米穀

農の裏舞台:田植えに使う苗はどこで育てる?

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県中部の松本地域では、春の農作業が本格的に始まっています。
すでに県内各地で、レタスなど葉物野菜の定植が盛んに行われ、松本市波田地区ではスイカの定植も始まりました。そんな中、例年5月の連休明け頃から行われる田植えのための準備も始まっています。

20140416.jpg田に生命が宿るとき
JA松本ハイランド(本所:松本市)芳川支所管内で、高齢で水稲栽培が難しくなった農家などの委託を受け、同支所管内のおよそ60ヘクタールで農作業などを請け負っている有限会社芳川営農では、委託を受けた田んぼの畦塗り作業が始まっています。また、個人で田作りを行う農家では、できるだけ土を平らに保とうと、畦際に寄った土や、トラクターで起こした時にタイヤで押した土を、スコップを使って低くなった場所へ移動したり、畦切りや取水口・排水口の確認作業などを行って、代かき(田植え前の田に水を入れて整地する)の準備を進めています。

育苗は貴重な体験
田植えに使う苗は、JAなどに育苗を委託する農家が増えています。芽が出たら譲り受けて自前のハウスで育てて使う農家や、すぐ田植えに使える大きさまで育ててもらう農家もいます。育てる手間が大変なためです。
もちろん、自前で育てる農家もあります。松本市芳川野溝の窪田和隆さんもその1人。「育苗」とはどんな作業なのか、教えていただきました。
購入した籾、「コシヒカリ」12キロともち米の「もちヒカリ」1キロを、消毒専用のプラスチック製の桶に入れ、朝と晩の3日間、38度程度で温湯消毒。その籾を、プラスチック製の苗箱に入れてハウス内で温めながら芽を出させます。

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消毒した籾

アートのように繊細な工程

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苗箱

苗箱の大きさは57センチ×27.5センチ×深さ3センチ(すべて箱の内側で計測)で、箱にプラスチック製の薄い板状のものを敷き、その上に田植え機専用育苗床土の「しなの培養土1号」を入れます。
ある一定程度入れるため、専用のヘラで余計な土を取り除きます。取り除いたところで、ジョロで水を十分にかけます。

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(1) 苗箱に土を入れる

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(2) 専用のへらを使って、土を一定量にする

その上に手で押しながら籾を撒く専用器で籾を撒きます。しかし、均一に撒くのはなかなか難しいため、人の手を使って、薄く撒かれているところへは籾を撒き、厚く撒かれているところは指で横へはじき飛ばし、できるだけ均一になるよう手直しをします。

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(3) 専用機で均一に籾をまく

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(4) 籾が均一になるよう、人の手で手直しをする

この作業を終えた苗箱に再度上から土をかけ、かけ過ぎた土を専用のヘラで取り除きます。

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(5) さらに、上から土を均一に被せる

コシヒカリ用苗箱100枚ともち米用苗箱6枚の合計106枚の箱を窪田さん夫婦と子どもさん、弟さん夫婦の5人で作りました。
JAなどに苗を育ててもらうよう依頼をすると、通常ここまでの作業はすべて機械で行います。

その後、苗箱を軽トラックに積んで、近くにある蒲鉾型のビニールハウスまで運びました。当日は天気が良かったため、ハウス内の温度は37度にまで上がっていました。作業をするには暑過ぎるので、ビニールを少し開けて風を入れながらの作業となりました。

ハウスに移動した苗箱は......
育苗の作業はまだ続きます。
あらかじめ平らにした地面に厚めのビニールを敷き、その上に苗箱を2列に並べていきます。並べ終わったら苗箱の上に薄いビニールをかけます。苗箱が動かないように箱の横の土を箱に押し付けます。

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(6) ビニールを敷いた平らな土の上に苗箱を並べ、
苗箱が動かないように土を箱に押しつける

次に針金状の支柱を、苗箱をまたぐように土に差し込みます。その上に厚手の白いビニールをかけてようやく作業終了です。

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(7) 支柱をたてる

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(8) ビニールをかける

2日〜3日程で芽が出ますので、苗箱の上に掛けた薄いビニールを取り除きます。

あとは、蒲鉾ハウス内の温度管理と水やりで苗を育てます。特にハウス内の温度管理は重要で、晴天の日などにうっかりしていると、ハウス内が暑くなり過ぎてしまい、苗を枯らしてしまうことに......。また、苗が伸びすぎてしまわないようにも、気を使います。伸びすぎると、苗の上の部分を切って使うことになるのです。
育苗もなかなか手間のかかる仕事なのですね。

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農畜産物や店舗・施設の状況は変わることもございますので、あらかじめご了承ください。

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