みなさん、当ブログの冬の風物詩「市田柿」の季節がやってきました! 市田柿は、2016年に国が地域の農林水産物や食品ブランドとして保護する「地理的表示(GI)保護制度」に登録されただけでなく、ビタミンA、食物繊維などの栄養素をたっぷり含み、また渋柿の中に含まれる渋味成分(タンニン)がポリフェノールの一種であることから「スーパーフード」としても注目を集めています。
訪れたのは長野県南部、「市田柿発祥の地」高森町。天竜川から立ち上る濃い川霧が、うそのように晴れた11月初旬の午前10時過ぎ、市田柿の収穫に追われるのは、同町で就農5年目を迎えた木下保恵さんです。
神奈川県出身の木下さんは、ご主人が飯田市出身だった縁で隣接する高森町に家を建て、移り住みました。二人とも非農家出身でしたが、木下さんは「太陽の下で仕事ができる農業」に惹かれ、町が主宰する農作業支援組織「アグリ支援クラブ」に入会。2年間、農作業を経験した上で、就農しました。「(クラブ会員で)手伝いのほうが気は楽ですが、自分の畑を持って、自分でつくりたい、という気持ちを抑えることができませんでした」と語ります。
栽培品目の柱となるのが、自分でも「大好き」という市田柿。元となる生柿(渋柿で、品種名は干し柿と同じく「市田柿」)を収穫してから、皮をむき、変色やカビを防ぐための硫黄薫蒸処理などを経て干すーー。この1カ月ほどにわたる加工作業の最終段階で、表面に白い粉がふくと「すごくうれしい」そうです。
白い粉の正体はブドウ糖(の結晶)。重量にして元の生柿の約4分の1になって完成する市田柿の、おいしさと栄養がぎゅっと濃縮された象徴が、この白い粉です。
市田柿の始まりは、現在の高森町下市田の伊勢社に生えていた渋柿をもとにした「焼き柿」であり、栽培は600年前にさかのぼるとも言われています。晩秋から初冬にかけて、盆地特有の朝夕の厳しい冷え込みと、天竜川の川霧がもたらす適度な湿り気の中で、ゆっくりと乾燥させることで、独特の「もっちり、ねっとり」とした干し柿になります。果肉から水分とともに染み出たブドウ糖の白い粉をまとう市田柿は、飯田下伊那地域で干し柿の代名詞となりました。
今シーズンは収穫前に適度な雨があったせいで、例年にない大振りの生柿が取れたそうで、市田柿の出来も上々です。 「おいしさを多くの人に味わってもらいたいですね」。木下さんは期待しています。
JAみなみ信州の市田柿は3月ころまで、同JA直売所やオンラインストアで扱っています。 ■およりてふぁーむ農産物直売所 長野県飯田市鼎東鼎281(JAみどりの広場内) TEL:0265-56-2822 ■りんごの里農産物直売所 長野県飯田市育良町1-2-1(中央自動車道飯田インター前) TEL:0265-28-2770 ■松川インター直売所 もなりん 長野県下伊那郡松川町大島2181-1(中央自動車道松川インターよりクルマで約3分) TEL:0265-34-1256
こちらは 2019.12.24 の記事です。農畜産物や店舗・施設の状況は変わることもございますので、あらかじめご了承ください。
昭和人Ⅱ
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