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新宿区の皆さんと連携 - 耕作放棄地再生隊

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耕作放棄地の解消に取り組む伊那市の田原集落で10月20日〜21日、春に植えたサツマイモの収穫などを行う「田原  秋のおご馳走(ごっつぉ)まつり」が行われました。このまつりは友好提携を結ぶ新宿区のみなさんといっしょに取り組む耕作放棄地再生事業の一環で行われているものです。土に触れる機会の少ない都会の人と力を合わせた活動は、より新鮮な刺激の相互作用で、農業だけに留まらない多方面への波及効果にも期待を寄せています。
2カ年計画で進むこの事業の、2年目となる今年は畑作業のほか、キノコ狩りや「蜂の子」の採取、郷土食づくりなどにもチャレンジし、伊那の食文化 や伝統にも触れる機会となりました。

再生された畑から生まれた芋焼酎
「1本飲めば1平方メートル再生!」

長野県南部の伊那市田原地区は天竜川左岸にあたる地域です。標高は約590mで、河岸段丘の下段に位置しており、養蚕が盛んだった40年ほど前までは斜面いっぱいの桑畑が広がっていたそうです。ところが養蚕業の衰退とともに農地は荒れ、後継者のいなくなった畑は遊休化し、耕作放棄地となっていきました。河岸段丘上段地区からの土砂の崩落や流出による災害を懸念した田原地区では、土地の荒廃が永年の課題となっていました。

saiseimae.jpg 再生前の耕作放棄地

そこで立ち上がったのが、地元生産者らで組織する田原集落農業振興センターや、田原地区の集落営農組織「農事組合法人 田原」です。国の耕作放棄地緊急対策交付金の補助を受け、昨年度から2カ年計画で16haという大規模な耕作放棄地再生事業に取り組みました。地元生産者が自ら大型車や重機を動かし、桑の木を抜根したり傾斜を緩やかに造成したりと農業機械が入れる圃場を整備し、既に小麦や白ネギなどの作付けが始まっています。

saiseigo.jpg 再生された畑

一方、伊那市と友好提携を結ぶ新宿区とは、平成18年度から環境保全協定に基づくカーボンオフセット事業など林業を通じた環境保全のための交流を行ってきました。
この友好提携5周年を迎えた昨年度、伊那市と「農事組合法人 田原」では、新宿区民を対象に「耕作放棄地再生ツアー」で参加者を募り、昨年6月に"耕作放棄地再生隊"を結成したのです。再生隊が挑戦したのは刈払機を使っての草刈りから始め、畑を耕し、サツマイモを定植し、収穫したサツマイモで芋焼酎を仕込むという取り組みです。出来上がった焼酎は「耕作放棄地再生隊」と名付けられ、「1本飲めば1平方メートル再生」のキャッチフレーズで販売されました。芋焼酎は720ml瓶で300本を生産し、耕地の再生作業に直接参加できない人でも買って飲む事で協力してもらおうとの試みでした。新宿区役所近くの居酒屋にも置いてもらい、評判も上々のようです。

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「蜂の子」初体験も再生隊のミッション?
そして2年目を迎えた今年は約5aの畑に、焼酎に適したサツマイモ「小金千貫(コガネセンガン)」を定植・栽培し、今回の秋の収穫祭「田原 秋のおご馳走(ごっつぉ)まつり」を迎えました。
都市部からのみなさんを受け入れる「農事組合法人 田原」の事務局長・酒井弘道さん(59)は「昨年はサツマイモの収穫と仕込みを体験していただきましたが、今年は趣向を凝らした内容にしました」と到着を心待ちしていた様子。20日に新宿からバスで到着した15人を迎えると、さっそくきのこ狩りや、地元に伝わる「蜂追い」を体験してもらいました。そして、極めつけは蜂追いで獲得した巣から信州の郷土食「蜂の子」を取り出して試食。
ピンセットを使って蜂の巣から蜂の子を取り出す作業は、蜂の幼虫の姿に初めこそ戸惑ったようですが、時間とともに試食の回数も増えていきました。参加者のひとりは「あの感触と食感は一生忘れないと思います」と苦笑い。

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地元農家に泊まる「民泊」でひと晩過ごした参加者たちは、2日目は朝から芋掘り作業です。秋晴れの空の下、慣れない手つきながら土を掘り、芋を収穫する喜びに浸りました。
「小学生以来の芋掘りでしたが楽しかったです」と加藤桂さん(26)。
農業に興味があり、初めて参加したという近藤久子さん(34)は「都会に住んでいる人の中にも農業に興味ある人は多いと思いますが、こうした機会が少ないのかもしれません。後継者不足も言われていますから、法人化によって都市部の人が参加できる機会が増えたらうれしいですね」と来年以降の参加も希望していました。

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芋掘り作業の後は「五平餅」や「そば打ち」など郷土料理づくりにも挑戦しました。新米の餅にくるみがたっぷり入った味噌を塗った「五平餅」や、長さも太さも様々な手打ちそばも貴重な体験となった様子。しかもその日たまたまイノシシが罠にかかっていたとのことで、急きょイノシシBBQも食べることができました。参加者からは、「意外とあっさりしていておいしかった。」といった声が。有害鳥獣に悩まされている伊那市ならではのジビエ料理のサプライズも楽しめ、和気あいあいとした時間が続きました。
新宿区から市農政課に派遣されている岸裕太さんは「参加者を募ることに苦労しましたが地元のみなさんの企画に助けられ、楽しんでもらえました。民泊も初めて取り入れたのですが、都市住民との交流を通して、伊那市の農業の振興を図りたいと思っています」と話しています。
また昨年度まで伊那市に派遣で来ていた区役所の佐藤崇史さん(31)は「私が所属していた時は農作業を行う耕作放棄地対策といった感じでしたが、民泊を取り入れたり、体験を多くしたりとメニューが豊富で広がりができていて驚きました。こうした事業は人がつながらないと出来ないことですし、つながることでストーリーが完結すると思います。今後も多くの人に知ってもらうとともに参加してもらいたいですね」と2日間を振り返りました。
酒井事務局長は「今回は体験も盛りだくさんで楽しんでもらえたと思いますが、伊那市には村祭りや中尾歌舞伎などまだまだ紹介していない伝統や文化があります。耕作放棄地対策から始まった交流ですが、消費拡大や地域活性化など、今後は新しい展開につながっていけば面白いと思いますね」と、さっそく来年以降の企画を練り始めています。

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農畜産物や店舗・施設の状況は変わることもございますので、あらかじめご了承ください。

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