果物

ひらたねなしかきを甘くおいしくする技術は

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秋ですねえ。柿食えば鐘が鳴るなり善光寺。ん? 秋の山里といえば、柿の木のある風景できまりです。夕焼けのようにきれいなオレンジ色の実がなった柿の木は、なんとも郷愁を誘います。長野市の西に位置する上水内郡信州新町は、そうした景観の広がる「平核無(ひらたねなし)柿」の産地。「平核無柿」とは、山形県では庄内柿、佐渡島ではおけさ柿として知られる、渋柿を代表する柿です。「えっ? 平核無柿って甘柿じゃなかったの?」と思っていた方に、信州新町の甘くておいしい柿ができあがるまでを今回は紹介しましょう。

渋柿の王様と呼ばれる柿
「平核無柿」はその名前の通り、平らで種のない柿です。ふるさとから送る晩秋の贈答品として喜ばれる秋の果物ですね。もともと信州新町では、養蚕がさかんだったころから、桑畑の周囲に柿の木が植えられるなど、あちらこちらで柿が栽培されてきました。多くは干し柿(コロ柿)にする「蜂屋(はちや)柿」でしたが、その後、1980年代に入ってから、新たな特産品づくりとしてこの「平核無柿」の栽培がはじまりました。

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平核無柿は、糖度は高いものの、「渋柿の王様」と呼ばれるほどの渋柿中の渋柿。完熟すると自然に渋は抜けるのですが、熟してドロドロの状態では売り物にはなりません。そこで、良く知られるのがアルコールを使った渋抜き。当初は信州新町でも、アルコールで渋抜きをしていましたが、熟して柔らかくなるのが早いことから、17年ほど前から炭酸ガスを使った脱渋に切り替えました。

渋柿も完熟すれば渋くない
そもそも柿の渋(しぶ)ってなにでしょうか? 柿の渋の元はよく名前を聞くタンニンで、お茶やワインの渋みとしても知られる成分です。柿渋には水溶性と不溶性のものがあり、かつて番傘などに使われていた柿渋は不溶性のものです。平核無の柿渋は水溶性のため唾液で溶け、口の中で渋く感じるのです。そのため脱渋作業は、タンニンが口の中で溶けないよう、不溶性にすることが肝心です。柿は、収穫してからもヘタの部分で呼吸をしていますが、呼吸を止めると自らアセトアルデヒドを生成して、タンニンを不溶性にするのです。その性質を利用したのが、炭酸ガスを使った脱渋方法です。

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信州新町では約100軒の農家で柿の栽培をしています。脱渋場には約2.2m×2.7mの枠が3つあり、そのスペースにおさまるよう柿を並べたコンテナを重ねます。枠の上には天井からつるした帆布(厚手のテント地)で作ったこたつ布団のような仕組みの装置がさががってきます。このテント室内には一度に115個のコンテナを並べることができ、一カ所で約2.3tの脱渋を行うことができます。

渋をとって甘い柿にする技術
布団のような装置をかぶせて密閉した中には、加温装置と除湿機があり、まず1日目は約23℃に加温して12時間放置します。翌2日目は炭酸ガスを充満させて、さらに24時間。3日目はガス抜き後、23℃に保温して48時間密閉の状態を続けます。こうして4日間の加温と炭酸ガスで脱渋を進め、数日後には歯ごたえがしっかりした甘い甘い柿が店頭に並びます。

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JAながの柿部会の会長・青木忠茂(あおき ただしげ)さん(75)は「今年は4月下旬の遅霜にやられて収穫は少なめ。全滅した農家もあって、平年の7割くらいです」と言っています(写真上)。JAながのでは約36tの出荷を予定しているそうです。

秋は柿を食べてください
柿の学名は「Diospyros kaki(ディオスピロス・カキ)」と言って「神様の食べ物」という意味があります。柿には「persimmon」という英語もあるのですが、今では世界の多くの国が「カキ」と呼んでいます。栄養素も豊富で、酸っぱいイメージのビタミンCが、柿にはキウイフルーツに匹敵するほど含まれているのも大きな特徴。またアルコール分解酵素やカリウムの利尿作用もあるため、二日酔いの予防にも良いとされています。皮膚の乾燥や肌荒れを防ぐビタミンAや、肌のハリを保つビタミンCが豊富なので女性の美肌はもちろん、抗酸化作用や免疫力を高める働きで、風邪の予防にも最適です。

今月下旬には信州新町役場前のJAながの信州新町支所の選果場や道の駅で、この甘い柿を買うことができるようになります。価格は、1キロ(5個前後)で300円ぐらい。

待ち遠しいですね。

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農畜産物や店舗・施設の状況は変わることもございますので、あらかじめご了承ください。

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