長野県は、漬物出荷額が和歌山県に次いで第2位の漬物王国。冬の寒さが厳しい長野の地域ごとに、食料の保存のために古くから漬物の文化が根づいています。
長野県の漬物といえば、野沢菜漬けを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。
雄大な北アルプスをのぞむ白馬村をはじめとした大町市・池田町・松川村・小谷(おたり)村を総称する大北地域にも、じつは名物の漬物が存在します。
雄大な北アルプスで人気の大北エリア
福神漬けのようなコリコリ食感。地元産の野菜を使った漬物
小谷漬(おたりづけ)は、長野県北部の小谷村で生まれた伝統的な漬物です。山間部の厳しい自然環境の中で、保存食として作られてきました。
地元では食事のつけ合わせとして親しまれているので、白馬地域を訪れた方は飲食店で福神漬けのような、この小谷漬を食べたことがあるかもしれません。
加工所に持ち込まれたきゅうり、だいこん、にんじん、なす、みょうがなどの野菜は約3か月間、塩漬けされます。その後、材料を大きく切り分けて選別を行い、細かくスライスしてひと晩、水の中に入れて塩抜きします。次にプレス機で水分を絞り、醤油ベースの秘伝のタレと合わせ、さらにひと晩寝かせてできあがり。
塩漬けされた野菜ならではのカリカリ・コリコリとした小気味良い食感が楽しめます。この食感と、ほどよい塩味が食欲をそそり、一度食べたらクセになる漬物です。
小谷漬の加工の様子。すべて手作業で作っています
山間部ならではの漬物
小谷村では山間部特有の厳しい冬を乗り越えるため、古くから漬物や乾物などの保存食文化が発展しました。
村の90%を森林が占める小谷村は、昔から山菜の宝庫。独特の香りと苦みのある山ウドや柔らかいこごみ、タラの芽など、多彩な山の幸が春の味覚を楽しませてくれます。これらの豊富に採れる山菜を長く楽しむため、さまざまな漬物が作られてきました。
家庭で作る人もいるようですが、1973年にJA大北の山菜加工場が開設され、地元で採れる山菜や野菜の個性的な風味を生かしながら、長期にわたって食べられる特産品が開発されてきました。
小谷村は日本でも有数の湿原がある自然豊かな地域
小谷漬をおいしくいただくレシピ
農家のみなさんが考えた小谷漬を使ったレシピをご紹介します。
小谷漬のおこわ
小谷漬100gに対し、米3合(450g)の割合で炊き込んでください。好みに応じて、もち米を混ぜると、よりおいしくなります。
直売所でも手作り小谷漬おこわを作っています
大北地域の直売所「ええっこの里」では、このレシピで作った小谷漬けおこわを販売しています。蒸したもち米を小谷漬と混ぜ合わせています。
もちもちのおこわにコリコリとした小谷漬の歯応えがクセになる味です。ウィンタースポーツやアウトドアで白馬やその周辺に訪れる際は、ぜひお試しください。
蒸したもち米に小谷漬を混ぜ合わせます
小谷村の山菜を使った漬物も
野菜を使って作られる小谷漬のほかに、春の採れ立ての山菜を塩漬けにして作られる「山うど木の葉漬」などもあります。
地元の山菜採り名人たちが山に入って採ったものを、その日のうちに加工。過去にご紹介した記事がありますので、詳しくはそちらをご覧ください。
<過去の記事>
山菜通がゆく!北アルプスの麓に伝わるウドの漬物づくり
採れ立ての山うど
一度食べたらクセになる小谷漬
白馬観光で一度食べてからクセになってしまったと毎年リピートされる方もいる小谷漬。小谷村の野菜や山菜をふんだんに使った、山深い地域ならではの漬物を、ぜひお試しください。