大樹の農事録
[大樹の農事録]

農家ならではの年越しと、日本ならではの食文化

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします!

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令和も4年になりましたが、みなさまはどんな年末年始を過ごされたでしょうか。
こちら安曇野はひと言で「極寒」でありました。

朝の温度計はマイナス12℃。最高気温が0℃まで上がらない日も((+_+))

もはや空気が凶器! 顔にあたる空気が痛―い!

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用水路には極太のつららが連なっていました。

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野には一面、霜の花が咲いています。

朝の散歩では太陽に照らされた霜がキラキラと虹色に輝き、本当に宝石を散りばめたように見えます。

でも頑張ってもキラキラの様子が写真に写せない……カメラ技術が足らん!!

大豆の選粒

さて、年明けの挨拶をしたばかりで何ですが、「時を戻そう!」

12月は大豆の選粒の時期です。

刈り取って乾燥済みの大豆が作業場に盛りだくさん。
水分は均一ですが、まだ茎や鞘などが混ざった状態です。

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この大豆から茎などの異物を取り除き、さらに「大」「中」「小」に分けて袋詰めする作業が「選粒」です。

斜めになったベルトコンベアの上で大豆を転がすことで、奇形粒や割れた大豆は上へ運ばれ不良品出口へ、丸い大豆はコロコロ転がり選別網へ運ばれます。

選別網で大きさを揃えられた大豆は計量器へと運ばれます。

今年は茎やごみなどの異物が少なかったので、順調に選粒作業を進めることができました。

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今年は粒が小さめ。品質はまぁまぁといったところ。

収量を過去最高にするべく、いろいろと手を掛けたのですが、播種後の湿害の影響が最後まで尾を引きました(-“-)

あとちょっとで中粒になりそうな品質の良い小粒が多かったので、これが大きかったらどれだけ収量が伸びただろうか。

手間を掛けただけに非常に残念です!

米価が大暴落のなか、ありがたいことに国産大豆の需要は根強くあるので、大豆も試行錯誤しながら全力で作っていきたいと思います。

年神様を迎える準備

さて、大豆の選粒を少し残しつつ、年末の恒例行事の注連飾り制作の時間です。

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令和3年は厳しい年だったので、注連飾りは縁起を担ぎ、例年より大きめに作りました。

飾りつけも、いつもより派手め。

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神棚に飾る用の大根注連も気合を入れて作った結果、神様が見えなくなってしまう事態に。

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そして、例年より早めに注連飾りを作ってしまったので、年末の玄関はこんな状況に(;^ω^)

何とも、日本人の国民性が現れる玄関になってしまいました。

我が家には神様が多いので、注連飾り作りは準備も含めると2日間程度かかってしまいます。

買えば早いのですが、何となく注連飾りは手作りにこだわりたいですね。売り物より地味でも、感謝の思いが込められる気がします。

令和3年で一番の出来事

令和3年を振り返ってみると楽しいことや厳しいことがありましたが、何といっても一番の出来事は、妻が「大特免許(大型特殊自動車免許)を取る!」と言い出したことでしょう。

自分で言い出し、自分で教習所に申し込みに行って、ササッと取得してきました。

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私の母もトラクターの運転ができるのですが、近所で女性がトラクターに乗る姿は我が家以外に見ることはありません。

そもそもトラクターに乗ると言い出すこと自体が奇跡なんですよね!


さっそく秋起こしから乗車してもらいました。教習所で乗った車とトラクターでは違うので、実際に圃場へ入り現場講習です。

60馬力の新しいトラクターは自動制御がつきすぎていて手動操作を覚えられないので、いきなり古株の90馬力トラクターに乗車。まずは手動操作と大きさに慣れてもらいます。これに慣れれば60馬力くらい楽勝だぜ!

 

昔から機械は男が運転するものというイメージがありますが、私の意見としては女性こそオペレーター作業をするべき。

だって外で作業する補助者の方が大変だもの。

 

苦手意識は慣れでどうにかなるし、何といっても最近のトラクターの居住空間は快適♪

男がふんぞり返ってトラクターから指示を出す時代じゃないってことですな。

来年は春起こしから頑張ってもらいましょう。

農家の年越し

そんなわけで年末に奇跡が起きた我が家は、気持ちよく年越しを迎えることができました。

そして、農家の年越しの行事といえば「お餅つき」ですよね。

今年は例年通りの大人数とまではいきませんでしたが、隣組の仲間や友人達と一緒に餅つきをしました。

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餅つき前に、年季の入った臼と杵を洗うところから。

この臼はいったい何年前のものなのかわかりませんが、とにかく重い! 動かすだけでひと苦労です。

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臼は前日から洗って水を張っておかないと餅がくっついてしまうし、細かな割れ目に挟まってしまい、上手に餅をつくことができません。

そう! 餅つきは前日から始まっているのだ!

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参加する子どもが増えてきたので、杵も「小」「中」サイズを手作りして、小さい子もぺったんぺったんできるようにしました。

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つきたてのお餅は市販の切り餅とはまったく違う食感と風味がします。

お皿にくっついて離れないお餅を頑張って取りながら、それぞれ「きな粉」「ごま」「砂糖醤油」「あんこ」「大根おろし」など、好みの味つけで頬張ります。

子どもの一番人気は「あんこ」。

私のお気に入りは「ごま」と「砂糖醤油」かな。いや、「おろし」も捨てがたいなぁ。結局、全部うまいんだよなぁ~。

ちなみに「お餅つき」は日本独特の食文化なんだそうですよ。

以前、お餅の加工会社が海外へお餅を売り込みに行った際、文化の違いから現地でまったく受け入れられなかった、という話を聞きました。きな粉やあんこなど、お餅につけるものも日本特有のものが多いので、海外での普及は難しいんでしょうね。

日本の歴史が育んだイベント「お餅つき」。まさにお餅は日本の食文化の代表格と言ってもいいでしょう。

近年、急速に流通やコミュニケーション技術が発展するにつれ、文化の多様性が進む一方で、昔からの文化が薄れていっているように思います。多様性あふれる時代だからこそ、こういった伝統文化や食文化を大切にしていきたいものです。

そんな感じで今回の農事録はこの辺で。

寒い冬ですが、みなさま風邪などひかれませんよう、どうぞご自愛くださいませ。

では、また来月お会いしましょう。

 

この記事を書いた人

安田大樹さん

北アルプスをのぞむ安曇野市は、1等米比率日本トップクラスの長野県を支える米どころ。25歳でお米農家を継いだ安田大樹さんは、おいしいお米を作り続けることが「ふるさと安曇野の景観を守り、地域を楽しくしていくことにつながる」と考えました。

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