加工品

一度は食べたい!塩を使わない漬物「すんき」

すんき

専用の畑で原料の甘かぶらを収穫するJA木曽王滝支所女性部甘かぶらつくり隊

冬の訪れとともに木曽地方にすんきの季節がやってきました。世界的にも珍しい、塩を一切使わない健康的な漬物として脚光を浴び、昨年は県内2例目の地理的表示保護制度(GI)への登録も果たしました。JA木曽王滝支所でも女性部の甘かぶらつくり隊が、原料の甘かぶらから育て、発売しています。今シーズンの漬け込みスタートとなった先月初め、同支所を訪ねました。

上品な酸味とうま味が持ち味

すんき

カブの部分は赤カブ漬けに。専用の機械で洗う

最初に目にしたのは赤カブの洗浄作業です。過去に1度しかすんきをいただいたことがなかったリポーターは、これもすんきづくりの一環なのだ思ってしまいました。

こちらは、すんきの原料となる地場の伝統野菜、王滝カブの"実"、本来のカブ部分を使った「赤カブ漬け」になります。塩漬けした後、酢と砂糖を加え漬け込んで製品になります。すんきではなく「普通の」漬物ですね。

これに対してすんきはこの「赤カブ漬け」に利用しなかった葉と茎の部分を使います。同支所では、初めは赤カブ漬けだけをつくって売っていました。残った葉茎部分を利用したすんきは、あえてつくって売らなくても、各家庭で当然のようにつくられていたからです。

それほどすんきは地域に溶け込んでいたわけです。これまで全国で62件になるGI登録で、すんきは唯一、地名を含まいない登録になったことでも分かります。しかし、近年は若い世代を中心に、漬けない家庭も出てきました。一方で、乳酸菌発酵を利用した無塩の珍しい漬物として紹介される機会が増え、特産品として注目されるようになりました。

王滝支所のすんきもその流れの中で、製品化されるようになりました。この10年ほどのことだそうです。訪ねた日も、午前中は赤カブの漬け込みに充て、すんきの作業は午後からでした。

"残り物"の葉と茎が原料に

すんき

会話が弾む葉茎の洗浄作業

作業は、午前中の作業で切り落とした葉茎部分を丁寧に水洗いして、土やごみを除くところから始まります。大きな釜で、乳酸菌が活発になる60度ほどの湯に浸した上で、「種」として取っておいた前年のすんきやその漬け汁とともにおけに漬け込みます。雑菌が入らないように密閉したおけで、一昼夜ほどおいて乳酸菌を行きわたらせます。その後、10度以下に保った冷蔵庫で2週間ほど熟成すると、べっ甲色の独特の香りを放つすんきに仕上がります。

すんき

60度のお湯にさらして種とともに漬け込む。刻まずにまるごと漬け込むのが王滝流

使うカブや種によって出来は千差万別、文字通り家庭ごとの味になります。王滝支所女性部甘かぶらつくり隊のすんきは、長野県伝統野菜にもなっている在来の王滝かぶから選別した特別の甘かぶらを使っているのが自慢の一つ。自前の畑で栽培し、上品な酸味の中にうま味を感じさせるのが持ち味です。隊長の下村壽子(しもむら・よしこ)さんは「かぶらから育てた伝統の味をぜひ」と呼び掛けています。

同隊のメンバーの方々に家庭でつくる場合のコツもうかがいました。「良質の種を使うのが一番」だそうです。気に入ったすんきがあったら冷凍保存しておき、用意したカブの葉茎とともに漬け込みます。使うカブによっても味は大きく異なります。長野県内では一般的な野沢菜だと「少し強くなる」ようです。いろいろ試してみてください。

さまざまな料理の具材に

そのまま食べても、もちろんおいしいのですが、一般的にはみそ汁に入れていただきます。かつお節をかけたり、油で炒めたり、天ぷらやギョーザ、ピザやチャーハンの具にする若い人もいるそうです。塩が貴重だった山間地の先人の知恵が詰まったすんきを自由に楽しんでみてください。

すんき

同隊のすんきは400g入り700円で同支所やA・コープ木曽店などで発売しています。
問い合わせは同支所(TEL 0264-48-2121)へ。

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農畜産物や店舗・施設の状況は変わることもございますので、あらかじめご了承ください。

この記事を書いた人

昭和人Ⅱ

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