果物

完熟の美味しさを伝えたい〜信州リンゴ物語

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晴れ渡る青空のもと、真っ赤に色付いた実がたわわに実るリンゴのシーズンが信州に訪れました。毎年恒例ではありますが、このすてきな光景を惚れ惚れと眺める日々がこれからしばらく続きます。 県内のリンゴ畑では、不動の人気を誇る「フジ(サンフジ)」の収穫をおよそ1カ月後に控え、葉摘み作業(リンゴに十分日光が当たるように葉を摘む作業)に"せい"を出している人も多いのではないでしょうか。そんなフジの登場を前にした10月の信州は、様々な品種のリンゴが続々と出回る楽しみな季節でもあります。この機会にぜひいろいろなリンゴを食べ比べ、その味わいの違いを楽しんでみてください。 今回は、ニューフェイスのリンゴなど数ある品種のなかでも、根強い人気をもつ「紅玉」を育てる農家さんにおじゃましました。

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紅玉を求めて
紅玉の歴史は古く、フジよりも前から栽培されていたといわれています。すでに明治時代には栽培が行われ、国光(こっこう)と共に日本を代表する品種だったといいますから、懐かしさを感じる人も多いことでしょう。けれど酸味に特徴をもつ紅玉は「酸っぱいから苦手」と敬遠されることも多く、甘くて食味の良い品種が次々につくられるようになった今では、紅玉を栽培する人もその生産量も減少傾向にあります。
そんななか、今なお紅玉をつくり続けているのは、長野市在住の内堀喜公男(きこお)さんと奥様です。

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「メジャーじゃないけど、じつは好き」
「じっくりと熟するのを待って収穫した紅玉は、他にはない独特な美味しさですよね」とうなづく奥様。"ボケやすく"(ボケる=リンゴの歯ざわりが軟らかくなりシャキシャキ感がなくなること)、日持ちがしないため、収穫が早めに行われる結果、「酸っぱいだけもの」というイメージが付いてしまいがちな紅玉。けれど、陽の光を存分に浴びて完熟した紅玉を生で食べれば、なかなかの酸味と甘味が溶け合って、その両方がギュ〜ッと凝縮したような深い味わいがたまりません。完熟した紅玉は、「メジャーじゃないけど、じつは好き」と、その美味しさにハマる人が意外と多いのです。 内堀さん夫妻は、紅玉が好きな人やお菓子やジャムなどの加工品づくりに「どうしても使いたい」という人のために、細々ながらも毎年樹の手入れを欠かさず、もう何十年も紅玉をつくり続けています。
内堀さんのリンゴ畑を360度クルリと見渡せば、黄色にピンクに赤と、微妙に色合いを変えた果実の数々。内堀さんは現在、リンゴではピッコロ、秋映、シナノゴールド、シナノドルチェ、フジ、梨ではラ・フランスとオーロラ、さらに柿と、たくさんの種類の果樹をつくっています。「だって楽しいじゃん」と人懐っこい微笑みを見せる喜公男さん。
7反歩ほどあるリンゴ畑では、代々受け継ぐリンゴの樹を以前は奥様が中心になって管理していましたが、喜公男さんは退職を機に2年ほど前から本格的に農業の世界へ踏み出し、以降ご夫婦で畑に繰り出しては試行錯誤を楽しみながら農作業を行う日々、とのことです。

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美味しいリンゴの見分け方
そんな喜公男さんおすすめのリンゴは、これから登場となる黄色が目印のシナノゴールド。

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「酸味と甘みのバランスが絶妙で、何といってもこれは美味しい」とシナノゴールドに惚れ込んでいる様子。「赤いばかりがリンゴじゃない。もっとたくさんの人にシナノゴールドを食べてほしい」とも話します。そんなシナノゴールドの美味しさを見分ける方法を聞けば、「黄色が強く、ワックスを掛けたように艶が出ているものが美味しい証拠」。さらに、現在旬を迎えている秋映では、「赤色がドス黒くなったようなものが美味しいリンゴ」と、一緒に園内を歩きながらその樹の前で教えてくださいました。ほんのりと赤みがかってきたフジの前では、「最近はパッと色付くものが主流ですが、以前からある縦に筋の見えるものの方がおいしい思う」ともこっそり話してくれました。
「本来なら、木の上で完熟したものがいちばん美味しいので、そんな果物をもっとたくさん食べてもらいたい」と奥様。店頭での販売までに時間を要する市場への出荷では、味がのったベストなタイミングでの収穫は難しいものですが、内堀さんをはじめ農家では、美味しい農産物をたくさんの人に届けたいと、丹精込めて農作業を行っています。

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「新わい化」作業を知っていますか?
高齢化などにより農業を断念する人が年々増えるなか、数年前から内堀さんが導入を始めたのがリンゴの「新わい化」栽培。簡単に言ってしまえば、樹を大きく生長させない代わりに、これまでより狭い間隔でたくさんの樹を植えることができるのです。その結果として収量が多くなり、また樹は一列に並んだ状態で、それほど背が高くならないことから、収穫作業がしやすいといった利点があります。そのようにして育った樹が長く枝を伸ばすにつれて、下へ下へと枝先を伸ばす光景は、なんだかお化けのようでもあります。その下へと伸びる枝にリンゴが実ることによって、人が立ったままの状態で収穫しやすく、以前の樹よりも作業が楽に行え、ハシゴに登って収穫する量も少なくなると、安全性への期待も持たれているようです。

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時代のうねりの中で、リンゴの品種はもちろんのこと、リンゴが実る景色までもが変わってくるのかもしれません。姿形は変われども、日々の健康に欠かせないのがリンゴです。リンゴは「1日1個食べれば医者いらず」と言われるように、生活習慣病の予防や疲労回復にも効果が期待できます。ということで、これからのシーズンは1日1個、毎日の健康づくりにぜひリンゴをお召し上がりください。
この時期は、もっとも食べ頃なリンゴがお手頃価格で手に入る絶好の機会でもあります。旅行などで長野県を訪れた際には、ぜひ県下各地の直売所にお立ち寄りのうえ、今年の味をお楽しみください。

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こちらは の記事です。
農畜産物や店舗・施設の状況は変わることもございますので、あらかじめご了承ください。

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