諏訪地方の晩秋の風物詩「大根すだれ」
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信州には四季を通じてさまざまな漬物があります。それぞれの地方に豊富な素材があり、気候・風土で培われた漬物は、まさに味の文化財。そこで今回は、これから味わえる秋冬野菜を使った漬物をご紹介いたしましょう。大地の恵みと、伝統と、先人の知恵と、手仕事とが織り成す漬物を味わうために、冬の信州を訪ねてみるのもいいかもしれません。
漬物は実は栄養学的にもすぐれもの。生野菜よりかさが減るためたくさん食べられることや、熱を加えていないので、ビタミン類の損失もないのです。また、野沢菜のビタミンAとして働くカロテンなどのように、漬けることでかえって含有率が高くなるものもあります。気になる塩分も、脱水作用によって野菜から出る水に多く溶け出すため、サラダにマヨネーズやドレッシングなどをかけることを考えれば、むしろ低塩で低エネルギーと言えるでしょう。また、漬物は現代人に不足しがちなミネラルや食物繊維を多く含んでいます。ということで、さっそく信州自慢の漬け物をごらんあれ。
代表格の野沢菜漬け
信州の漬物の代表格は野沢菜漬。本場のJA北信州みゆき野沢温泉村支所によると、今年のお菜の出来は「台風や長雨、日照不足の影響で丈が伸びない生育不良」とのこと。それでも、スキー場や温泉を訪れてくれるみなさんにおいしく召しあがっていただくため、11月上旬から漬け込み作業をして、本漬は完了しました。なかなか本格的な雪が降らずに、やきもきする毎日ですが、暖かい冬は野沢菜漬にも大敵。スミと呼ばれる酸味が早く出てしまうからです。それでも、信州の各地で今年漬けた野沢菜が食卓にのぼり始めましたが、味は最高。冬の信州で、コタツにあたりながらお茶といっしょにいただく野沢菜漬けはヤミツキになりますよ。それともうひとつ、野沢菜漬の天ぷらをご存知ですか? お酒のつまみにかなりいけます。早速、お試しあれ。
上野大根のたくあん漬
諏訪市豊田上野区の特産品である上野大根「諏訪湖姫」を漬込んだたくあん漬けをご存知でしょうか。上野大根加工組合(宮下清美組合長)は、大根の甘味を引き出すために、日当たりと風通しのよいビニールハウスで11月の始めから天日干しを行いました。2本ずつ交互に並べて井桁状に組み上げる、「大根すだれ」の光景は紅葉の山々に映える晩秋の風物誌です(冒頭の写真)。
1週間で水分量を約6割にまで減らした後、浴槽ほどもある大型の桶へ一本づつ丁寧に大根を並べながら、11月中旬まで漬け込み作業。ぬかや塩のほか香りがでるナスの葉や、味にまろやかさを出す柿の皮を一段ごと混ぜる工夫も凝らして、ひと冬じっくり漬け込みます。本年の大根の作柄は、相次いだ台風の影響を受けて、収穫量も大幅に減りました。質のよい上級品は、過去にないような高値がついています。
残念ながら今季の同組合加工のたくあん漬け販売は、予約数量に達したため、すでに最終受付を締め切っているとのこと。諏訪地方にお出かけの際は、上野大根のたくあん漬を召しあがってみてください。
木曽地方のすんき漬け
木曽といえば「すんき漬け」。語源は、京都の酸茎(すぐき)、塩をまったく使わず、乳酸発酵したすんき漬けは、ほどよい甘味と酸味が魅力です。蕪は地域によって王滝蕪、開田蕪、黒瀬蕪など種類があります。JA木曽によると、今年の蕪は台風などの影響であまりよくないとのことですが、11月に漬け込みが終わり、もう食べられます。すんき漬けは、そのままでも美味しいし、かつお節をかけ、醤油・マヨネーズを加えるとさらに美味しく食べられます。
春先、すんき漬けを干し、味噌汁に入れた味は、「体内の毒気が抜けていくほど」のおいしさだといいます。塩を使わず食物繊維や乳酸菌が豊富な、ヘルシーな漬物です。
まだまだあります信州の漬物
■JAあづみ 私たちが心を込めて作った味をどうぞ
JAあづみ女性部の漬物漬物センターでは、安曇野の新鮮なゴボウ・キュウリ・大根・ナス・人参とシソの実・コショウなど香り豊かな食材をしょうゆ・みりん・黒砂糖で味つけし、安心してお召しあがりいただける無添加の福神漬として平成3年に長野県園芸特産振興展で県知事賞を受賞したあづみ野漬けをはじめ、ナスの佃煮カツオ節風味の安曇野なす子ちゃん、野沢菜油炒めの野沢菜ななちゃんを販売しています。
■西軽井沢物産株式会社
ふれあいモールにはいっている「四季の味蔵・西軽井沢物産」でも浅間山麓の水で洗いあげた秘伝の野沢菜やながいものわさび漬けが注文できます。
手軽に漬け物を楽しみましょう