大樹の農事録
[大樹の農事録]

大樹の、安曇野うまい米づくり農事録 第5回

「暑さ寒さも彼岸まで」とはよく言ったもので、お盆も過ぎると風が変わり過ごしやすくなってきました。朝起きた時のひんやりとした空気が秋の訪れを感じさせる今日この頃です。皆様今年の夏は楽しめたでしょうか。こちらは台風や大雨による被害は少なく作物も順調に生育しています。

さて、お米の様子はと言いますと、いよいよ稲刈りカウントダウンでございます。穂は全て出揃い黄金色に色付き始めています。昨年は8月末から稲刈りが始まったのですが、今年は7月の日照不足と最近のぐずついた天気のせいかあと一歩が進まず、足踏みをしている状態です。

安田さん農事録

 

 

知っていますか?稲の花言葉

皆さん、稲の花って見たことありますか? 茎から穂が顔を出す出穂(しゅっすい)後、朝方に籾がパカッと2つに割れ、間から雄しべが6本伸びてきます。これが稲の花。しかし開花している時間はほんの僅かで受粉が終わるとすぐに籾が閉じてしまいます。なので籾が開いている状態を見るのは朝早くでないと難しいです。実はわたくし、米農家でありながら稲花粉に敏感に反応する体質でして(笑)、毎年「くしゃみ」「鼻水」というレーダーでいち早く開花期を察知することができます!!

安田さん農事録

 

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花というには非常に地味な見た目ですが、すべての籾から白い雄しべがピロピロと顔を覗かせる様子は凄く愛らしいです。実はそんな可愛い稲の花にも花言葉がついています。小さな見た目からは想像できませんが、花言葉はなんと「神聖」!
所説ありますが、昔々お米は「神人共食」と言われ、お米は神様の食べ物で人は神様のお下がりを頂き、神様と同じものを食べることで神の祝福を受けられると考えられていました。そのため歴史を通して大変貴重なものとして大切に扱われてきました。神が「召し給う」ものという意味で「メシ」という呼び名に転じたという説もあります。また、食料としてだけではなく草履や俵、家畜の飼料や敷き藁など生活に密接に結びついていたので、稲の語源は「命の根」という説もあります。神事の際にも必ずお米を盛りますよね。神様と同じものを頂き、籾も藁も全て生活の糧になると考えれば、「神聖」という花言葉も納得です。
今年も実りを与えてくれる神様に感謝しつつ、食べる人の笑顔を想って最後まで大切に米作りをしていきたいと思います。

 

やっかいな稲の天敵

穂も出揃い、受粉が終わるとスカスカの籾の中にどんどん養分が詰まって膨らんでいきます。このとき籾をつぶしてみると、中身は白いミルク状になっています。

安田さん農事録

 

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イメージとしてはパンパンに膨らんだ籾の中にミルクが詰まっているような状態だと思ってください。こうなるとやってくるのが雀の大群! 団体で飛来してプチプチと稲を潰しては中の養分を吸い取っていきます。少しならいいんですが、餌場として認識されると収量は半減してしまうので、とにかく雀除けには気を遣います。雀も重くて飛べなくなる程お米を食べるのであきれたものです。

そして稲にとって最も厄介なのが「カメムシ」による被害。皆さんが想像する大きなカメムシではなく、米一粒程度の蚊くらいのサイズの小さなカメムシです。カメムシは細長い口で籾の隙間から中の養分を吸い取ります。そしてこの時カメムシが刺した跡は後々黒い斑点となってお米に残ってしまいます。お米の検査時、この斑点米が0.1%を越えると2等米、0.3%を超えると3等米になってしまいます。等級が落ちれば当然価格が下がるのでカメムシ対策は重要で、ここら辺では2回の防除が推奨されています。しかし田んぼ1枚だけ防除しても周りがやらなければ隣の田んぼからやってきてしまうので、カメムシ対策には地域的な取り組みが必要になってきます。

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↑こいつは比較的大型の「ホソハリカメムシ」。お食事の真っ最中のご様子。なんと忌々しい"(-""-)"
この他にも「アカスジカスミカメ」「アカヒゲホソミドリカスミカメ」「クモヘリカメムシ」等様々。カメムシはイネ科の草に付く種が多いので、カメムシを寄せ付けないために田んぼの畔草をまめに刈り取るようにして、カメムシが住みにくい畦畔環境をつくるのが基本ですが、それ以降は殺虫剤に頼るしかありません。

 

どう思います?斑点米

これは完全に私個人の意見になってしまうのですが、私はカメムシ対策は畔草管理以上のことはしなくていいんじゃないかと考えています。
第一に斑点米は見た目は悪いけど毒ではなく問題なく食べられます。カメムシに効く殺虫剤を撒いても影響のあるのはカメムシだけではありません。広大な面積で殺虫剤を撒くことになれば環境負荷は大きく、何よりそれだけお米に多く農薬を使うことになってしまうので、「毒じゃない斑点米を減らすために農薬を2回も多く使う必要があるの?」「それって本当に食べる人の健康のことを想ったらどうなの?」と考えてしまうのです。
現在は色彩選別機(色選)といって斑点米を機械的に取り除ける装置も普及してきています。私の家では施設の新設と同時に色選も導入しました。なので斑点米は農薬を使わずとも機械的に取り除くことができます。しかし、だからと言ってうちクラスの規模の農家がカメムシ防除を全くしないと、近隣の農家がカメムシ被害を受けることになり、結果等級が下がって周りの農家さんの売り上げが落ちてしまいます。
そんなジレンマに悩まされながら、スポット散布でカメムシ防除をしているのが現状なのです。理想は色選の普及拡大と等級判断における斑点米の混入率の上限を引き上げ、更に消費者に斑点米が毒や異物ではないことを理解してもらうことでしょうか。

