ではいただきます
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信州の冬の定番といえば「野沢菜漬け」。加工技術の発達と全国各地での周年栽培により、いまでこそ1年中日本全国の食卓にのぼるようになりましたが、つらつら思うに「こたつとお茶と野沢菜漬け」の組み合わせほど、信州の冬の光景にはまっているものはないのではないでしょうか。しかし、こうして全国で栽培・販売されるようになると、この野沢菜のふるさとが信州・長野県だと知らない御仁もいるやもしれません。そこで今回は野沢菜のルーツをたどる旅、ついでに(ほんとうについでなんですってば!)野沢温泉にも入ってきてしまいました。驚きの野沢菜の育ち方や、ためになる健康効果などもあわせてお伝えします。
野沢菜発祥の地の石碑
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西からもたらされた不思議
野沢菜はかぶ菜に分類されますので、茎の先には蕪がついています。そのルーツは関西地方で栽培されていた「天王寺蕪」にあると言われます。野沢温泉村内にある 健命寺の口伝では、宝暦年間(1751〜1763)に当時の健命寺[けんめいじ]の住職が京都に遊学した際、種を持ち帰ったのが栽培のはじまりとされます。関西地方と大きく気候風土の異なる野沢温泉では、あら不思議、蕪は小さく葉は大きくなり、本来の天王寺蕪とはまるで違った性質が表れたらしいのです。で、これが現在の野沢菜のもとになったというわけ。
健命寺の野沢菜のほ場
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いまでもその健命寺では、寺の圃場(ほじょう)で原種の野沢菜を育て、種を採り続けています。この貴重な種は採種後、一般に販売もされており、小口なら、寺で買える(1デシリットル入り1袋800円)ほか郵便振替による通信販売でも購入できます。原種は草勢が強く、形質も安定しており、村内外で高く評価されているのです。寺の前には「野沢菜発祥の地」と書かれた石碑がたち、原種を育てる畑の前には「野沢菜原種ほ」の看板が立っていました。
寺種
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野沢温泉 曹洞宗薬王山 健命寺のウェッブサイト
野沢菜の育てられ方
健命寺ではまず秋に採種用の種をまきます。種はそのまま雪の下で厳しい冬を越え、春になるのを待って芽を出します。5月の上旬ころには黄色い菜の花が咲き乱れ、花が散った後、梅雨の合間に種を集めます。8月下旬には、野沢菜漬け用の菜っ葉を育てるために種をまきます。その後、何度か間引きをしながら1メートルくらいまで育てます。
ちなみに最初に間引いたものを「麻釜(おがま)」という温泉の源泉で湯がいたものが、地元では重宝され「鯛の刺身よりうまい」そうです。麻釜では普段から、地元の人が野沢菜や野菜などを洗っています。
収穫間近な野沢菜の畑
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本格的な野沢菜の収穫は11月上旬ころにはじまります。なかには霜にあてて旨みをましてから収穫しようと、開始時期を少し遅らせる人もいるようです。穫った野沢菜はすぐ漬け込まれ、それぞれの家の味付けがなされます。昔ながらの塩だけの家や、唐辛子、しょう油、調味料を入れるなど、人生さまざま、味もさまざま。そうやって漬け込まれると、最初は青々としていた野沢菜も、時間とともにべっこう色の輝きを帯びていくのです。イェーイ、うまそうじゃないですか。
のざわな蕪四季会社ってご存知?
野沢温泉にはその名も「のざわな蕪四季会社(かぶしきがいしゃ)」というものがあります。「蕪主(かぶぬし)」になると、野沢菜の収穫体験に参加できるほか、年2回野沢菜が送られてきたり、蕪主配とう(年によって中身は違うそうです)が受けられるなど様々な特典があります。今年の蕪主募集は終わってしまっていますが、来年度の募集については詳しい説明を野沢温泉観光協会(電)0269−85−3155で受けられます。
突然ですがここで野沢菜情報
一般にスーパーなどで見かける野沢菜漬けのほとんどは浅漬けです。漬け込んで間もないもので、歯ざわりがしゃきしゃきとしていて色も青々としています。一方、漬け込んでから時間が経ち、べっこう色を帯びてきたものを本漬けといいます。味に深みが出て口当たりもまろやかになります。春先くらいになると、発酵が進み酸味が強くなってきます。この頃になったら、そのまま食べるより炒めたり煮たりするなど調理して食べた方がおいしくいただけます。
野沢菜は一般に根に近いところ付近が一番おいしいといわれています。しかし、葉っぱの方が好きと言う方もいますし、このあたりは個人の好みが分かれるところですね。
また、野沢菜は味に加えて健康効果も高く、特にビタミンCが豊富で、過去にはガン予防に最も優れた漬け物として新聞に掲載されたり、お茶と野沢菜の組み合わせが高い抗酸化力を発揮するという内容がテレビで放送されたりしました。
とっておきの野沢菜漬けの食べ方ですか? こたつでお茶と一緒に以外で? うーん、定番のおやきの具もいいですよね。またスパゲティー、チャーハンなどの具としても良くあいます。優れた健康効果を持つこの漬け物とお茶とこたつで、この冬を元気に乗り切りましょう!