長野でも「ふじ」の収穫・出荷が始まり、いよいよりんごシーズンのクライマックス!
旬のりんごはそのまま食べても抜群においしいですが、「ほかにおいしい食べ方ないかな?」と考えるのが人の常。そしてその思いを満たしてくれる「りんご飴」を見つけてしまいました!
旬のりんごで作ったりんご飴を提供する農家直営のカフェが長野県諏訪市にあると聞き、自作するほどりんご飴が好きな筆者が取材に向かいました!
りんご飴といえば、お祭りの屋台?
さて、みなさん。りんご飴といえば、どんなイメージを思い浮かべますか?
きっと多くの方は「お祭りで売ってる赤くて小さなりんご飴」を想像するのではないでしょうか。
ChatGDPが作ってくれた画像。こんなイメージをお持ちでしょう
屋台に並んだ真っ赤なビードロのような飴。きれいでロマンティックで、つい買ってしまいますよね。
でも、りんごがぼけてて、なんかおいしくない…
長野では、水分や甘みが抜けて口当たりがモサモサしたりんごを「ぼける」と表現します。
筆者もノリで買って、持て余してしまったことがあります。そんな苦い過去がある方にお伝えしたい!
「りんご飴って、めちゃくちゃおいしい!」
「農家さんが作るりんご飴、最高!」
フレーバーさまざま!シン・りんご飴
ぼけたりんご飴のイメージを一新してくれるのは、長野県諏訪市にあるりんご農家「笠原果樹園」直営のカフェ「S.TREE(エス・ツリー)」。 諏訪湖のほど近くに立地しています。
店舗外観。左手にりんご畑が広がっています
2024年9月にテイクアウト専門カフェをオープン。ドライフラワーが飾られたナチュラルな店内で、りんご飴を中心にドリンクなどを販売しています。
ドライフラワーが季節にぴったりの雰囲気を醸し出す店内
店主は笠原沙織里さん。およそ100年続くりんご農家の4代目に嫁ぎ、念願のカフェをオープンしました。りんごの収穫の始まりと終了に合わせた9〜12月のみカフェを開店し、そのほかはキッチンカーでの販売もしています。

沙織里さんはなぜ、りんご飴を販売しようと思ったのでしょうか?
「大人になってから改めてりんご飴を食べてみたんです。
そのりんご飴はよくお祭りの屋台で売っているそれではなく、品質の良いりんご使っていました。それを食べて、『りんごの味が飴に負けてない!こんなにおいしいんだ』と思って。
りんご農家として『りんご飴で本物のりんごを食べてほしい!』と強く思ったことがきっかけです」
りんご飴に使うのは、もちろん自園でとれたりんご。園主である夫の大吾さんが丹精込めたりんごです。
「S.TREE(エス・ツリー)」という店名には「スイーツがなる木」という意味が込められているそうです。
「農園のりんごを使用していますので、『(りんご飴を)木から作っている』という思いから名づけました。
沙織里のSではないんですよ(笑)」
笠原果樹園の畑。奥にちらっと店舗が見えます
真っ赤なりんご飴は、着色料を使用していることがほとんど。しかし、沙織里さんは着色料を使いません。
「色をつけるか迷ったのですが、素材の色を出したいのと、お子さんにも安心して食べてもらえるように、着色料は使わないことに決めました」
りんごそのものの色が美しいシナノホッペのりんご飴
沙織里さんの作るりんご飴の特徴は、パリパリの飴の食感とシャキシャキジューシーなりんごのハーモニー。
「パリッとした飴になる砂糖選びもこだわりのひとつです」と沙織里さん。
笠原果樹園ホームページより
カウンターに並ぶりんご飴は、見たことのない不思議な色。なんとりんご飴にフレーバーがあるのです!「フレーバーは全部で8種類用意し、1日4種ずつ日替わりでお出ししています」とのこと。
ラインナップは次のとおり。
・プレーン・ココナッツ・ジャスミン・抹茶・ほうじ茶・シナモン・紅茶・激すっぱレモン(裏メニュー!)
「りんご飴に味がつくの? それって合うの?」と素朴な疑問を抱きますが、合うんですよ、これが。
さらに農園では複数のりんご品種を栽培しているため、旬ごとに使用する品種が変わっていきます。
りんごの品種は次のとおり。
・シナノリップ・シナノドルチェ・トキ・シナノプッチ・すわっこ・紅玉・秋映・シナノスイート・シナノゴールド・ぐんま名月・シナノホッペ・サンふじ
「飴のフレーバー×りんごの品種」の組み合わせは無限大! 来るたびにちがう味わいが楽しめるのは、りんごの農家直営ならではですね!
How to eat りんご飴?
さて、気になる食べ方。この丸々としたりんご飴をどうやっていただきましょう? まるかじり…といきたいところですが、カットするのがおすすめ。店内ではカットして提供もしてくれます。

