暖かい春を待ちわびる今日この頃。
ひと足早く春を感じることのできる花としてお正月や卒業式、入学式でよく飾られる「啓翁桜(けいおうざくら)」をご紹介します。
山形県が全国出荷量日本一として知られていますが、全国的に需要が多く、2~3月の農閑期に出荷できるため、耕作放棄地や遊休農地対策として長野県内でも栽培が広がりつつあります。
農閑期・遊休農地を活用
JA木曽では2018年から栽培に取り組んでいます。
木曽谷の南部にある大桑村の田中芳男(よしお)さんは、おもに水稲(60a)や小菊(3a)を栽培する農家です。水稲や小菊の手が空く時期に収穫や出荷の作業ができて、遊休農地を活用できることに魅力を感じ、4年前に啓翁桜の栽培をはじめ、今年で出荷2年目です。現在、10aの農地で100本ほどを育てています。
出荷する啓翁桜を持つ田中さん
「昔、養蚕をしていた時の桑畑の土地が余っていたので、活用することにしました。景観もきれいですし、消毒や中間防除などの手間がかかりません」と田中さんは言います。
啓翁桜は、枝の幹の高さは3mくらいで、箒(ほうき)状の樹形が特徴です。
枝の再生力が強く、枝を切り込んでも弱りにくいので切り枝用に適しています。
「毎年1本の樹から1/3程度の枝を切り出荷します。4月上旬になると花が咲いてきれいですよ」
4月上旬の圃(ほ)場の様子
冬に咲くのは「吹かし」のおかげ
1月7日、啓翁桜の収穫作業です。田中さんは花芽のついた枝を切り取ります。
寒い日はマイナス10℃のなか、作業することも
収穫後、通常より早く開花させるために「吹かし」という作業を行います。
吹かしとは収穫した啓翁桜を水揚げし、15~18℃に保ったビニールハウスで保管する作業です。休眠していた桜が温度上昇により「春が来た」と勘違いして花芽が徐々に膨らみはじめ、開花するというわけです。
吹かし作業の様子。仲間と談笑する田中さん(正面左)
1月11日~25日の間、吹かしを行い、出荷の時期を迎える
啓翁桜でひと足早い春を感じよう
啓翁桜は花が咲いてから1週間ほど花もちします。涼しいところに飾ると、より長もちします。
JA木曽の啓翁桜は関東と関西の生花市場に出荷されます。また、Aコープきそ店(木曽町)の直売所での出荷販売も予定されています。
お花見の季節はまだまだこれからですが、啓翁桜でひと足早く春を感じましょう。