夏が近づきましたね。暑さを乗り切るには、しっかり食べることも大切ですが、気分爽快で毎日を過ごすことも忘れたくないもの。
そんなとき、一服の清涼剤になるのが、美しさと香りを楽しませてくれる花たちです。今回ご紹介するのは、夏の涼しげな花の代名詞になりつつある長野県が全国に誇る洋花「トルコギキョウ」です。
夏の可愛い花なのです
まあ「トルコギキョウ」か、「トルコキキョウ」かと、ともすれば気になる方もおいでかとは思いますが、ここでは、トルコギキョウとさせてください。
トルコギキョウの歴史を少し記しますと、原産はアメリカのネブラスカから、コロラド、テキサス州にかかるロッキー山脈南東部の高原大草原地帯。もともとはそこに自生する花でした。学名はEustoma(ユー・ストゥ・マ)で、花冠の形から文字通り「eu=良い、stoma=口」、あるいはもう少しくだけた言い方をすると「可愛い子ちゃん」が語源とのことで、最近のアメリカでは結婚式の花としても親しまれています。別名は「リシアンサス(Lisianthus)」とも呼ばれます。アメリカでは「草原のリンドウ」とも「テキサスの青い鐘」とも言われています。
最初はリシアンサスという名で
この自生種が、西部開拓の時代の1835年にアメリカからスコットランドにもたらされて栽培されたのですが、栽培方法の確立がされず、たいした普及を見ませんでした。日本に導入されたのは1933年(昭和8年)頃らしく当初は「リシアンサス」の名称で記載されています。
このように、100年余を経て、わが国に導入され、開花した形がトルコ人のターバン(頭に巻く布)の形に似ているとされたところから、もとの名前の「リシアンサス」ではなく「トルコ桔梗」と命名され、その名前で販売されたのでしたが、はじめのうちは日本でも一般には普及せず、一部の生産者にわずかに栽培されていました。この後、国内での本格的栽培が普及するのは、1950年頃、長野県の更埴地方で水田地帯に導入されたのがはじまりです。とまあざっと長野県にトルコギキョウが伝来した歴史を振り返ってみました。
思いの外長持ちします
愛らしいトルコギキョウは、一見するとか弱そうに見えますが、切り花としても長持ちすることで知られています。直射日光を避け、湿気の多い場所を避け、茎をときおりカットするなど、手入れさえ良ければ10日から2週間も目を楽しませてくれるでしょう。
現在、この花をかわいがってくださったみなさまのおかげと、生産者のガンバリにより、近年、長野県のトルコギキョウ生産量(平成16年産)は、作付け面積6,180a,出荷本数1500万本で、全国1位になっています。たとえトルコギキョウの名前は知らなくても、おそらく見た人はきっと好きになる愛くるしい花です。
誰もがきっと好きになる
長野県では野菜、果物と同様、標高差による気候を利用して色彩が鮮明な切花を出荷しています。トルコギキョウは、夏の花らしく真夏の水揚げのよさ、多様な花色、花型が人気で生産が拡大してきました。25年程前までは、日本以外では営利的に栽培がされている国はほとんど無かったし、国内でもそれほど目立たない花でしたが、現在は自生地のアメリカ、南米、ヨーロッパ、アジア、アフリカ諸国でも生産されるまでになりました。
ホットな夏をクールに
最後にこの花の最近の人気の花色を紹介します。2006年の色別ランキング[主要花き卸売市場での動向]は、花びらの地の色と先端が違う色 をしている「覆輪(当記事冒頭の写真のようなもの)」が流行った時代が長く続いたのですが、需要の最も多い品種は白(全体の44%)以下、覆輪(19%)、緑(11%)、桃(10%)、桃、黄、紫、その他となっています。他に花型では、覆輪以外に八重咲き品種が人気。
どうぞ、ホットな夏をクールに過ごす一助に、長野県のトルコギキョウはいかがでしょう。