松本地方でも4月下旬から5月上旬の連休前後から田植えが始まります。
4月12日に稲の種もみを育苗箱にまき、ハウスの中に設置したという松本市野溝の窪田和隆さん宅でも、稲の苗が15センチから20センチぐらいに育ち、5月10日の田植え前日、田植え前の準備を行いました。
一つひとつの育苗箱に殺虫剤を散布し、稲の苗に絡まっている薬を棒で払って下へ落とします。その上から、ジョーロを使ってたっぷりと水を掛けます。これで準備は整いました。
田植え当日は、ハウスからトラックへ苗箱を積み込み、植える田んぼへと向かいます。
苗をトラックに積んで、運びます
田をうるおす大事な水
昨年の秋に水を払ってから、田んぼは乾燥した状態なので、田植えの2週間ほど前から、水を入れて荒代(あらじろ)を掻きます。更に、1週間程前に植代(うえじろ)を掻きます。この田んぼは、「払いまち」といって水路の下流にあります。
圃場整備された田んぼの水門
田植えの時期になると、どの家も一斉に田んぼに水を入れるため、下流にある田んぼは水を入れるのに時間がかかることがあります。今年は3日間水路を空けっぱなしにしても、水がなかなか入らなかったそうです。昔は水路を巡って争いが起きたといわれますが、水は大切な資源なのです。
昔ながらの取水口
お金をかけて、このような取水口を設置する農家さんもいます
みんなが揃い、働くことが楽しい一日
10年ほど前に購入した、乗用田植え機で植えていきます。
田植え機に、苗を補充します
苗箱の苗は根が張り巡らされているので、わし掴みにして取り出します
この田植え機を使うのは、1年でなんと田植えをする1日だけ。そのため、3軒の家で共同購入して一緒に使っています。
和隆さん宅では、田植えはご兄弟やその奥さん、息子さんたちが総出で行う毎年恒例のイベントでもあるんだとか。年末年始とお盆に加え、田植え、稲刈りと脱穀は、一家が揃う大切な日なんです。田植え機を操縦する人、田んぼの両サイドで苗を補充する人、空いた苗箱を洗う人、とみんなで手分けして作業は進みます。
空いた苗箱は、その場で洗います
市街地からほど近い和隆さんの田んぼの周りは、昔は全て田んぼでしたが、今はアパートや住宅に囲まれています。それでも、「ここは田んぼのままにしておくんだ」と、和隆さんは言います。
周りの土地は、田んぼからアパートへと変わりました
1枚目の田んぼが終わると、お茶の時間になりました。おにぎりやフキの煮物、食用菊のおひたしなどが並びます。身体を使う農作業ですから、おにぎりが、ぺロっと食べられてしまうんです。「何の具のおにぎりにしようか?」と、会話も弾みます。
2枚目の田んぼに移動しました。こちらは圃場整備されているため機械で植えやすいのですが、四隅や上手く植えられていない苗の植え直しなどは人の手で行います。この日は、朝8時から12時までの作業で、2箇所合計約30aの田んぼに、苗箱92枚分の苗を植えました。
真っすぐ、植えることが出来ました
おいしいお米ができますように
7月の「土用干し」の日まで、毎日朝5時半から田んぼに水を入れ、1時間ほどしたら止める作業が続きます。「土用干し」とは、1週間ほど水を入れず、田んぼの土がひび割れた状態にすることです。稲が水を求めてしっかり根を張るため、倒れにくい稲に育つそうです。おいしいお米が出来るのは、もう少し先です。
田んぼの水は、透き通っていてとてもきれいでした