実は北信濃の中野市は、誰もが大好きなぶどうであり、しばしばその実が大きいことから「ぶどうの王様」と呼ばれる巨峰の生産量が、全国の市町村の中で一番多い町です。中野市におけるハウス栽培の巨峰は、例年4月には一部の出荷がはじまり、7月中旬から8月中旬頃にかけて収穫のピークシーズンになります。今回は巨峰のピークシーズンの到来を目前にした予習授業をしておきましょう。
まもなくどっと収穫時期に
7月に出荷されるハウス巨峰は、その年の1月に園地で剪定(枝切)、2月にハウス被覆がおこなわれ、4月になると開花・摘花・枝の誘引、房きり(350gの房を作るために長さを切りそろえる)、摘粒(小さい粒や形の悪い粒を取り除く)などの品質管理が行なわれます。そして5月から6月の夏至にあたる今ごろに色づき、成熟して、7月中旬ごろには収穫時期を迎えるのです。
中野市の巨峰へのこだわり
中野市における巨峰の歴史は、昭和30年頃、竹原・科野地区にこれが導入され、昭和40年にはハウス栽培の試行がはじまりました。JA中野市のぶどう部会は昭和41年に設立され、現在の部会員数525名、うちハウス巨峰は160戸の農家で生産しています。販売取扱量は、800トン(4kg換算で20万ケース)で、主に東京、名古屋、大阪方面に出荷されます。
農家での巨峰の品質管理は、一粒が平均13gで、一房30粒位で350g、糖度18%以上を目標として管理されています。そしてこれは栽培農家のこだわりなのですが、巨峰の食味を重視するために、「種あり」を推奨しています。やはり「種あり」は、コクがあり、自然が凝縮した食味になるからです。
農家から出荷された巨峰は、JA中野市のぶどうセンターにひとまず集められ、非破壊検査センサーによる糖度検査、検品、荷造りが行われて、間違いのないものが首都圏の卸売市場に出荷され、各地の小売店の店頭にならびます。
値段が下がってきたらピークシーズン
ハウス巨峰というと、とかくその希少性から小売価格も高く、一般家庭ではなかなか購入できないセレブの食べ物というイメージがありがちですが、当初の出荷のはじまる4月ごろはともかくとして、本格的な夏を迎える7月中旬頃からは、同産地の出荷もピークとなり、それこそ「旬の味」として、首都圏などの小売店でも価格的にもぐっとこなれてきます。
専門家に聞いた正しい巨峰の食べ方
巨峰は、常温より、冷やしてからめしあがった方がおいしく食べられるといいます。ラップで包んで冷蔵庫の野菜室で保存すれば、1週間以上おいしくいただけます。しかし、冷やしすぎは禁物です。JA中野市のぶどうセンターの担当者の話では「食べる前に2〜3時間冷蔵庫で冷やして、粒は皮を剥(む)かず、皮付きのまま口元まで運び、あとは皮を指でつまむように巨峰の実を押し出していただく」のが、最もおいしい食べ方だといいます。ぜひ一度近いうちに、この食べ方の手順でご賞味ください。
巨峰は12月までおいしく食べられます
7月から8月でハウス栽培の巨峰が終わると、つぎは9月から10月まで露地巨峰に移り、施肥などを微妙に調整しながら巨峰の成熟時期を調整しつつ、秋口から冬の初めにかけての出荷は12月まで続きます。
長野県の巨峰に会ったらよろしく
農林水産省の果樹生産出荷統計(2006年)によれば長野県のぶどうの生産量は年間3万300トンで全国第2位。巨峰だけに限れば、長野県のぶどう栽培面積の74%を占める基幹品種で、生産量は2万2400トンで全国第1位です。長野県の主な巨峰の産地としては中野市、須坂市、長野市、東御市などがあります。