リンゴは、同じ品種の花粉がついたのでは実にならない(結実しない)ことから、異なる品種の花粉を花につける必要があります。受粉作業(人工受粉)は、大きくなるリンゴの実をたくさんつけるために、人の手で異なる品種の花粉を一つひとつめしべにつける作業です。花が散ってしまってはできないため、時間が限られるうえ、天候にも大きく作用されます。今回は、リンゴ農家である編集部員D宅(長野市桜)の受粉作業を紹介します。
リンゴの実ができるための大事な作業
我が家のリンゴ園の面積は1.4ヘクタール。リンゴを栽培する過程の中で、受粉作業は最重要作業と位置づけられています。毎年、5月の連休後半に開花することが多く、ゴールデンウイーク中は、遠出ができません。今年の開花は5月4日。受粉作業は6日から10日の5日間で行いました。しかし、9日は、8日夜の雨が花に残り、作業ができなかったので、実質4日間の作業となりました。
受粉専用棒を使って丁寧に......
リンゴは、同じ品種の花粉がめしべについても結実しないので、人の手で一つひとつ、花をなでるように花粉をつけていきます。
我が家では、高い枝の花も、脚立を使わずに安全に花粉をつけられるようにと、人工受粉専用棒を作り、先端に受粉専用の鳥の羽をつけて受粉を行います。
人工受粉専用棒
リンゴの花は、5つから7つまとまってつきますが、最初に咲く真ん中の花が実を大きくします。この特徴を利用して、確実に実になってほしい真ん中の花をめがけて花粉をつけます。最近は、ミツバチに受粉を任せる農家もありますが、我が家では、「フジ」リンゴが多く、人工受粉を行わないと真ん中の花が結実せず、収量が確保できなくなってしまうので、毎年受粉作業を行っています。
昨年までは、人の手と蜂(マメコバチ)のダブルで受粉していたのですが、今年は蜂のお手伝いがなかったので、人の手のみの受粉でした。
花粉をつけた人工受粉専用棒
限られた期間の中で、精一杯
そして、楽しく作業しています♪
リンゴの花の寿命は、3日〜4日と短く、受粉作業の時間が限られるため、すべてのリンゴに花粉をつけるには、人手が必要となります。我が家では、1日6、7人で受粉作業を行いました。
作業がはかどるかどうかは天候次第。なぜなら、雨の日や雨の翌日は、花が濡れていて花粉がつけらず、風が強い日も枝と専用棒が揺れ、花粉が風に飛ばされ、真ん中の花に花粉をうまくつけることができないからです。
また、天候に恵まれたとしても、空を向いての作業が多いので、目がまぶしく、腕をずっと持ち上げているために首や腕はだるくなるなど、根気のいる大変な作業です。とはいっても、楽しいこともあります。たとえば、お手伝いのみなさんとおしゃべりをしながら作業をしたり、休憩のお茶飲みも欠かせません。リンゴ畑でのおやつやおしゃべりは、とても気持ちがいいんですよ。
【りんご栽培の豆知識】
受粉用の花粉をとるには
我が家では、人工受粉に使う花粉を自家の花で確保しています。花粉ができるまでを簡単に紹介します。
花摘み前の花
リンゴの花は、5つから7つまとまってつきますが、真ん中の花以外は摘んでしまいます。その摘んだ花を集めて、花粉をとります。花粉になるまでの工程は以下のとおりです。
リンゴが収穫されるまでには、摘果や袋掛け、葉摘みといった様々な作業工程が続きます。みなさんに、大きくておいしいリンゴを食べていただくためには、どれも大事な作業です。受粉以外の工程については、またの機会にご報告したいと思います。