お米に限らず現在の農産物に対する消費者の「見た目」に対する評価は年々厳しくなってきています。見た目を良くするために遺伝子組み換えをして、沢山の農薬を使う。農家は農薬は少ない方がいいとは思っていても、そうしないと売れないからしょうがないと農薬を使う。
私は消費者の求めるものに合わせ過ぎた物作りは、必ずしも消費者のためにならないと思います。必要なことは生産者から情報を発信して、双方納得した上でもの作りをしていかないと。今はSNSが普及して生産者と消費者の距離がぐっと近くなったと感じます。なので、今後も農業のリアルをどんどん発信していきますので、皆さんに少しでも想いを感じ取ってもらえれば嬉しいです。
以上。近所の農家が聞いたら怒られそうな内容を書きました(汗)。

 

自然で遊ぶなら長野県へ

ここから大豆のことを書こうかと思ったのですが、大豆のことを書き始めるとまた長くなりそうなので収穫時にまとめて紹介するとして、ちょっと夏休みの様子を書きます。
皆さん長野県は「キャンプ場の施設数」が全国1位ということを知っていましたか? 有名なところから名前の知られていないようなマイナーなところまで、多彩なキャンプ場が全県にあります。キャンプ場でなくてもキャンプが出来るような自然環境が近くにあり、川遊びには困ることがありません。海は無いですがね。。。
家の近くにも烏川や中房川など田んぼにも使われる清流が沢山あります。

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地元人しか知らない場所は休日でもほぼ貸し切りで遊び放題♪

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水中眼鏡をつけて飛び込めばカジカやイワナを見ることが出来ます。大人は釣りも出来ちゃう!
帰りには日帰り温泉に入って疲れを癒します。そう! 長野県は温泉地の数が北海道に次いで全国2位を誇ります。大抵どこの町にも温泉がある! 日々気軽に温泉に浸かれる幸せな県なのです。百名山の数も全国1位なので登山するにも最高。自然の中で目一杯遊びたいと思ったら是非長野県にいらして下さい! 何なら住んでしまえばキャンプもスキーもやりたい放題ですよ。
お盆には親戚や近所の子供たちを集めて流しそうめんとBBQをしました。流しそうめんの組み立ては子供たちに全て作らせ、親はビールを片手に高みの見物。

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あーでもない、こーでもないと言いながら同じ目標に向かって皆で一つのものを作り上げる。それぞれの性格が表れて見ていて面白いです。

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流すものはそうめんだけじゃなく、ミニトマトやゼリーやブルーベリー等様々。そりゃ面白いに決まってますよね。竹のどちらに陣取るかでそうめんの取りやすさも変わります。こういう小さな気付きが子供には大事。
この後は「バーベキュー」→「ビンゴ大会」→「スイカ割り」→「花火」とイベント盛りだくさんのお盆休みでした。これを庭で一日中大騒ぎでやって周りから苦情が来ない。むしろ「にぎやかじゃんかい」と人が集まってくるくらいなので、近所の人たち皆最高です。
この子供たちもこんな経験を沢山積んで、またこの先の地域を形作っていくんだなぁ。自分もこの人の流れの中の一員。地域に何を残し、子供に何を繋ぐのか。無邪気に遊ぶ子供たちを見てふとそんなことを思うのでした。 この農事録が掲載される頃には稲刈りも始まっているはず。次回は新米情報をお届けします。

 

農事録番外編
長野県のおいしいおつまみ:8月

さてさて、作ったことがある人はご存知かもしれませんが、基本的に夏野菜って一日にめちゃくちゃ採れます。成長の早いものは朝晩採れます。だから価格も安く、贅沢に沢山の量を使うことが出来ます。というか、自分で作っていたら食べきれずに困ります。今日はナスが大量に採れてしまった、または貰ってしまったという人におすすめの食べ方をご紹介しましょう。
「ナスの揚げ浸し」

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揚げたナスをだし汁、醤油、みりんを混ぜた汁に浸けるだけの簡単料理ですが、つけ汁にネギや生姜をたっぷり入れると薬味の良い香りが食欲をそそり、10本くらいのナスでもペロリといけちゃいます。

写真はありませんが、「ミョウガ」も旬ですね。冷ややっこにのせて、ナスやキュウリと和えて、味噌汁に入れてと、食べ方も色々できて大好きです。

8月は暑かった。仕事も辛かった。そんな時は一日の終わりのビールをいかに美味しく飲むかを楽しみに仕事に打ち込みます!
朝、冷凍庫にお気に入りのグラスを投入してから仕事へ向かい、帰る少し前にビールを冷凍庫へ入れてもらいます。シャワーで汗を流したら、冷えたグラスに凍る寸前のビールを注ぎ、グーーっと流し込む。そして旬の食材の美味しいおつまみを食べながら四季を感じる! 毎日変わらず家族一緒での食事。幸せですな。
お気に入りのグラスは「リッツェンホフ」。500mlの缶ビールが美し過ぎるほどちょうどに注げるサイズとデザイン! ビアグラスを探している方は「リッツェンホフ」のグラスがおススメですよ。

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いよいよ美味しいものが続々出てくる収穫の秋到来です。美味しいもの食べて仕事頑張りましょう! それではまた次回。

この記事を書いた人

安田大樹さん

北アルプスをのぞむ安曇野市は、1等米比率日本トップクラスの長野県を支える米どころ。25歳でお米農家を継いだ安田大樹さんは、おいしいお米を作り続けることが「ふるさと安曇野の景観を守り、地域を楽しくしていくことにつながる」と考えました。

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