ぜた堆肥を使うことで、化学肥料はほとんど使用しません。堆肥を入れることで、有機質が微生物に分解されてゆっくりと養分になり、さらにこの地域の粘土質の強い土を根が張りやすいフカフカの土に変えていきます。この土によって、根がしっかりと張り養分を取り込んで、丈夫で健康な樹が育つのです。

さらに、リンゴのおいしいそうな赤色は、日光を浴びることで色づきますが、この着色方法にも特徴があります。リンゴの実に日光を浴びやすくさせる「葉摘み」はなるべく少なくし、その分、実を回転させて陽の当たっていない部分に陽を当てる「玉回し」の作業を中心に手間を掛けています。これは、なるべく葉を残すことでリンゴに養分を貯めるよう心掛けているからです。さらに、反射シートやマルチ類は一切使用することなく、あくまでも自然の色つきを重視して、自然に近い栽培を心掛けた手法で取り組むのです。

そんなリンゴの収穫時は、いったいどこで判断するのでしょうか? 川上さんは言いました。「りんごの底のお尻の部分が黄色く変化しているものを目安にしますが、糖度を高めるために収穫の時期はふつうのものより少しだけ辛抱強く待って、完熟したと思われるものを厳選して収穫しているのです」と。

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いまがまさに収穫の季節
満を持して収穫されたクラウンふじの糖度は、最低でも15度以上。まさに「甘みと酸味がぎゅぎゅぎゅっ!」と凝縮されている味覚です。

このりんごが、一般のふじと異なるのは果実ばかりでなく、発送用の箱においても、白い一般ふじ用のものとは区別して、このクラウンふじは緑色の箱が用いられるのです。そしてもちろんこだわりのリンゴは価格においても、通常のふじの値段より1.7倍程度の高値がつけられているということです。

今年のクラウンふじは、先日11月8日に収穫がはじまり、今月中旬を出荷最盛期として、11月いっぱいまで収穫作業が続きます。今年の出来はとても良く、1万1千ケース(10キロ入)の収穫を見込んでいるということです。ちなみにその収穫量は、上田全域で収穫されるふじの1割程度を占めるとか。

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クラウンふじは、全量がJAへ市場出荷となり、出荷先は東京や大阪など。県内においては、11月の22日と23日の両日のみ、上田市の農産物流通センター一帯で行われる「収穫感謝祭〜ふじ祭り・きのこ祭り〜」で、5キロと10キロの箱売りにてお買い求めいただけます。すでに2ヵ月も前から、この収穫祭を楽しみに県外リピーターによる問い合わせが何件も入っている状況です。またJA信州うえだでも直接お取り扱いを受けつけています。

すでに来年の出来をにらみつつ
「いろいろと栽培におけるこだわりと取り決めがあるけれど、その範囲内において1本1本樹勢を確認しながら、作業の加減をすることが大切」と川上さん。そんな川上さんでも、上手く出来たと納得のいくリンゴは全体の2、3割程度と言います。1105-8.jpg「リンゴは、"実を作るよりも花芽をつくれ"と言われるように、いいリンゴを作るには、いい花芽を作ることが必要」だそうで、来年の収穫量に影響を与えるその花芽は、今ぷっくりと膨らみ、「来年もいいリンゴが実るのを予想」させてくれました。川上さんの目は収穫に追われて忙しいこの時期でも、すでに来年のクラウンふじの出来を見通しているのです。

クラウンふじのお問い合わせと販売は:

「JA信州うえだ直販センター」
 (うえだ食彩館ゆとりの里内)
 火曜日が定休日
 郵便番号:386−0002
 住所:上田市住吉380−24
 電話:0268−26−1050
 *上信越自動車道 上田・菅平インターすぐそば
 indexarrow.gif直販センター情報サイト

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農畜産物や店舗・施設の状況は変わることもございますので、あらかじめご了承ください。

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