「おらほ」とは、「私たち」もしくは「私たちの地域」という意味の言葉です。今月から毎月1回、信州各地の郷土食を探るシリーズ・"伝える おらほの味"がはじまります。第1回目は暑い夏にぴったりの北信州地域で昔から食べられている「やたら」です。うだるように暑い日にぜひお試しください。
長野県の斑尾山(まだらおさん)の麓、上信越自動車道豊田飯山インターから車で約10分の中野市永江梨久保の松野冨子さん(JA北信州みゆき理事)のお宅にお邪魔して"やたら"の作り方を教えていただきました。名前の由来を松野さんに聞いたところ「ぼたんこしょうやみょうが、丸なす、大根の味噌漬けを"むやみやたらと"細かく刻むことと、ごはんの上に"やたら"をのせて食べると"やたらにうまい"ので、おかわりをしていますからではないか」と話してくださいました。
信州の他の地域では、それ以外にも"やたらと生野菜を何でも入れるから"という説もあるようですが、松野さんが暮らしている中野市永江の西組地区(涌井、親川、梨久保の3集落を呼ぶ)では、"やたら"に使う野菜は昔から決められていて、そこに伝統食の"うまさ"と"こだわり"があるようなのです。
こだわりの野菜は"ぼたんこしょう"
この地域で古くから大切に育てられてきた稀少品種の"ぼたんこしょう"は、平成20年に信州の伝統野菜に認定されました。松野さんは斑尾ぼたんこしょう保存会のメンバーで、今年は作付け面積を拡大し栽培に力を入れています。
ぼたんこしょうは、パプリカに似た形をしていますが、唐辛子の類で、形が牡丹の花に似ていることから「ぼたん」の名が付いたと言われています。斑尾山麓などの高冷地で栽培しないと、辛くならないと言われ、ビタミンやカプサイシノイド、ミネラル成分が豊富で、7月中旬から10月下旬までおいしく食べられます。
うまい"やたら"の作り方
ぼたんこしょう、みょうが、丸なすと大根のみそ漬けを細かく、細かく刻むだけ。 刻んだものは食べる寸前に混ぜるのがポイント。調味料は一切使わず、ぼたんこうしょうの辛味と大根のみそ漬けの塩分が調味料です。出来あがった"やたら"は、温かいごはんにかけて食べます。
「"やたら"は、生野菜のふりかけ。食欲が無くても"やたら"があればごはんが食べられます。夏には欠かせないおかずで、毎食取れたての野菜を使い、食べ切ります」
と松野さんは目を輝かせて話してくれました。お邪魔した時は、気温35度を越える猛暑だったのですが、出来あがった"やたら"をおかずにごはんをいただきましたが、辛味と塩味のバランスがよく、ついおかわりしてしまったほど。
4人前の"やたら"の目安は、ぼたんこしょう(1個)、みょうが(4個)、丸なす(1/3個)、大根のみそ漬け(30g)。お好みで分量の調整をします。
身近な野菜での作り方
ぼたんこしょうがない場合、緑味を出すにはキュウリ。辛味を出すには青唐辛子を使うとよいでしょう。丸なすがなければ長なすで大丈夫。大根のみそ漬けとみょうがはご用意ください。
この夏は「生野菜のふりかけ"やたら"」をごはんにかけて、食欲を増進させましょう。とにかく簡単ですからをお試しくださいませ。
次回「伝える おらほの味」は、諏訪地方の「のた餅」を紹介します。
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「長野県のおいしい食べ方」編集部:
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追加情報:
*なお、きたる8月1日(日)には、「中野市斑尾高原体験交流会施設(まだらおの湯)」で"ぼたんこしょうまつり"が行われます。"ぼたんこしょう"・"ぼたんこしょうまつり"に関する問い合わせは、斑尾ぼたんこしょう保存会(電話0269−38−3327)まで。