切り方にも沙織里さんなりのポイントが。
「お客さんに感動してもらえるように、かわいくカットして盛りつけるように工夫しています。見た目がかわいいとテンションも上がりますよね!」
カットしていただいたりんご飴がこちら。確かに、見ただけでキュンとしてしまいます!
プレーン×シナノホッペで、りんごそのものの深い赤が美しい!
切り方にはコツがあり、下の一連の写真のように切ると果肉に均一に飴がのり、パリパリの食感とジューシーなりんごが同時に味わえます。
持ち帰り可能なので、自宅でカットする際には、こちらの切り方がおすすめ!
では、りんご飴の切り方をコマ送りでお届けします(ちなみに写真のりんご飴は沙織里さん最推しの「ジャスミン×シナノゴールド」です)。







盛りつけて完成!
沙織里さん一推しフレーバーは「お花のような香りが広がるジャスミン」。
そしておすすめのりんごは、酸味をしっかり感じられる「シナノゴールド」。「酸味があったほうがおいしい、酸っぱ好きはハマります」(筆者調べによるとシナノゴールドは生産者が好む傾向があります)。
シナノゴールド(笠原果樹園ホームページより)
こちらは筆者が自宅でいただいた「ココナッツ×シナノゴールド」。不思議な組み合わせですが、まったく違和感なく、マッチしておいしい!

土づくりからこだわった樹上完熟りんご
さまざまなフレーバーが楽しいりんご飴ですが、やっぱり主役はりんご。

笠原果樹農園4代目で夫の大吾さんが土づくりからこだわり、畑を歩けば土のフカフカ感が足元から伝わります。

大吾さんが丹精込めた樹上完熟りんごにもファンが多く、直売所には平日の開店直後からお客さんが途切れませんでした。

りんご飴が直売所を訪れるきっかけに
前職は歯科衛生士だった沙織里さん。それまでりんごを好んで食べることがなかったそうですが、りんご農家に嫁ぎ、そのおいしさ、品種の多さ、そして味わいのちがいに驚いたといいます。「だんだんと味わいのちがいがわかるようになってきました」と笑います。

農園併設の直売所でカフェを始めた理由は「直売所は若い人には馴染みが薄い場所であることを変えたくて。今までとちがうやり方で農家を盛り上げたいなと思ったんです。カフェ経営は未経験でしたが、夫をはじめ義両親も応援して見守ってくれました」
直売所兼カフェを訪れる客層は広がり、りんご飴を買っていく年配の方が増えたそうです。
「今までりんごになじみのなかった人にも『こんなに品種があるんだ』と知ってほしいし、若い人たちにもりんご飴をきっかけに、りんごのおいしさを知ってもらえたら」

最後に、沙織里さんからお客さんへのメッセージです。
「取れたてのりんごで作るりんご飴の鮮度と味は、ほかには負けません。一度でいいからこのりんご飴を食べてほしいです! 飴に負けない、りんごそのものを味わっていただけるはずです」
