品種が豊富で、時期によって味の違いを楽しむことが出来るりんご。一番人気は何と言っても「ふじ」ではないでしょうか。ここにきて少しずつふじの出荷が始まり、あの独特の蜜の甘さが楽しみになってきました。
と、ちょっと待ったー! ふじもおいしいですが、今売り出し中の信州生まれのりんごがあるんです。それは名前のとおり黄金色に輝くりんご「シナノゴールド」。このりんごを、できるだけ長い間、木になったまま熟成させてから収穫することにこだわっている生産者さんがいると聞き、完熟シナノゴールドの魅力を調べに行ってきました。
いつ採るか、それが問題です
訪れたのは果樹園が広がる上伊那郡箕輪町。ここはりんごの名産地のひとつで、11月初頭をむかえてりんご畑にはたくさんのふじが赤く実っています。収穫を待つこれらふじの木の列に混じって黄色いりんごが鈴なりに実った木が並んでいました。
これがシナノゴールドで、「どうだ!赤くないりんごもおいしそうだろ!」とでも言いたそうに輝いています。本当にきれいな黄色で、今すぐにでももぎ取って丸かじりしたい衝動にかられていると、横から「まだ2週間熟成させたいな」という声。え、これからまだ2週間も熟成させるんですか!
声の主は、このりんご畑のオーナー唐澤健治さん。納得のいく味のシナノゴールドを出荷するために、ギリギリまで熟成させることにこだわっているのだそうです。もとよりJA上伊那では、シナノゴールドを完熟させて収穫する方法で営農指導を行っているのですが、唐澤さんはそのなかでも特に収穫が遅く、本当に完熟するのを待ってからでないと収穫しないというのです。
「生産者仲間からは、そろそろいいんじゃないかって言われるんだけどね。まだおいしくなるって思うんだよ」と話す唐澤さん。
甘みと酸味のバランスが魅力のシナノゴールドですが、収穫が早いと酸味が勝ってしまいます。シナノゴールドらしい、バランスの良い味にするには、やはり完熟するまで収穫を待つのがベストだとのこと。
「でも、そのタイミングを見計らうのが一番難しいんだよ。熟しすぎるとダメだから、早く収穫するのが安全策なんだけど、そこを我慢するのさ。どうせならおいしいシナノゴールドを食べてほしいからね」
シナノゴールドの"目利き"になろう
シナノゴールドの収穫のタイミングを見るには、いくつかのポイントがあるといいます。
1つ目は、青みが抜けてきれいな黄色になること。特に色づきが遅いお尻の部分まで黄色が濃くなってから収穫します。2つ目は、お尻の部分の「へそ」がしっかり開いていること。3つ目は、表皮にベタベタとしたワックスが出ていること、だそうです。
シナノゴールドの熟度を見極めるためのこの3つのポイントは、商品として並んでいるなかからおいしいものを選ぶ際のポイントでもあるんです。そのほかにも、黄色の中に赤い細かな点々模様が出ているのも、おいしいりんごのサインだという話も聞きました。
(上記のポイントは「おいしいシナノゴールドの見分け方」であって、すべてのりんごに当てはまるわけではありませんので、ご注意ください)
おいしくて長もち
収穫まであと2週間は熟成させようというシナノゴールドですが、よほど欲しそうな顔をしていたのでしょうか、特別に食べさせていただきました。
ひと口かじると、気持ちいいほどシャキシャキっとした食感で、さわやかな酸味と甘みが口の中に広がります。まだ酸味が強いのですが、糖度計で計ると糖度はなんと16。酸味の奥に甘さを隠し持っているんですね。
あと2週間のうちに酸味がほどよく抜けて、甘みが際立つ本当においしいシナノゴールドに育つのだそうです。
シナノゴールドの魅力は、食味の良さはもちろんですが、日持ちがいいという点を忘れてはいけません。冷蔵庫の冷気が当たらない場所などで上手に保存すれば、なんと年明けまでシャキシャキッとした食感が楽しめるのだとか。
追熟させることでさらに酸味が抜け、甘いシナノゴールドを楽しめるそうで、12月末以降に出回っているりんごの中では断然お勧めとのことです。
JA上伊那には、氷の冷温でりんごを保存しておける氷冷庫があり、年明けまでおいしさを保って出荷することが可能になっています。
「黄色いりんごの人気は日本ではまだまだですが、ぜひ一度食べてみてほしいですね。特に上伊那のシナノゴールドは熟成度合いに自信があるんです。このこだわりを捨てずに生産していく限り、ほかの産地には負けません」とJA上伊那の営農担当者は話します。
唐澤さんの育てたシナノゴールドは、上伊那群箕輪町にある伊那路共選農産物直売所などで購入することができます。