渋いお茶をゴクリと飲み、いよいよ白い物体へとかぶりつけば、それはもっちりとして甘く、中は色鮮やかなオレンジ色。
飯田・下伊那地域特産の冬の味覚「市田柿」は、天然の味をそのまま味わえるドライフルーツでもあり、また、軟らかく適度な弾力と優しい味わいは、まさに上質な和菓子。そんな伝統の味・市田柿にも今、新たな風が吹いています。
お茶請けにそのまま食べていた干し柿を、「もっと幅広い年代の人に、より親しんでもらおう」と、様々な料理にアレンジする取り組みが行われているのです。
500年の伝統を持つ優れた保存食
下伊那郡高森町の市田地域で、すでに500年以上も前から栽培されていたといわれる渋柿の一種の市田柿。中央アルプスと南アルプスに挟まれた、伊那谷の中央を流れる天竜川から立ち上る川霧と、朝晩の冷え込みが良質な干し柿をつくりあげるといわれています。
そう、柿の品種も、そして干し柿になった商品名も、呼び名は同じ「市田柿」です。
干しあがった市田柿は、生柿にくらべて1/4程度とサイズは小ぶりながらも、栄養価、そして美味しさがギュウッと凝縮されたものに仕上がります。
上質な市田柿を簡単アレンジで楽しもう
そして、この地に昨年の4月に竣工されたのが市田柿工房。
2013年4月に完成した市田柿工房(高森町)
ここでは皮むきから乾燥、選別、出荷までが広大な規模で一貫して行われています。柿の一つひとつを目視することはもちろん、形状や出来などの良し悪しをセンサーにかけて確認し、見事合格したものだけが商品として、全国の皆様のお手元へと届けられるという、きめ細かな管理体制が整っています。
今回は、この市田柿工房に勤めるスタッフである森本貴子さん、北澤奈穂さん、藤竿真知子さんに市田柿を使った手軽に作れる料理3種を教えていただきました。
○市田柿と大根の和風サラダ
わさびしょう油で漬けた市田柿を刻んだ大根と混ぜたもの。大根のシャキシャキとした歯触りと市田柿の食感がベストマッチ。
○市田柿のパウンドケーキ
パウンドケーキの具の定番といえば、ドライフルーツ! オレンジ色がきれいでしょ。梅酒に漬け込んだ市田柿を使用するのがポイントです。
○市田柿のカプレーゼ
市田柿とモッツァレラチーズを同じ大きさに切ってクラッカーにのせ、アクセントにスパイスを振り味を引き締めたもの。干し柿のオレンジ色とチーズの白、シソの緑色と、色彩のバランスも良いのでお客様へのお茶菓子としても。
つづきましては、県内に拠点を置き活動する「オーベルジュ エスポワール」のオーナーシェフ・藤木徳彦氏さんによる『市田柿のオイルフォンデュ』をご紹介します。
干し柿の中に入れる具材はお好みのものを。様々な食材が意外にも(!?)干し柿と合うことに驚くかもしれませんよ。
衣を付けることで中が見えないので、何の具を引き当てたのかわからない、という楽しみも。
まさに、「冬だけの贅沢な実」
市田柿への取り組みは、お隣の愛知県でも行われています。木の剪定から柿の皮むき、手揉みなど、一つひとつの工程が手作業によって丁寧に作られる市田柿づくりを学び、その美味しさを「もっと若い人にも知ってほしい」と、愛知大学の学生たちが、アイディアを出して作った商品「冬だけの贅沢な実」も、この冬から発売されています。
ビタミン、ミネラル、ポリフェノール、食物繊維などの栄養素も豊富な市田柿。あなたはどうやって召し上がりますか?
ちなみに、保存は涼しいところに置くか、ラップに包み、冷蔵庫に入れるのがおすすめです。また冷凍庫で保管したものは、山歩きのおやつなど携帯にもピッタリですよ。
市田柿のお求め先:
◇JAみなみ信州「りんごの里農産物直売所」
住所:〒395-0152 飯田市育良町1-2-1(中央自動車道飯田インター前)
電話:0265-28-2770