果物

リンゴを育てるうえでいちばん大切なことは

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北信濃の中野市上今井でリンゴを栽培する神田尚志(かんだしょうじ)さんは、御年70歳。18歳のときからリンゴをつくりはじめて、もう50年以上の時が経ちました。リンゴの生産量全国第2位の長野県でも、半世紀を超えてリンゴを作り育ててきたという人はそれほどはいません。そうしたリンゴづくりのプロ中のプロといえる神田さんに、リンゴを育てるうえで大切なことはなにかをうかがうと、「観察することだ」という明解な言葉が返ってきました。

最近の人は観察力が足りない
普段から木をしっかりと細部まで見ていれば、「今リンゴがなにを欲しがっているのか」「なにをしてほしいのか」が、見えてくるようになると、いいます。良いリンゴが育った木が、他の木と違う点はなにか、よく観察して覚えておくことが次に良いリンゴを作ることにつながるのです。50年以上リンゴの木々を細部まで見続けてきた神田さんは「最近のリンゴ農家は観察力が足りないように感じるな」と話し、リンゴの木やリンゴ畑をよく観察することの大切さを重ねて訴えました。

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木や畑の観察以外にも、リンゴを育てるうえでとても大切な作業があります。それが冬場の剪定(せんてい)作業です。神田さんは言いました。

「おいしいリンゴをつくる一番の基本は剪定だね。理想的な剪定は、木にまんべんなく陽が当たること。作業用のハシゴがスムーズに入り、作業がしやすい状況であることが一つの目安かな」

自分のやり方を見つけるまでに20年
神田さん自身も、剪定は20年近く迷いながら行ってきました。40歳を迎える頃になってようやく「コレだ!」と思える剪定のやり方を見つけ、以降30年間は一貫して同じ方法をとっています。「剪定のやり方には色々な理論があるが、経験を重ね、よく観察し、自分のやり方を見つけていくしかない」と神田さんは語ります。

ringo-4.jpgこうした究極の剪定技術によって生まれたブランドに「木成りサンふじ(きなりさんふじ)」といわれるものがあります。ギリギリまで収穫を遅らせ、木の上で完熟させたリンゴを、そのように名づけたもので、農家の仲間10人ほどと栽培しているものの、需要に生産が追いつかない状況だそうです。というのも、このリンゴの品質を保つためには優れた剪定技術が必要であり、その剪定技術をマスターできる人が少ないためなのだと、神田さん。

「『ふじ』という品種の登場でリンゴのすばらしさは格段に上がった。きちんと作ればあんなにうまいリンゴはない。『ふじ』はリンゴの中でも別格だが、『木成りサンふじ』はさらにこだわって作っている。ぜひ食べてもらいたいな」

木成りサンふじを食べてもらいたい
その言葉には自信がうかがえました。神田さんの畑でも「木成りサンふじ」が穫れるのは、一部の畑だけです。それも11月末から12月はじめまでの、ごく短い期間の収穫となります。

リンゴをおいしくするのは自然の力だと話す神田さん。「資材や肥料に頼ってもおいしいリンゴはできない。太陽の力、土の力を最大限に生かせるよう剪定を徹底したり、葉摘みの時期にこだわったりすることで、本当においしい自然の味が生み出される」と語ります。

奥さんの向子(ひさこ)さんも「うちのリンゴを食べた人は『普段食べているものと全然違う』と言ってくれるんですよ」と嬉しそう。確かに本当においしいリンゴは一口かじって、「これは本当にリンゴなのか?」とさえ思ってしまうものもあります。読者の方に中にもそうした経験をお持ちの方がきっといらっしゃるはずです。

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リンゴの今をお知らせします
さて、それでは最後に、神田さんのりんご園から、9月第1週現在の、育っているリンゴたちの生育状況の一部をお伝えいたしましょう。収穫の時期を楽しみにご覧下さい。

ringo-tsugaru.jpgつがる:

つがるの収穫はもう終盤。神田さんのお宅では8月27日から収穫がはじまり、9月10日には収穫を終わらせる目標で作業を進めています。約2週間が収穫の期間なのですね。




ringo-shinanodolce.jpgシナノドルチェ:

中生種のシナノドルチェ。神田さんのお宅では9月20日頃から出荷となりそうです。現在は少しずつ赤みを帯びはじめており、現在は葉摘み作業の真っ最中です。




ringo-akibae.jpg秋映(あきばえ):

「千秋(せんしゅう)」と「つがる」を交配した品種で、長野県中野市のリンゴ農家が産みの親のオリジナル品種。シナノスイート、シナノゴールドとともに「りんご3兄弟」として売り出し中です。こちらも9月20日頃からの出荷予想で現在は葉摘み作業が行われています。




ringo-sunfuji.jpgサンふじ:

まだまだ青色の状態です。10月頭頃から葉摘み作業がはじまります。ちなみに今年は春先の霜や長雨、日照不足などの天候が続きましたが、神田さんのリンゴは肥大もよく、ここ数年でも特に良い状態だそうです。これから本格的な秋までなにもなければ最高のリンゴが穫れそうとのことでした。


※今回の記事でご紹介した神田さんらの「木成りサンふじ」にご興味のある方は、JA北信州みゆき南部支所果実共選所[中野市大字上今井 2263ー1 電話0269−38−2025]まで、直接電話でお問いあわせください。

こちらは の記事です。
農畜産物や店舗・施設の状況は変わることもございますので、あらかじめご了承ください。

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