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家族総出でギンナン拾いをする農家と会いに

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周囲の高い山々が、ちらほら賑やかな彩りへと移りかわりはじめた頃、県北部の下高井郡山ノ内町夜間瀬で、ギンナンの収穫が行われました。思えば、ギンナンとはめったに出合うことがありません。ほんとうにときどき、年に数回、茶碗蒸しなどで遭遇する程度のギンナン。

しかし今回はたくさんのギンナンに出合える機会とあって、ちょっとした喜びと、そしてはたしてあの特有の臭いに耐えうるか、多少の不安を抱きながら、収穫をおこなっている望月惣市(もちづき そういち)さんのギンナンの畑に足を踏み入れました。

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イチョウの青い葉の間に鈴なりの実が
高社山(こうしゃさん)、地元の人は「たかやしろ」、さらに姿が富士山に似ていることから、「高井富士(たかいふじ)」とも呼ばれるその山の麓に、望月さんの畑はあります。今はまだ青々としたイチョウの葉、しかしその青く生い茂ったイチョウの葉っぱからは、黄色みを帯びたオレンジ色の、そしてまるで枇杷(びわ)のような質感を持ち、サクランボより少し大きめのサイズのものが見て取れます。幹から枝(え)を伸ばし、鈴なりに丸々として可愛らしいギンナンをたくさんぶらさげているではありませんか。しかも幸いなことに、青い葉っぱに生るギンナンの果肉は、まだ熟しきっていないために、あの特有の臭いも感じられません。

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わあ、この実の採り方は楽しい
すると望月さんちの元気のいい男の子が、そのギンナンの実がついた枝をゆらゆら揺さぶりはじめました。ゆらゆらゆらゆら。するとすぐさま「バサバサ−ッ」と、まるで雹(ひょう)でも降ってきたのではないかと驚く程に大きな音をたてて、足元に敷いたビニールシート一面にギンナンの実が落ちてきたのでした。

簡単な作業と成果の分かりやすさに、子どもたちも楽しんでお手伝いをし、この時期ばかりは子供から大人まで家族総出で、畑にある80本もの樹は3〜4日程であっという間にギンナンが収穫される素早さなのだそうです。

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ほんとうに大変なのは実を穫ってから
しかし、じつはそれからが惣市さんにとって大変な作業。収穫の頃はまだ堅い表面の果肉も、ギンナンを集めた袋の中に水を加えて、朝晩と袋のうえから踏みつけて果肉を軟らかくすること10日間。その間、じょじょに果肉の繊維が溶け出して、そうなるといよいよあの独特な臭いが漂いはじめるわけですが、「もうそんな臭いは全然感じなくなったわ」と笑う望月さん。それから軟らかくなった果肉を落として、機械できれいに洗い、さらにすっかりときれいになるまで何度も手洗いをし、そのうえで4〜5日の乾燥を行なった後、いよいよ作業も完了となって、ようやく直売所やJAへ出荷の時期を迎えます。

わたしがギンナン農家になったわけ
首都圏での会社勤めで、ほとんど農業の経験などなかった望月さんは、会社を退職後長野に戻り、母親が作れなくなった田んぼに、「このままにしておいてはいけない」と、栽培から出荷まで多くの人手を要しないイチョウの樹を植えました。

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生長して実をつけるまでにおよそ10年、今はようやく実が生って4〜5年目を迎えたところだそうですが「天候の影響か、収穫量がその年によって違うところが難しい」と望月さんは言います。現在、JA志賀高原のギンナン研究会の会長も務める望月さんは、13名の会員をまとめあげ、ギンナン作りの盛んな地域を視察し、栽培から出荷まで、そして選別の仕方などを学ぶことにより自分たちの活動に取り入れています。さらにより大きな粒のギンナンが収穫できることを期待して、大きな実の生るイチョウの枝を、他所の家から譲り受けて、ご自分が育てる樹に接ぎ木する、という楽しみな取り組みも、望月さんは行っていました。

一番簡単でおいしい食べ方
ところでギンナンにも種類があるのをご存知でしたか? 現在望月さんが作っているギンナンは、藤九郎(とうくろう)という実が丸いものと、金兵衛(きんべえ)という実が少し細長い形のものだそうです。かたちは違いますが、味はそう変わりないのだとか。あのモチモチとした食感の、黄緑色の魅惑的な宝石のようなギンナン。その美味しくて簡単な食べ方を望月さんにうかがえば、殻のついたままギンナンを紙封筒に入れ、電子レンジで2分くらい加熱して、あとはお好みで塩をまぶすか、または殻を取り除いてから油を敷いたフライパンの上で塩を振りかけ4〜5分炒めればOK。ただしこのギンナン、特に小さい子供には中毒の作用が働くそうなので、ついついの食べ過ぎにはくれぐれもご注意を。

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まもなく黄色の葉に包まれる頃
紅葉がゆっくりと山からおりてくる頃、イチョウの樹も全身を緑から黄色にすっかりと色を変え、陽の光に照らされてなお一層輝きを増すところは、なんとも美しいことでしょう。

「それはそれは、周りの紅葉をみるよりも何倍もきれい」

そう望月さんは目を細めて話します。80本もの黄金色に染まるイチョウの樹との出合いも、楽しみになりました。

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農畜産物や店舗・施設の状況は変わることもございますので、あらかじめご了承ください。

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