日差しはまだそれほど強くなく、吹く風は爽やかで、どこまでも気持ち良い季節です。こんな日には新緑の森に出かけてみたくなります。そこで長野県北部、標高1000メートルの山岳リゾート、飯山市の斑尾高原にある「まだらお高原 山の家」を訪れました。
この施設は情報提供などのお手伝いをしてくれる他、傘や長靴を貸して欲しいと言った要望にも気軽に対応してくれるところ。そこで興味深いパンフレットが並ぶ中に「森林セラピー」の見慣れない文字を見つけました。
森林セラピー?
心身に癒し効果が認められた森
なんとキラキラした、そして静かな響きのイメージではありませんか。聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥。「あのう、この森林セラピーとはなんですか?」係りの人にたずねてみました。
「森林セラピー」は、森林の持つ生命力と癒しのパワーを、わたしたちの健康増進に役立てようというもので、さまざまな生理実験により、ストレスホルモンの減少や免疫力アップなどの心身の癒し効果が科学的に実証された場所を、林野庁や国土緑化推進機構、日本ウェルネス協会などが「森林セラピー基地」「森林セラピーロード」と名づけ、斑尾を含むこの飯山市の森も、『「心のふるさと」信州いいやま〜母の森・神の森〜』として、平成18年に第1期「森林セラピー基地」の認定を受けたのだそうです。
五感を使って森を感じる
森林セラピーのポイントは、五感を使って森を感じることだそうです。木や鳥を見たり、小川のせせらぎや風の音を聴いて、木々の香りを嗅ぎ、水に触り木に触れたり、また木の実など味わうことも大切だとか。自然の中に身をゆだねて自然とひとつになることによって、心地が良いと感じられることが大切で、楽しみ方としては、人それぞれ。運動不足を感じている人はセラピー基地やロードを歩いてもいいし、反対に何もしないで横になっていてもいいのです(!)。ヨガや座禅をしてもいいし、時間があればそれらに加えて近くでカヌーやソバ打ちなどの自然体験もあるのです。
案内人が希望を聞いてその人に合った心身の健康づくりのプログラムを提供してくれるということで、森のことをよく知っている案内人と一緒に森の中を散策し、出来れば2泊くらいして森の中でゆっくりとしていけば、その効果を実感できると思うのでお勧めするということでした。
ぶな林の中に一人で
せっかく来たのだから、ターミナルハウス近くの癒し効果があるとされた場所を訪れたくなりました。遊歩道のコースはよく整備されていてとても歩きやすく、ふと顔をあげたその先は一面のブナ林。天気は曇りがちだったけれど、これが晴天であったなら、青空をバックに新緑の鮮やかさが際立って、なんとすがすしい色彩となったことかと思いました。
ゆっくり目を閉じて、深呼吸。やがて耳が研ぎ澄まされてくると、あちこちで鳥が鳴いていることに気づきました。「ホウ ホケキョウ」いったい何羽いるのか。時々、木をカタカタと突く音。もしかして「キツツキ」? 鳥の声、風の音、また枯れ葉を踏んだ時のカサカサとした音の心地よさ。しばらくして目を開けると時間の流れが遅くなって、森の木々と空気が柔らかく自分を包んでくれているのを感じた。見上げる目の前にデンをとまっすぐに伸びるブナの姿は、なんとも気高く美しいものでありました。
何回も訪れたくなるところ
突然強く吹きつけた風に我に返ると、すでにかなりの時間が経っていることに気づいた。なんと居心地のいい森だろう。今回訪れた場所は、長野県と新潟県の県境のちかくで、このあたりには20本ものコースが整備されている。もう少し北東に広がる大自然の宝庫、鍋倉山に存在する樹齢300〜400年のブナの天然林、通称「森太郎」「森姫」に会いに行きたいと思いながら、後ろ髪を引かれる思いで、その場を離れることになった。もう少し長期滞在を考える人のために、下記の関連サイトにある森林セラピー基地いいやまには「1泊2日、2泊3日のお試し体験プラン」から「長期宿泊滞在型のスローライフと農業体験ができるプラン」まであります。
信州はいずこも癒しの大地
ちなみに今年までに「森林セラピー基地」や「森林セラピーロード」と認定されたところが長野県内では8個所あります。飯山市斑尾の森の他の「森林セラピー基地」は、上松町の「信州木曽上松・赤沢自然休養林」、信濃町の「信州信濃町癒しの森」、小谷村の「北アルプスに抱かれるくつろぎの森」、木島平村の「カヤの平高原」、佐久市の「癒しの森」、山ノ内町の「志賀高原 うるわしの森」で、「森林セラピーロード」として認定されたのは南箕輪村の「信州大柴高原みんなの森」です。まさに信州はどこに行っても癒しの地、癒しの宝庫なのです。
関連サイト:
森林セラピーポータル[FOREST THERAPY PORTAL] 森林セラピーについてもっと詳しく知りたい人のためのサイト
まだらお高原 山の家
森林セラピー基地いいやま:ブナの森からはじまる温森(ぬくもり)の旅