果物

おいしいリンゴの作り方

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中生種リンゴとして近年注目の新品種のひとつがシナノスイート。今年も実がたわわになって出荷が近づいています。人気者のシナノスイートのような新品種が誕生するまでには、とても長い期間と労力がつぎこまれていることを、ご存じでしたでしょうか? 今回は話題のシナノスイートがどのように育種された(新しい品種として作り出された)のかを、御紹介いたしましょう。


写真・長野県果樹試験場




りんごが樹になっているのを見たことがありますか?

 

シナノスイートの親品種は「ふじ×つがる」。長野県果樹試験場(須坂市)で昭和53年の春、ふじの花(♀)につがるの花粉(♂)を交配しました。「ふじ」 のように貯蔵性があり、果汁が多く、「ふじ」と「つがる」の中間の時期に収穫できて、なおかつ品質が揃う(ふじは商品にならない果実の発生比率が高い) 品種を育てることをイメージして、「ふじ」と「つがる」が親品種として選ばれたわけです。この交配で得られたリンゴの種子は97個でした。その種子を翌年昭和54年 の春に蒔き、出てきた芽(実生=みしょう)を大事に大事に育てました。種を蒔き、芽が出て、それが大きな樹になってリンゴの実を着けるまで7〜8年かかります。

今年芽を出した実生(みしょう)
ikushu3.jpgリンゴは元々遺伝子が複雑で、種子から育てた樹に実るリンゴの特性は1本1本樹ごとに異なります。その中から果実特性のすぐれたものを選び出し、更に何年かは同じように実を成らせて気象条件が異なっても平均的に良い果実が取れるの樹はどれなのかを選抜 します。これが『一次選抜』と呼ばれる段階で、ここまでの過程で交配した年からすでに10年〜15年近い年月を要します。

そして97本のリンゴの実生から、「うん、これはいいのではないか」と納得できる果実ができたのは、わずかに2本でした。その2品種について、その後3年ほど費やし、それぞれの果実の特性や品質データを蓄積する『二次選抜』を行って、その結果として1本残ったものが選抜系統番号「長果10」=未来のシナノスイートでした。

 

さあそこで、当初の目的にかなった品種ということで、長野県下の特定のリンゴ農家で栽培してもらうこととなりました。現地リンゴ畑での適応性を試験し、栽培適地はどのような条件のところなのかを定めていきます。結果として「長果10」は、標高500m以上の場所での着色が良く、その地域での栽培を薦めることとなりました。

このような度重なる試験を経過して、長果10は「シナノスイート」の品種候補名で平成6年3月31日に農林水産省に新品種登録の出願が行なわれました。その後約2年間の農林水産省の審査を経て(最初の交配から数えると実に18年目!)平成8年8月24日、晴れて新品種「シナノスイート」が品種登録されたのです。

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8年かけて実ったリンゴの実

長野県果樹試験場で開発したリンゴの品種としては2つめ(昭和59年に高嶺(たかね)が品種登録)の登録品種とういこともあり、当時の関係者の感慨には計り知れないものがあったと思われます。

農林水産省に品種登録出願した時点より苗木生産が可能となり、長野県では社団法人長野県原種センター(長野市松代町)から長野県果樹種苗協会に委託されてシナノスイートの苗木生産と販売がはじまりました。また各地で、既存のリンゴの枝に接ぎ木する「高接ぎ」という方法でもシナノスイートの栽培取組みが始まりました。

シナノスイートの若木や高接ぎした樹の成りはじめの数年間は樹の勢いが強く、できた果実はやたら大きくて、食味も着色も良くないため、県下の生産者からは当初「なんだこれは」との声が上がったようです。しかし樹が大きくなって樹勢も落ち着いてくると、糖度が高く、歯切れの良い気品のあるリンゴとなってきました。

生産者にとって何よりもうれしいのは、収穫前落果が無く日持ちが良いので、畑で廃棄しなければならないような果実がほとんど出ないということです。今では長野県下で約155ヘクタールの面積でシナノスイートが栽培されております。長野県および長野県農協では更に350ヘクタールまで面積の拡大を行なうよう、長野県のリンゴ産業の活性化の柱として推進しております。

気の遠くなるような根気との戦い

シナノスイートの後、長野県果樹試験場からは同じくリンゴの「シナノゴールド」(親品種=ゴールデンデリシャス×千秋)が平成11年に品種登録されました。黄色品種ながら果汁が多く、風味が抜群で歯切れの良い品種は国内のみならず世界のリンゴ産地から注目を浴びております。そして現在品種登録出願中の「リンゴ長果17」改め「シナノドルチェ」は、シナノゴールドと同じ両親の交配組合せでありながら9月の半ばに収穫できる赤色のリンゴで、甘味・酸味をそなえたこれまた期待の品種です。近い将来にはまるかじりに適したリンゴも出番を待っているとか。とにかく長野県果樹試験場からは目をはなせません。

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リンゴ新品種予備軍

シナノスイートは97分の1の確率で出てきましたが、これは極めて異例な数字と言えるでしょう。シナノゴールド、シナノドルチェは495個の種子から出てきた2品種ですし、通常果樹の育種の世界では1000から2000個体に1つの新品種がでれば良いとされていて、長年にわたって手入れ・選別の努力を重ねても結果的に何も残らなかったということも良くあることなのです。

リンゴはバラ科の植物のために幼木の間はトゲがいっぱいで管理も大変です。また樹が大きくなってから成る実でないとその特性を見極められないため、8年以上の間、すべての樹をしっかりと管理しなければならず、それだけの広さの畑が必要となります。従って試験場など設備の整ったところでないと「育種」というものにはなかなか手を出せないというのが実態です。育種の仕事はとてもロマンにあふれてるように見えますが、とにかく気の遠くなるような根気との戦いと言いえるのです。

シナノスイートのご注文はフルーツ農園(三水村)、ふるさと農園(長野市)へ。そのほかのリンゴも僕らはおいしい応援団へ。

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