ゴツゴツとした形に荒れた肌。見た目はとうてい食欲をそそるものではないこの果実。ご存知ですか? 正解は「ラ・フランス」。芳醇な香りとなめらかな舌触り、コクのある甘みは「他にたとえるもののない」と評される味わいです。もしかして、これをお読みの方のなかに、「え〜、私の食べたラ・フランスはジャリジャリして全然おいしくなかったよ」という方はいませんか? ふーむ。それはきっと追熟(ついじゅく)をしていないラ・フランスなのです。ラ・フランスの真のおいしさを味わうには、この追熟が、必須なのです。そこで今回は、長野県内のラ・フランス産地の一つJA信州うえだから、出荷の様子をお伝えするとともに、追熟とはなになのかなど、ラ・フランスをおいしく味わうために重要な情報をお届けします!
ラ・フランスの来歴と今
ラ・フランスはその名のとおりフランスが原産国。クロード・ブラシュさんという人が発見したそうです。われわれが今こうしておいしいラ・フランスを食べられるのも、そのクロードさんが1864年に発見してくれたからだといえるでしょう。ある意味、偉人です。日本には明治時代の1904年にわたってきまして、産地化の進んだ長野県は現在、全国第2位の生産量を誇ります。
で「追熟」とはなにであるのか?
このラ・フランスは、リンゴやブドウなどほかの果実と異なり、樹の上ではおいしく熟してくれません。樹から収穫したばかりのラ・フランスをかじってみてもジャリジャリして硬くてうまくもなんともないのです。そのラ・フランスをおいしく変身させるためには「追熟」がなんとしても欠かせません。
追熟とは収穫後、一定期間をおくことで果物の甘さを増したり、やわらかくしたりすることです。追熟は、部屋の中などに置いておけば自然に進んでいくのですが、誤ってはならないのは食べ頃の見極め。ずばりラ・フランスの肩の部分(ヘタの周り)を指で押してみて、柔らかくなっていれば食べ頃です。また、冷蔵庫など温度の低いところに保存しておけば、常温に比べて追熟の進行具合を抑えることもできます。
じっと待ってあげることが必要
このように追熟には特別な技術は必要ありませんが、時間と目の前にあるラ・フランスが食べ頃になるまで我慢する忍耐力が、どうしても必要となります。ラ・フランスが持つ潜在能力の全てが開花するまで、子の成長を見守る親の気持ちでじっと見守ってください。
ラ・フランスが出荷されるまで
そこで、ラ・フランスの出荷のありさまを見てみようと、JA信州うえだの農産物流通センターを訪ねました。管内のラ・フランス主産地は、浦里地区というところ。管内で生産されたラ・フランスは全てこの流通センターに持ち込まれ、首都圏や関西方面などへ出荷されていきます。
信州うえだの場合、今年の収穫は10月5日から始まり16日まで、11日間続きました。今年は雨が少なかったため全般的に小玉傾向だそうですが、そのぶん夏の気温が高かったため、糖度はとても高く仕上がっているそうです。平均糖度が15〜16度、高いものでは17度以上のものもありました。
信州うえだ管内で生産されるラ・フランスの約7割が無袋で栽培されます。上田地区は降水量の少ないところで無袋栽培に向いているからです。そのため見た目はちょっと悪いのですが、太陽の光をたっぷり浴びており、味はとても良いのですよ。
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写真1 気温5度に保たれる保冷庫内部 |
写真2 品質を見極める熟練の目と手 |
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写真3 大きさに応じ丁寧に箱詰めに |
写真4 ベルトコンベアで目的地に出荷 |
収穫されたラ・フランスはまず保冷庫で保存されます(写真1)。気温5度に設定された庫内に10日〜2週間程度じっと保管され、低温でゆるやかに追熟が進むようにしむけます。そして、出荷の適期となると次は選果です。熟練した職員の方が大きさや品質を見極めて、次々とコンベアーに乗せていきます(写真2)。大きさなどで分けられたラ・フランスはそれぞれに箱詰めされ(写真3)、ベルトコンベアーにのって出荷方面ごとに分けられ(写真4)、出発のときを待つのです。
最終的な判断はご自分の指の感覚で
流通センターの方のお話では、お手元に届いてから5日から1週間くらいで食べ頃になるそうですが、それはあくまでも目安であり、最終的にはご自分の指先でラ・フランスの肩を押す食べ頃チェックで確認してください。
ここまでお話したとおり、ラ・フランスの真髄は見た目ではなくて、皮を剥いたその先にあります。見た目はパッとしないほうが、じつは味わい深いというのは、なんといいましょうか人間も同じ。まだ召しあがったことのない方は、ぜひラ・フランスを一度手にとって、官能的な味を堪能してみてください。ご家庭では青いうちに買ってきて、そのまますぐに冷蔵庫にて保管し、ゆっくりと追熟されるとよいでしょう。そして、指先での食べ頃チェックをお忘れなく。
今回ご紹介したJA信州うえだのラ・フランスは、JA信州うえだ農産物流通センター(電話:0268−29−1001)にて宅配での販売も受けつけています。(2,500円/5キログラム)
また、JAタウン全農長野「僕らはおいしい応援団」でもJAながののラ・フランスを販売しています。