豚肉とリンゴ。料理の組み合わせとしての相性は悪くありません。豚肉のパイナップル煮など、果物の甘味と酸味を生かした豚肉レシピも数多くあります。
でも、ソーセージにリンゴを混ぜ込むというアイデアはなかなか思いつかないでしょう?
ブランド郷土食が地域発展のカギを握る
アイデアの主は長野県農協直販株式会社(長野市・増田敏社長)の担当、久保田憲幸・企画開発課長。
少子高齢化と嗜好の多様化で、販売の量的拡大は極めて難しくなっています。店頭でも「ナショナルブランド」に対し、より少数の顧客を対象にした「プライベートブランド」が着実に売り上げを伸ばしています。加えてネット社会の進展で、もともと地域アピールの要素だった郷土食に一層関心が集まっています。
「ブランド郷土食が地域発展のカギを握る」との観点から、信州大学と長野市が連携し、食品製造分野での技術革新を担う人材を養成しようと始まったのが、「ながのブランド郷土食」人材養成プログラムです。
信州大学工学部で実施する同プログラムは5年目。これまでに社会人26人、大学院生10人の計36人が受講しました。久保田さんもその一人。1年間のプログラム・スケジュールは前半が講義実習、後半が課題研究にあてられています。
久保田さんが課題研究で取り組んだのが、信州産の豚肉とリンゴを使った新商品「信州産りんごソーセージ」。
長野県農協直販(株)と信州大学との連携で生まれた「信州産りんごソーセージ」は、粗挽き豚肉に紅玉(こうぎょく)の「セミドライりんご」を練り込む方法で作られます。しかし、そこまでが試行錯誤の連続でした。
「リンゴ果汁だと果肉感が出ない。といって生のままではリンゴの存在感がなくなってしまう......」
久保田さんは課題研究時当初の苦労を振り返ります。
ヒントになったのは、工学部物質工学科の特任教授で同プログラムを指導する松澤恒友さんのアドバイスでした。
セミドライタイプでいこう!
「ながのブランド郷土食」人材養成プログラムの受講生は、課題研究を進める中で月1回、進捗状況、今後の進め方などについての検討会を行っています。その中で松澤教授はソーセージに混ぜ込むリンゴで苦労する久保田さんに、セミドライタイプのリンゴを使うことをアドバイスしました。
「完全なドライタイプでは硬過ぎてしまい、ソーセージとしての食感を損なう心配があったからです」
松澤さんのアドバイスで、久保田さんらは混ぜ込むリンゴの大きさにも配慮、8mm角としました。
その後の試食アンケートでは好結果を得ました。「みなさんは最初、どんな味かという点に興味があったようです。食後の感想では、『ほんのりとした甘さがいい』と」。久保田さんは果実の自然な甘みと豚肉の組み合わせに、ある程度自信はあったものの、「正直ほっとした」と言います。
新商品の発売は昨年2012年末。クリスマスや年末年始の需要に期待し、当面1500セットを県内A・コープ店や長野県農協直販のネット販売で売り出しました。
1500セットとしたのは原料となる「紅玉」の事情も......。紅玉自体の生産量が減少している上、収穫時期が限られるからです。そのため長野県農協直販では、1回目の売れ行き状況を見ながら今後の対応を考えたいとしています。
1パック(200g)840円(税込み)という価格について長野県農協直販では、吟味した材料を使用している点や、かなりの部分が手作業になることを指摘した上で、「将来は、より求めやすい価格での提供も考えています」とのこと。
同社と信大工学部との連携で、すでに次の新商品開発も進められており、今度も楽しみです。
「健康長寿県」ならではの加工品です。
最後に、松澤恒友・信州大学特任教授に信州産りんごソーセージの魅力についてお話をお聞きしました。
「リンゴには血流改善や高血圧、動脈硬化への効果などさまざまな機能性があります。豚肉はビタミンB1を多量に含み、エネルギー代謝を促進し、神経機能や脳を正常に保つ働きを持っています。信州産のリンゴと豚肉を使った新商品は、健康長寿県長野のイメージと相まってアピールできるのではないでしょうか。」
信州の豊かな自然に育まれた豚肉とリンゴでつくられた信州産りんごソーセージ。お試しの際は、ぜひ下のコメント欄に感想を。お待ちしています!
◇参考リンク
長野県農協直販株式会社