大樹の農事録
[大樹の農事録]

準備万端で稲刈り&秋の味覚にワクワク!

20211013no01皆さんこんにちは!
一年間で最大のイベント「稲刈り」のシーズンがやってまいりました!
今年も日照不足の影響が心配でしたが、病気もなくいい稲が育ちました。

今年の稲は、、、

例年だと9月頭から稲刈りがスタートするのですが、今年は日照不足の影響で生育が遅れ、昨年より一週間遅れのスタートとなりました。

20211013no02重く実った稲穂は秋の風を受け、金色の姿をなびかせます。
綺麗な稲が育つと収穫前にワクワクしてきます。

20211013no03機械整備は万全! いざ出陣!!

20211013no04今年はコンバインにかかる抵抗もしっかりあって刈りごたえがありました。反収に期待です。
いつもは終盤の方へ行くと籾の水分が減ってきて、刈り遅れにならないかと焦るのですが、今年はコメの面積を減らしたことと、登熟(出穂後に成熟すること)が緩やかに進んだことが重なり、焦らず作業を進めることができました。

20211013no05乾燥して籾を玄米にする調整ラインは一度もトラブることなく稼働してくれました。
昨年は収量が少なかったのですが、今年はコシヒカリで10a当たり10.3俵とれたので上々の出来栄えだったと言えるでしょう。

20211013no06異物や着色粒を選別する色彩選別機から弾かれた米がこちら。透き通っていない緑のお米が沢山ありますよね。
緑色の未熟米のことを「青未熟」と呼びます。青は登熟直前の透き通った「生青(イキアオ)」と、割ると白く崩れる「死青(シニアオ)」に分かれます。
生青は刈り始めの米に多く見られ、稲の生育が進むと正常な玄米になります。しかし死青はどれだけ生育が進んでも茶色の玄米になることはありません。精米すると砕けてしまうし、食べても美味しくないので取り除いた方がいいものと言えます。
今年は特にこの死青が多い年でした。おそらく登熟期の長雨と日照不足が原因でしょう。光合成をしないと上手く種に栄養を蓄えられない、ということがよく分かります。日照量が十分にあればこの死青も整粒(形が整ったコメ)になって収量はもっと上がっただろうになぁ。

それにしても何で日本は緑のことを青って言うんでしょうか。青りんごとか、青信号とか、青々した木々とか。。。

僕らはみんな生きている

稲刈りシーズンは乾燥機の様子を見るため、日の出前にチャリンコで作業場へ向かいます。
朝露で湿気を帯びた地面からは藁と土の香り。ひんやりとした空気の中、どこからともなく聞こえる鳥の鳴き声を耳にしながら短い距離を走ります。いつも通りの安曇野の朝ですが、日々違う顔を見せてくれるので毎日新鮮な気持ちになります。

さて今回は早起きで目にした風景をいくつか紹介させて下さい。

20211013no07夜明け前の世界に燃えるような朝焼け。もうすぐ眩しい太陽が大地に長い影を伸ばします。

20211013no08時には霧がまくことも。秋の風に吹かれ霧が晴れると、山頂が紅葉した北アルプスが姿を現します。20211013no09朝露に濡れた稲の上にはカエル。朝日を見つめ何を想う?

20211013no10ふと下に目を落とすと、道端の雑草は朝露の宝石をまとっています。朝日に照らされ大地がキラキラと輝きます。
ん~、みんな生きているんだなぁ。命あふれる安曇野を実感できた朝でした。

数字で見るお米の話

ところで皆さん、突然ですがお米って1粒植えると何粒になるか知っていますか?
10倍?100倍?
今回はそんな米の増え方に着目してみましょう。

はい、まず1粒の種もみをまくと1本の苗が出来ます。

次に1本の苗を田んぼに植えると茎数が増えていきます。これを「分げつ」と言い、1本が10本くらいになります。

そしてそれぞれの茎から稲穂が出てきます。
品種や地域に左右されますが、ここら辺では1本の稲穂には約100粒の籾がつきます。

20211013no11この写真の稲は100粒以上ついているようです。

これを収穫するので、順を追って計算すると
1粒×10本×100粒=1000粒!!!
なんと1粒植えれば1000倍になって収穫できる!
地域によってかなり差が大きいので一般的には600~1000倍と言われています。それにしても凄い倍数ですよね。世界各地で主食とされる訳ですね。

ではここで問題です。1粒が1000倍になるとして、感覚で答えてみてください。

Q.茶碗一杯のご飯を作るには何粒の種をまけばいいでしょうか? ※炊いたご飯が茶碗一杯で150gとする。

20211013no12茶碗の大きさはそれぞれなので前提条件を付けさせていただきました。
思い浮かべましたか?

炊いたご飯150gというのは、炊く前(精米)だと65gになるそうです。
キーポイントは65gの白米って何粒かってことですよね。
農林水産省のサイトによると精米65gで約3,250粒とありました。
ってことは3250粒÷1000=3.25粒ってことですね。

約3粒が上手く育てばお茶碗一杯になるってわけです。おかわりしても6粒! 種単位で考えればなんてリーズナブル!

ちなみに我が家では今年7.6haのコシヒカリを作って50tの玄米を収穫しました。
50tの玄米は精米すると1割減って45tになります。
精米1g=50粒とすると、45t=2,250,000,000粒!
茶碗換算で約692,000杯! 茶碗換算て! よく分からんわ(笑)

一人当たりの年間消費量で割り返せば何人分のお米を作れているかが分かるのですが、そろそろ疲れてきたので興味がある方は色々な視点で調べてみてください。子供の自由研究なんかで取り上げても面白いと思います。

秋満喫

20211013no13庭にある山椒の実も赤く色づいています。この山椒の匂いが何とも言えず癖になってしまい、触っては手についた匂いを嗅いでしまいます。

20211013no14子供たちは恒例のサツマイモ掘りに夢中。今年は焼き芋に最高の「紅はるか」という品種を植えたので、焼き芋が楽しみです。

20211013no15収穫祭は恒例、信州A5ランクの牛肉と松茸の贅沢すき焼き。こんなん、ご飯が新米でなくても美味いわ!

20211013no16外食、観光業が大打撃でコメの需要減少により、今年の米価は大暴落。かけているコストは変わらないのに収入が減るのは正直しんどいですが、辛いのはみんな一緒。自分ができる範囲の対策をしつつ頑張ります。
何より、美味しいものが溢れかえる秋の季節! 落ち込んでないで秋の味覚を堪能して楽しまなきゃ損ですよね。

日は昇っては沈んでの繰り返し。雨も降れば風も吹く。全てが何かに必要なことなのでしょう。
環境が変わって気付くことが多い世の中です。今年も笑顔で終えることができるようにあと3か月を頑張りましょう!
それではまた次回!!!

この記事を書いた人

安田大樹さん

北アルプスをのぞむ安曇野市は、1等米比率日本トップクラスの長野県を支える米どころ。25歳でお米農家を継いだ安田大樹さんは、おいしいお米を作り続けることが「ふるさと安曇野の景観を守り、地域を楽しくしていくことにつながる」と考えました。

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