「残さず食べなさーい!」
子供の頃、両親や先生に口酸っぱく言われたことはありませんか?
日本の食糧廃棄率は世界で第1位。
国が豊かになることは良いことではありますが、その分「食べ物の大切さ」というものが希薄化してきているような気がしてなりません。
そんな中、長野県の生産現場では、「店頭に出せない傷入り果実や本来廃棄するはずの部分を何かに使えないだろうか」という観点で、農産物の加工品に力を入れはじめています。今回はそんな加工品を紹介いたします。
農産物の加工の動きが活発化しているという、松本市で最大の農業地帯である今井地区にやってきました。近くに松本空港があることからか高い建物が少なく、鮮やかに立ち並んだ山々と一面の農地が綺麗に広がっていました。
産地だからこそできた、こだわりのジャム
早速近くの直売所を回っていると、いきなり目につく加工品がありました。
その名も「メイポールジャム」。
メイポールとはりんごの受粉に使う小さな赤い果実のことであり、通常りんごが受粉したら処分してしまう果実です。しかし、色も果肉も綺麗な赤色で、何かに使えないかということでジャムを発案。少し酸味の効いたすっきりとした味わいが特徴で、需要も高く、少しずつ人気が出始めています。
もう一つ面白いジャムがあったのでご紹介します。「スイカジャム」です。
今回訪問した「直売所ファーマーズガーデンやまがた」は、JA松本ハイランド管内の直売所。JA松本ハイランドは、なんといってもスイカの名産地。ここのスイカ栽培の特徴は、1本の木で2つのスイカしか収穫しないことです。これにより、より大きな質の高いスイカが出荷されています。このスイカジャムは、大きなスイカになれなかった、摘果された小さなスイカで作ったもの。希少価値に加えて、ブランドであるハイランドスイカをジャムにしたこともあり、反響を呼んでいます。
◇ファマーズガーデンやまがた
住所:〒390−1301 東筑摩郡山形村1579−1
電話:0263−98−5231
意外なものも商品化
今回訪問した2件目の直売所「今井恵みの里」は、松本空港から約3kmのところにあります。
ユニークな加工品がズラリと並んでいると現在評判の直売所で、中に入ると品種別のりんごジュースやラフランスのジャムなど、興味深い加工品がた〜くさん。
中でもびっくりしたのが「青とまとジャム」です。
これは、本来処分する赤くならなかったトマトを集めてジャムにしたものです。
トマトはその独特の臭みからジャムにするのは難しいといわれていますが、青トマトの場合は臭みがなく、なおかつ食べやすい。
現在画期的な商品として注目を集めています。
おいしくて、エコがうれしい
そして、「残さず使おう!」という強い思いから商品化に辿りついたのが、この「りんごのつけ床」です。
この直売所では、味が変わらなくても形が悪かったり、しわができてしまったりんごをリンゴジュースとしています。そのりんごジュースで出た絞りかすをリンゴ酢として提供し、さらに、リンゴ酢で出た絞りかすをりんごのつけ床として提供するという、まさに一切無駄なしの商品です。りんごが入っていることで味がまろやかになり、お子さんが食べやすいということで、いちおしの商品だそうです。
農産物の価値をもっと生かそう
農家にとって加工品はどれだけの価値があるのか、りんごを例に挙げてみましょう。
農家が精魂込めて作ったりんご。味は変わらずとも地面に落ちてしまったり、形が悪いものは、通常の価格では売り出せず、1コンテナ(15kg)でおよそ300円で売り出されます(あくまで目安)。
ところがこれをジャムに替えると、400gのビンならばおよそ40個、りんごジュースだと1リットルのビンで12〜13本製造できます。ジャムを1個500円で販売するとすれば、全部売れれば20,000円!
気候変動でどうしても苦しい時期が生じやすい農家にとって、加工品が収入の助けになることは間違いないですね。
良い原料だから付加価値がつく
今回取材協力してくれた「今井恵みの里」の駅長である犬飼公紀氏は、「工業と違い、農業は3分の1は売れないものがでてきてしまう。そこにどう付加価値をつかるかが大切。農家の作った加工品はただの加工品ではなく、栄養・健康志向のある加工品であることを皆さんに知ってもらいたい」と話してくれました。
たとえば、このトマトジュースの原材料は農家が生産したトマトと塩のみ。いかに安全安心な加工品なのか分かりますね。
◇道の駅「今井 恵みの里」
住所:〒390-1131 松本市大字今井886-2
電話:0263-31-3220