加工品

ぽってりもっちりの縁起もの 市田柿の里へ

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信州ブランドのひとつとして知られる干し柿「市田柿(いちだがき)」の出荷が始まりました。市田柿は中央アルプスと南アルプスの間に位置する南信州の特産品で、真っ白な粉をまとい、ぽってりとした姿とやわらかな歯ごたえ、そして上品な甘さが特徴です。発祥は南信州・下伊那郡高森町市田地域ですが、現在は天竜川流域・飯田市や下伊那地域の約3000戸で生産しています。生産者のひとり、JAみなみ信州柿部会長の小笠原啓次(おがさわら・ひろじ)さん(74歳)を訪ねました。

オレンジに色に染まる南信州・市田柿の里
小笠原さんのハウスは下伊那郡阿智村にあり、岐阜県中津川市と境を接する標高710mに位置しています。
小笠原さんの自宅近くにある5・4m×30mのハウスにはびっしりと柿が干され、ハウス内をオレンジ色に染めていました。柿を規則的に吊るした姿から"柿のれん"と呼ばれるこの干し方は、市田柿づくりの象徴です。

20121212kaki03.jpg「干し柿は天候に左右されやすいものですが、今年は柿を干してから適度な降雨と気候に恵まれ、出来はとても良いですよ」と小笠原さん。
このハウスに干している柿は、小笠原さんが所有する標高600〜700mに点在する圃場延べ45aで収穫した柿です。春から丹精込めて育て、11月初旬から約20日間かけて順次収穫。2〜3日寝かせて追熟し、1個ずつ皮をむいて専用の糸に吊るしたものです。

「手をかけたぶんだけカオも良くなる」
おいしい市田柿のための工程は干すだけではありません。吊るした柿は、まず硫黄燻蒸(いおうくんじょう)といって、密閉した室内で硫黄の煙にくぐらせて殺菌効果を高め、見た目も美しい市田柿のベースを作ります。

それから干すこと約1カ月。乾燥しすぎると固くなり、湿気が多いとカビが発生しやすくなるため、天気を見ながら窓を開閉したり、柿のれんの間隔を開けたりと、温度や湿度を調整する大切な期間を過ごします。こうして約35%の重量になるまで乾燥させます。
小笠原さんは言います。
「毎日柿のカオを見ながら作業をしていますよ。たまには寒くてしんどいこともありますが、手をかけたぶんだけカオも良くなって、おいしさで応えてくれます」

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「粉出し」できめ細やかな肌に
およそ1カ月を経た柿は"のれん"の状態から1個ずつ外され、今度は市田柿の特徴でもある白い粉をまとう「粉出し」という仕上げの工程に入ります。粉出しと言ってもおしろいをはたくわけではありません。
果実の中の水分を外に出すために回転させながら、果肉を揉むのだそうです。こうすると中心部の水分が均等に外に出て、シワのないふっくらとした干し柿になると同時に、ブドウ糖の白い粉がきめ細やかなものになるのです。

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なんとも"荒療治"のような工程ですが、この作業を繰り返すほか、夜は寝かせ、早朝は冷気に当てるという作業を繰り返すことで、美しく白い粉をまとい、ぽってりとした容姿で、もっちりした食感の市田柿となっていくのです。

柿を揉む「粉出し」の回数には特に定めはなく、「柿のカオを見ながら、生産者の長年の経験と勘で行います」と小笠原さん。
「昔はすべての工程が手作業でしたが、今は機械を使うからだいぶ楽ですよ」と言う奥さんの美恵さん(71歳)は、干し柿の作業を毎年楽しみにしているそうです。

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上が粉出し2回、下が3回

「とにかく味が自慢です」
平成18年11月には、JAみなみ信州と下伊那園芸農業協同組合が県内で初めて「地域団体商標」(地域ブランド)として「市田柿」を登録し、品質の維持や向上に地域全体で努力しています。生産者の高齢化と後継者不足は否めませんが、小笠原さんは「市田柿を作っているという自負を持って取り組んでいます。とにかく味が自慢です」と胸を張ります。

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古くから和菓子作りの世界には「和菓子の甘さは干し柿をもって最上とする」という教えがあり、甘さの指標とされているそうです。

地域の生産者のみなさんがわが子のように心を込めて作った「市田柿」は、飯田市のJAみなみ信州農産物直売所「りんごの里」や「およりてふぁーむ」などで販売しています。「幸せをかき集める、掻き取る」と言われる縁起ものの干し柿、お正月の団らんにいかがでしょうか。

JAみなみ信州農産物直売所
・りんごの里
TEL0265−28−2770
・およりてふぁーむ
TEL0265−56−2822

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