伝える おらほの味「おらほ」とは、「私たち」もしくは「私たちの地域」という意味の言葉です。信州各地の郷土食を探るシリーズ・"伝える おらほの味"。第10回目となる今回は、香りのよい"朴の葉"を使った木曽地方を代表する行事食「ほう葉巻き」です。木曽地方では、朴の葉の花が香り、葉が青々と茂る5月下旬から6月にかけて、月遅れの端午の節句のお祝い行事食として、各家庭で「ほう葉巻き」が作られます。※文末には冊子プレゼントのお知らせがあります!
今回お邪魔したのは木曽郡上松町。寝覚の床や樹齢300年を超える木曽ヒノキ天然林があり、2001年に環境省のかおり風景100選、2006年に林野庁の森林セラピー基地に指定された赤沢自然休養美林がある地。その上松町小川の風情のある"民宿さわぐち"のお座敷を借りて、JA木曽女性部役員でもある3人の"ほう葉巻き"作り名人、寺田光子さん、古幡美津子さん、古根妙子さんに、作り方を教えていただきました。
左から 古根妙子さん 寺田光子さん 古幡美津子さん
朴(ほお)の木と朴の花
なぜ"ほう葉巻き"というのか
普通漢字で書くとなると「朴葉」で、読みは本来"ほおば"ですが、木曽では古くから"ほうば"と称することが多いようです。"ほう葉"は、大きな葉で、葉には腐食を防ぐ効果があり、色々な物を包むことから、包む葉として木曽では、"包(ほう)葉"と称するようになったのではないかと思われます。由来は、平安末期、信濃源氏の一族だった木曾義仲の時代に、戦いに出陣するに際して朴(ほお)の葉を利用し、これに味噌や米を包んだことと伝えられています。余談ですが"朴の葉"が、大きな葉と香りが特徴であることは、地域の人以外にもよく知られています。しかしその花を知っている人は少ないかもしれません。5月から6月に大きな葉の中心からチューリップ状の大きな白い花が咲き、その香りも華やかなものです。
"ほう葉巻き"とはどんな食べ物か
"ほう葉巻き"は、小豆餡を米の粉(上新粉)の餅の皮に入れ、香りのよい朴の葉で包み、い草でゆわえ、蒸したもの。この季節の朴の葉は若芽の季節がおわって葉が少し固くなってきていて、蒸しても餅に張り付くこともないのです。葉にも独特の香りがあり、食欲をそそります。昔から月遅れの端午の節句を祝う木曽地方独特のお菓子であり行事食でもありました。
ほう葉巻きの作り方
30個分の材料の目安
・米の粉(上新粉)1kg ・小豆餡750g ・熱湯750〜800ml ・朴の葉30枚 ・い草30本
●朴の葉は1枚ずつにせず、小枝のままにしておきます。小豆餡は、煮て冷まし25gずつの楕円形に丸めます。「餡の形がそのまま餅の形になるんだよ」と寺田さん。
小豆餡が出来たところで、米の粉をこね鉢に入れ、熱湯を注ぎ箸で手早くかき混ぜ、熱いうちに両手でよくこねます。古根さんが「このこね方で、舌触りが違うんだよ。なめらかな舌触りにしたければ手早くしっかりこねないとダメ」と教えてくれました。
練りあがった生地を45gずつに分け、丸めて楕円形に伸ばし、小豆餡を包みます。包み方は、生地のまん中に餡をのせ、生地を回しながら餡を包みます。
できた餅を朴の葉で包む前に、古幡さんが「朴の葉をすこし湿らしておくと餅が葉に付きにくくなるんだよ」といいながら朴の葉をぬれふきんでふいています。
朴の葉で包んだあと、い草でしばり、すべての餅が包み終わったら蒸し器で20分ほど蒸して出来あがりです。
「味の決め手は、餡と生地の分量のバランス。必ず餡と生地は正確に計量しないと味にバラつきができるよ」と寺田さんが、おいしさの秘密を教えてくれました。
"ほう葉巻き"は2度楽しめる
蒸したての"ほう葉巻き"は、少し冷ましてからいただきました。朴の葉の香りが漂う中、まず、朴の葉から餅を取り出して一口。皮と餡のバランスが絶妙で、おいしいです。しかし、名人3人は「蒸したてはいらん、翌日のシコシコしたほう葉巻きが格別」というお言葉。そこで、お土産にいただいて帰り、翌日"ほう葉巻き"いただき、2度目を楽しみ、言葉の意味を確信しました。
今回紹介した"ほう葉巻き"は、木曽郡上松町小川「森林(もり)の茶屋 よろまいか」で購入できます。 お問い合わせは、電話 0264-52-5455 まで。
また、今回座敷をお借りした木曽郡上松町小川の「民宿さわぐち」は、木曽の名水が育てたどぶろくを楽しめる宿(写真)。お問い合わせは、電話 0264-52-3422 。本場の"ほう葉巻き"を味わう目的で、自然豊かな木曽路に足を運んでみませんか。
今回紹介しました"ほう葉巻き"の詳しい作り方は、「暮らしを楽しむエコガイドに掲載してあります。
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JA長野中央会 総務企画部 企画広報課
「長野県のおいしい食べ方」編集部:
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次回も「伝える おらほの味」をおたのしみに!(内容は未定)