暦の上でも小雪が過ぎ、長野県北部の一部地域は大雪に昨年よりかなり早い雪が降りました。今回ご紹介する「野沢菜(写真)」の発祥地、長野県下高井郡野沢温泉村にも先日は積雪53cmと、11月としては、久々記録的な降雪量を記録しました。里に雪が降ると信州の家々は漬物の季節です。
わが国の三大菜と言えば、京都の京菜(水菜)、広島の広島菜そして、ご紹介する長野県の野沢菜です。これから寒さが増す季節は、信州の風物詩として各戸ごと野沢菜を漬け込む様子が見られます。各家庭ごとに味の違うオリジナル野沢菜ができあがります。今は、お店で買い求めることも多いと思いますが、このいかにも信州の冬を感じさせる風景は、いつまでも残ってほしいものです。
野沢菜のルーツに迫る
歴史をひもとくと、野沢菜の栽培が野沢温泉村ではじまったのは約250年前の宝暦年間といわれています。今も残る同村の健命寺のかつての住職・晃天園瑞和尚が京都遊学の折、天王寺カブ系統の種子を持ち帰って育てたのが起源とされています。
ところが近年、信州大学農学部教授・大井美知男先生のDNA鑑定によって、野沢菜は天王寺カブの系統ではないとのことがあきらかにされましたが、インターネットの百科事典ウィキペディアの「野沢菜」の項目には「天王寺蕪の種が野沢菜を生む要因を有し、そこに長野の気候と食習慣が重なることで、長い栽培歴の中で野沢菜が誕生したと考えるべき」と学問的に真実に迫ったことが書かれています。
雪が積もる前に収穫
かくして信州において品種改良が進んだことで、野沢菜は収量性に優れ、葉柄が長く、葉質が軟らかいことや土壌条件に対する適応性も高いことから、越冬用の漬物として栽培が普及し、浅漬け加工にも適していたために、今日のように全国的な漬け菜となりました。
長野での野沢菜栽培は、収穫する前に何度か霜などの寒さにあてることにより次第に「あく」が抜け、「のり」が出てきて旨さが増すと言われています。「のり」とは、タンパク質が濃厚になった状態で、野沢菜漬の食味をグット引き立ててくれるものです。ただし、わずかな積雪でも茎が折れたりするため、栽培農家は雪には気をつけます。
自ら進化する漬物
漬物の漬けはじめの野沢菜は、青みのある浅漬けですが、越年してしばらく経つと、全体がべっ甲色に変色して、また味わいが変わります。それよりも更において置くと、今度は若干の酸味を帯びてきますが、そうなったときに、それを油で炒めて食べるのが好みの方もいます。
いよいよ本格化する野沢菜漬、どうぞお召しあがりのほどを。
過去記事:初冬の信州野沢温泉へ野沢菜トリップ
冷たい浅間山麓の水で洗いあげ、秘伝のたれに昔ながらの手法で漬け込んだ懐かしい味。「味蔵」の野沢菜漬(全農長野 僕らはおいしい応援団 ショッピングモール)