山間地が多く、高原が至るところにあって、自然あふれる信州。そこには牛の餌となる草が豊富にありますから、昔からたくさんの牛が飼われ、ミルクが搾られてきました。そうした牛たちから搾った乳・生乳を原料に造りだされる乳製品は、県内にたくさんありますが、「あそこのはちょっと違う」という声をしばしば耳にする製品の、造られているファクトリーの名前を聞けば、その名は「望月高原 しらかばアイス・ヨーグルト工場」。
ワオ! 夢のような名前ではありませんか! 毎日の暑さで、ダルさすら感じる体にその甘く冷えたクリ―ミーな味わいが、そっと疲れた体に染み渡ることを想像し、踏み込むアクセルにも自然と力が入って、しらかばアイス・ヨーグルト工場目指しビューンとまっしぐら、高ぶる気持ちを押さえて車を走らせました。
長野県東部、佐久市の西側です。望月宿を南下したところの県道152号雨境望月線。この山あいを走る一本道の途中に、平屋建てのこじんまりとした様子で、その工場はありました。「大草原の恋人 望月高原 アイスクリーム ヨーグルト」のロードサイン。その工場で、県内はもとより全国に大勢のファンをもつ「望月高原シリーズ」のアイスクリームやヨーグルトがつくられているのです。
「飲むヨーグルト」で一息ついて
併設された直売所でまずはひとくち。ここまでやってきた労を自分にねぎらうように、一番人気の「飲むヨーグルト」をゴクリとひとくち。
「?#$%&!」
通常「飲むヨーグルト」に感じる喉元に強く訴えるようなあの酸味を感じません。不思議に思って更にもうひとくち・ふたくち。グビ・グビ。濃厚ながらもまろやかな酸味、そしてあっさりとした甘さが口に広がって、爽やかに喉元を通過していきます。
なんと優しい自然な美味しさでしょう。お店の人にその理由をうかがえば
「なんでしょう、ここの自然環境と新鮮な牛の乳、そしてこだわりの自家製ヨーグルト菌に、お母さんたちの愛情でしょうか」
と、当然のことに今更答えるのも難しいといった様子で教えてくれました。
ミルク工場のなかに入りました!
主原料の生乳は、その日の朝地元の酪農家から、搾ったばかりのものがすぐさまタンクに集められ、ヨーグルトやアイスクリームになるべく製造がはじまります。
飲むヨーグルトは、まず生乳やその他の材料を加えて殺菌し、自家製ヨーグルト菌を入れて発酵させたものを冷却し、およそ1日半後にみごと飲むヨーグルトは誕生するのです。ちょうど飲むヨーグルトの仕込み中であったこの日、特別許可をもらい、身支度を整え工場内へと足を踏み入れました。
少ないのでなく適正な数
驚いたのは製造スタッフの人数。全国の人々の舌を唸らせるその美味しさは、地元の50〜60代のお母さんたちがたった4人。気温の変化と操作のタイミングが味に大きな影響を与えるというデリケートなヨーグルトの製造を、ベテランのお母さんたちが長年の経験をもとに、その日の気温をみて微妙にタイミングを変えていたのです。
代表して話してくれた依田さんは、
「家に帰ってきても『操作のスイッチをちゃんと入れてきたかしら?』って心配になってまうこともあるんです」
と恥ずかしそうに話してくれました。いつ何処にいてもアイスやヨーグルトのことを考えているお母さん。そしてそんなお母さんたちが熟練の技をもってその日自分の分担を正確にこなし、皆で力を合わせることで生み出される美味しさ。
依田さんは「ここには400リットルが2缶しかないから、毎日それ以上作ることは出来ないのよ。だから売り切れてしまって、せっかく来てもらってもお断りしなくてはならないこともよくあるんです・・・」と申し訳無さそうに言います。
おいしい飲むヨーグルトを作りたい
けして大量生産することなく、母の目がじゅうぶん行き渡る範囲で愛情込めて作っているのが実によく伝わってくるこの味は、まさに母の優しさの味。今では一番人気の飲むヨーグルト、この工場で製造されるようになったのは他の製品より後のことだそうで
「当事は巷でも、もうそう珍しくなかった飲むヨーグルトですが、他所のを飲んでもあまりおいしいものと思ってなかったんです。でもある時ある先生が訪れて、その製造方法を教えてくれて出来たものが、あまりにも美味しくて・・・。それからこの工場でも飲むヨーグルトを造るようになったんです」
と依田さんは当事のことを思い出すように瞳を輝かせて話してくれました。
製造スタッフ4名、そして販売と発送の計8名が安定した味を届けるべく、出来上がったものを毎日みんなで試飲して、味を確認するのです。そして意見交換をしながら翌日の製造に反映させていきます。自然の環境で育つ牛がもたらす生乳ですから、季節によっても、夏にはまろやかなサラッっとした味に、そして冬には濃厚な味にと、特別手を加えなくても微妙に味わいが変わるのを感じるそうで
「でも微妙に味が違うのが、自然の素材を使ってつくる手作りの良さでもありますが」と本質的な話も。
ここのソフトクリームは言葉を超える
人里離れた山中にありながら、この日も平日ながら店には続々と来客が。アイスにヨーグルトといってもその顔ぶれは年配の人が多く、お中元用の手続きを済ませ、しかしそのまま帰ることなく一息、椅子に腰掛け多くの人が口にしていたのがソフトクリームでした。
これまたなんて美味しそうではありませんか。その満足そうな表情で頬張る様子にたまらず、これもまたひとくち頂けば、スルスルと喉元を爽やかに滑り落ちていく、サラリとした味わい。そして全身の力が抜けていくような美味しさ。しかも食べ終わっても水が欲しく思わないサッパリ感。というのも多くのものを加えず生乳と砂糖といったシンプルな材料で作られるソフトクリーム。ですからすぐに溶けてしまって、もう少しこの至福のひと時が長く続いてくれれば・・・とも思ってしまいますが、女性ばかりでなく、男性も訪れてゴルフ帰りなどにもよくこのソフトクリームを食べて行くのだそうです。
望月高原にも一度お越しください
佐久市内のスーパーや道の駅などおよそ40店舗で販売されているこの望月高原のヨーグルトと飲むヨーグルト、そしてアイスクリーム。ただしソフトクリームの販売は、この工場横の直売所と、あぐりの湯「こもろ」のみでの販売です。
お中元シーズンとお歳暮のシーズンは非常に混み合うそうですので、なるべくその時期を外してお買い求めいただければと思います。
アクセス:
しらかばアイス・ヨーグルト工場
住所:〒384-2204
長野県佐久市協和3335−1
電話:0267−54-2075
営業:夏季 8:30〜17:30(無休)
冬季 8:30〜17:00(土日休)
・JA佐久浅間 しらかばアイス・ヨーグルト工場 案内ホームページ ※ホームページ上での注文は9月上旬頃まで一時休止しております。
・あぐりの湯「こもろ」のウェブサイト