信州の朝晩はめっきり肌寒くなり、高い山から少しずつ紅葉が降りてきて、木の実などの秋の味覚が楽しめる季節を迎えています。その中で黄色に黄葉する銀杏(イチョウ)の実であるギンナンをご紹介します。
木から落ちたばかりのギンナン
銀杏は、約2億5千万年前の古生代中頃に地球上に出現した古い植物で、氷河期も奇跡的に生き残りました。ダーウインが、「生きた化石」と呼んだのはそのためです。日本には15世紀(室町時代前後)頃伝わったとされています。 銀杏の樹には、雄の木と雌の木があり、実がなるのは雌の木だけです。ギンナン全体が種子で、外側の柔らかい部分は種子の外種皮で、それを取り除くと固い殻につつまれた銀杏の核が出てきます。ギンナンとして食するのは、固い殻の核を割った中にある仁です。
ギンナンを割るとひすい色の実が現れる
今回はギンナンが出荷されるまでの作業工程を紹介します。訪れたのは、中央自動車道伊那インターから車で10分程の上伊那郡南箕輪村北原の北原哲郎さん(83)と志づ子さん(80)です。 北原さんが出荷するギンナンが実る銀杏の樹は終戦の年に植えられたもの。樹齢70年以上の樹高は約16m、幹周は3m以上あり、木陰は夏涼しく冬は雪が積もらない場所で、腰掛が用意されていています。「夏の商談はいつもここなんだよ」と志づ子さんお気に入りの場所です。 今年(2016年)は、10月上旬から銀杏の実(ギンナン)が黄色く色づきはじめ、台風18号でたくさんの実が落ちましたが、その後、風が吹かず、「小さい銀杏の樹であれば枝を振るって実(ギンナン)を落とすこともできるんだけれど、わが家の銀杏の樹は大きいので、風頼みなんだよ」と。 昨年(2015年)は、この大木から150kgのギンナンを収穫しましたが、今年はまだまだ先のようで、ギンナン拾いは、銀杏の葉が黄葉し、霜が降りるまで続きます。
銀杏の木の下で北原哲郎さんと志づ子さん
ギンナンの皮をむく専用の機械
ギンナンを皮むき機に入れる
落ちたギンナンは毎日お二人で拾い肥料袋に入れます。肥料袋で2~3日ねかせると外種皮が柔らかくなり、ギンナンの強烈な臭気が漂います。そのギンナンを庭に設置してある外種皮をむく専用の機械に入れ5分程回します。みるみるうちに皮と核が分離され、強烈な臭いも抜け、きれいな核が現れます。
皮があっというまにむけていく
皮は機械の底から出てくる
皮がむけたギンナンたちが出てくる
きれいになった核は水にさらし、表面に浮いたギンナンを除き一日アク抜きします。「今は素手でギンナンに触れても大丈夫だけれど、若い頃はかぶれて大変だったんだよ」と志づ子さんは教えてくれました。ギンナンの果肉にはギンコール酸などのアレルギー物質が含めれていますから、触れる時はご注意を。 アク抜きしたギンナンは、専用ハウスに広げ3日くらい干したら出来上がりです。
「ギンナンを茶封筒に入れて、電子レンジで"チン"すれば簡単に食べられることが広がったおかげで、年々ギンナンを買い求める人が増えていてうれしい」と志げ子さん。 北原さんご夫婦が丹精込めたギンナンは、11月上旬からJA上伊那ファーマーズ「あじ~な」に出荷されます。 ギンナンは、秋を感じさせることができる食材でありながら、健康にもよい効果をもたらす成分が豊富です。臭気に負けない自信のある方はギンナン拾いに挑戦してみませんか。 ■JA上伊那ファーマーズ「あじ~な」
「あじ〜な」に並ぶ色とりどりの花たち
こちらは 2016.10.25 の記事です。農畜産物や店舗・施設の状況は変わることもございますので、あらかじめご了承ください。
さくら
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