今ごろにしては今年は暖かいですね。ここ信州でも、朝晩はともかく、日中はとても穏やかな日々が続いています。とはいえ、さすがに11月の立冬を過ぎると、もう季節は「晩秋」から「初冬」です。そこで長野県のこの時期の風物詩といえば、「柿すだれ」。
信州の各地では10月の終わり頃から、あちらこちらでこの柿すだれが見られます。もう、隣の奥さんの家でも、向かいのご主人の家でも、3軒向こうのおばあちゃんの家でも、同級生のタカシ君ちでも、それから・・・って程ではありませんが、よく柿すだれを出勤途中の車窓や、散歩道で見かけます。色がオレンジ色だからよく目立つわけ。ウーン、これぞ信州。よし、ここらで一丁、柿のことでも書いてみるかっ! という訳で、今週は『柿』について、チョットいい話(が出来たらイイな)。
秋の終わりを告げる柿すだれ
ところで、今回のテーマの「柿すだれ」ですが、皆さんご存知ですか? いわゆる「干し柿」を作るプロセスに見られる光景です。渋柿の皮をむいて、軒先に吊るし、寒風にさらして白い粉がふいてきたら、出来あがり!! というあれです。とくに長野県の南部、飯田地方では、晩秋の風物詩として、もうお馴染みの風景で、コレを見ると「もう、秋も終わりに近いのネ」なんてことまで考えちゃうような風景なのであります。
それではここで問題。ジャジャン! 「渋柿の渋抜きにはどんな方法があるでしょうか?」 ハイ!そこのあなた。「えー、焼酎やブランデーのアルコールにドップリ漬け込む!」正解! では 続いて第2問。ジャジャン! 「干し柿で渋抜きが出来るのはなぜでしょうか?」じゃ、今度はコッチのアナタ! 「渋柿を半殺し状態で、ジワジワと締め上げているから!」って、チョットチョット怖いこと言わないでよ・・・。でも、正解! 実はこれ、当たりなんです。
もう少し優しい言い方でお話しましょうかね。渋柿の渋みの元はタンニン。柿にはこのタンニンが含まれているのです。タンニンには、水溶性と不溶性がありまして、水溶性のタンニンが不溶性になると、ナゼか渋くなくなります。ここまでは、ついてこれてます? つまり、水溶性のタンニンを不溶性に強制的に変えちゃえばいいんです。
ではどうやって不溶性に変えるのか? それが「アルコール漬け」や「干し柿」で行われる「ジワジワと締め上げる」になるのです。即効的ではタンニンは水溶性のままで、不溶性にはならないそうです。なんとも不思議ですね。
なぜ柿に親しみを覚えるのか
飯田地方での干し柿は「市田柿」の名前で、広く全国に親しまれているものです。お歳暮や新年のご挨拶にとお届けされたり、寒い冬にはコタツにあたってゆっくりテレビを見ながら・・・なんて時のお茶請けにもなったりしています。個人的にはドライフルーツの王者の称号を贈りたくなるくらい、愛くるしい逸品ですね。
ところで、柿って、数あるフルーツの中でも、われわれには飛び抜けて親しみやすいというか、親近感があるというか、そんな気がする果物だと皆さん感じませんか? フルーツ王国長野には、りんごや梨、巨峰に桃にプルーンに・・・と、たくさんのフルーツがありますが、やっぱり柿はナゼか親近感があります。
なんでだろう? と考えて、判りました! 柿は他の果物と違い、日本土着の(といわれている)伝統的な果物だからではないでしょうか! 日本以外には食用の柿はめったにありません。英語にも「パーシモン」というそれなりの名前がありながら、アメリカ人などはみな『ワーオ!KAKI!!』と叫んだりするのです。
日本の古代遺跡からも種が見つかり、遥か昔から御先祖さまたちが愛した「柿」だからこそ、他にはない親近感が湧くのです。どう? なに、当たりじゃない? エッ、違うの? じゃ、この親近感の理由はナニ? なんで「秋は柿だな」ってみんな感じちゃうの。ア〜、そうか。この時期になると「サザエさん」で、いつもカツオくんが柿をとって怒られているからなんだ! と理由が分かったところで、今回はオシマイ。
干し柿もいいけど、やっぱり今なら生の柿。ウチの庭でとれた柿が今日のデザートだ。渋柿が当たったらどうしよう、とロシアンルーレット気分でも楽しんでみるとしますか。