秋も深まり、信州の市街地の木々は紅葉、山々は紅葉を通り越して落葉している今日この頃です。直売所には、新米やリンゴがたくさん並んでいますが、これからさらに彩りを追加してくれるのは市田柿です。 市田柿は農林水産省が定める「地理的表示(GI)保護制度」に登録された、南信州が誇るブランド干し柿です。
そのまま食べると渋い柿です
やってきたのは、長野県南部、下伊那郡下條村(しもじょうむら)です。ここで市田柿の収穫・加工をしているのは、JAみなみ信州柿部会 副部会長の牧嶋友二さん。作業の真っ只中におじゃましました。 おじゃまして早々に着替えたのはこちらの格好! 異物混入防止のため、作業されている方はもちろん、取材者も専用のマスク、帽子、手袋、白衣、上履きに着替えます。GIを取得する前からJAみなみ信州では衛生管理を徹底的にしています。
そもそもですが、市田柿とは「市田柿」という品種の柿(渋柿)を干し柿にしたものです。品種の生まれは高森町の市田地域で、昔から栽培されていた柿の木が、選抜を経てだんだん広域へと広まっていったといいます。たとえ同じ地域で作っている柿でも「市田柿」から作る干し柿のみが、干し柿としても「市田柿」と名乗ることができ、それ以外は名乗ることができないのです。
さて、みなんさん。市田柿ってどうやって作るかご存知でしょうか? 「柿の皮をむいて、うまいこと軒先に垂らしておくだけでしょ?」とお思いではありませんか?(お恥ずかしながら、正直私はそう思っていたところがあります・・・) 市田柿の作業は夜明けとともに始まり、牧嶋さん宅では朝は4時半から夜は7時まで作業をすると言います。なにせ、市田柿作業は短期決戦! 柿がやわらかくなってしまうと、皮がむけにくくなってしまうためです。 やわらかくなってしまう要因には、 (1)霜が降りる。→霜が降り始める前に木に成っている柿を収穫しきらないといけません。 (2)市田柿は条紋(じょうもん)ができやすい。→柿の表面にできる黒っぽい模様「条紋」からやわらかくなりやすく、収穫して置いておくこともままならず、すぐに加工しないといけません。 牧嶋さん宅では、1日に1箱あたり20kgもある柿を20~30箱加工しているというので驚きです。 加工の行程は、収穫→皮むき→吊るす作業→燻蒸(くんじょう)→干す→粉だし作業(4、5日)→梱包をたどります。
皮むき行程では専用の機械を使います。柿をセットすると、ヘタを取ったあと柿が自転し、ピーラーによって飛んでいくように皮がむかれていきます。それは気持ちよいほどに飛んでいきます。
ヘタを取る
皮が吹き飛ぶ!
皮をむかれた柿は吊るされ、燻蒸という蒸す行程になります。燻蒸には雑菌防止と、できあがったときにきれいなあめ色にする役目があり、それが終わるといよいよ軒下に干されます。
これから燻蒸するところ
燻蒸後の柿を竿に移動するのも一苦労で、1本分で小さい柿だと4~5kg、大きいもので7~8kgあるため、持ち上げて移動するのは大変です。 その後1カ月間干した後に粉出し作業をして梱包となりますが、干している間も気が抜けないのが市田柿。雨が続く日は冷房をかけ、カビ対策をして室内干しをしなければなりません。
柿を移動させ、干し竿に移動する牧嶋さん
ここまで読むと、市田柿の大変さがご理解いただけるかと思います。 牧嶋さんも毎年この時期になると「大変な時期が来たな~」という思いになると言います。「作業は同じだけれど、毎年ひとつずつ年を取るので、体力的に辛くなっていくんです」と作業の苦労を口にしましたが、「市田柿を購入した消費者の方から手紙をもらったりするとうれしくて。今年もおいしくて、ポテッとした柿を届けられるよう努力したいと思います」と抱負を語ってくれました。
乾燥させ店頭に並ぶまでに1カ月ちょっとかかる市田柿、毎年楽しみにしている方もいらっしゃるかと思います。生産者の苦労と思いが詰まった甘い市田柿は、11月下旬から店頭に並び始めます。ご自宅用だけでなく、お土産としても人気の市田柿、おひとついかがでしょうか?
GIマークの付いたパッケージ
真っ白な肌化粧をまとった市田柿
市田柿は、JAみなみ信州の直売所のほか、ネット通販もしております。 【直売所】 ●およりてふぁーむ農産物直売所 TEL 0265-56-2822 ●りんごの里農産物直売所 TEL 0265-28-2770 ●松川インター直売所 もなりん TEL 0265-34-1256 【ネット通販】 ●南信州およりてふぁーむ 楽天市場店
こちらは 2018.11.13 の記事です。農畜産物や店舗・施設の状況は変わることもございますので、あらかじめご了承ください。
ジャスミン
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