すごいですねえ、この蜜。これぞ「ふじ」の醍醐味です。見てるだけでも〜♪ 口の中につばがたまります。ん、もおぉ〜、たまりません。かじると、シャリっとしてジュワ〜っと、甘みが広がります。さて今回はシリーズ3回目、しかも今日は「長野県りんごの日」「いい(11)ふじ(22)」の日であります!! さっそく信州の北に位置する飯綱町牟礼に、ふじりんごの守護者のひとりである生産者の白石勝彦(しらいしかつひこ)さんを訪ねましょう。
今年のふじの出来具合は?
白石さんは、飯綱町牟礼の北信五岳――飯綱山、戸隠山、黒姫山 、妙高山、斑尾山の五つの独立峰――が一望できる畑で、りんご80a・なし2aをはじめ、さくらんぼ、お米、花、パプリカなどをご夫妻で栽培しています。以前、JAで農業指導員を約35年間も務めた農業のプロでもあります。消費者の方に「安心・安全の果実を召しあがってもらいたい」という思いから、10年前に特殊なフェロモンを出して虫からりんごを守る、フェロモン防除という方法を採用して、以来農薬を減らすりんごの栽培を進めてきました。
そのプロの中のプロの白石さんに、今年2006年の「サンふじ」出来をたずねたところ、
「春先に温度があがらなかったため花の開花が遅かったんだよ。どの農作物もはじめに遅れると、そのまま生育が遅れていってしまう。そのため今年は、大きさがまばら。しかし、蜜は例年に比べ収穫前にきて夜間の温度がグッとさがったため早く入りはじめた。今年はしっかり蜜がのったよ。形はイマイチなものもあるが、味はみなさんを裏切らない味に仕上がりました。りんごのおしりが色づいてるでしょう」
と笑顔が返ってきました。期待できそうです。
生き残りをかけて未来を見つめる
飯綱町には三水地域と牟礼地域があり、どちらもJAながののフルーツセンターで選果されますが、センサーで大きさ、糖度など正確にひとつひとつつ念入りに識別するため、よいものがそろいます。今年は飯綱町全体で「ふじ」を30万ケース出荷する計画を立てているのだそうです。
白石さんは、昨年JAながののりんご部会長を務め、現在は飯綱りんご部会、牟礼りんご部会の顧問を務めています。飯綱部会員はおよそ730名。「へえーっ、730人もいるんですね」と質問すると、産地の現状をつぎのように語ってくれました。
「前は1000人はいたよ。飯綱地域は昔から、農家同士のつながりが強かった。そのため部会組織をはじめ、周りの家の農家も部会員になりみんな一緒にやってきた。しかし現在、生産者は年々減っている。生産者が減れば、当然、収穫量・生産面積も減る。産地を守る一番の課題は、人の問題だな。高齢化が一番深刻」
しかし、白石さんはただ嘆いているだけでの人ではありません。「量は正直、年々減っているが、なんとか歯止めをかけたい。量を確保するため、面積を減らさないこと・樹を切らないように呼びかけている」のだそうです。りんごの樹は一度切ってしまうと、約10年はもとに戻らないからです。
さらに、今後の産地の生き残りには市場の信頼確保が重要と考える白石さんは、市場で働く若いセリ人、担当者の育成にも想いを込めます。
「昔のセリ人は八百屋さんより農産物の知識があり、その土地・気候・旬の農産物・特徴などをよく知っていた。今は、若い市場担当者が多い。この若い世代を育成していくことはとっても大事なことだ」
白石さんは、若いセリ人、市場担当職員を自宅に招いてホームスティしてもらい、農業・収穫体験を通じて飯綱産地や生産者の気持ちを知ってもらっています。
「生産者の想いを伝えられるセリ人・担当者が育つことで、バイヤーをはじめ消費者の飯綱ファンをひとりでも多くつくりたい。人と人とがつながってはじめて、生産者、市場、消費者へ想いがつながることを知ってほしい」
産地を守ることは大変なこと
おいしいリンゴが健康に一番いいと話してくださった白石さん。最後にブログの読者にメッセージを求めたら、つぎのような言葉をくれました。
「わたしたちは安全・安心な本当においしいものをみなさんにお届けすることが使命だと考えています。今は、飯綱産地も生き残れるか大変。ココを乗り切って、新しい若い人につなげていきたい。消費者の方に産地を守ることが大変なことを知ってもらいたい」