大樹の農事録
[大樹の農事録]

大樹の、安曇野うまい米づくり農事録 第3回

皆様こんにちは。ひろきです。

今年は梅雨らしい梅雨ですね。特に大雨で被害に遭われた地方の方々、一農業者として本当に辛い思いです。復興には大きな力が要りますが、今の日本の食や生活があるのは、自然災害にもめげずに立ち向かってきた人たちの努力と根性の賜物です。募金等の間接的な協力しか出来ませんが、今それぞれの目の前の自分の仕事をしっかりとこなすことが復興の力になると信じ、日々の仕事に打ち込んでいきたいと思います!

 

田植の後はなにするの?

今年は梅雨が長く日照不足が心配ですが、田んぼの稲はすくすくと育っています。まとまった大きな雨はありましたが、ありがたいことに短時間で納まってくれているので、大きな被害は無く作業できています。
5月の初めに植えた苗は7月の初めではこんな感じ。稲が大きくなったので、水鏡ではなく一面みどりの絨毯といった感じです。

安田さん農事録

 

ここで稲にとって大事な作業をしなければなりません。
田植の時は苗を一株4・5本で植えていくのですが、稲は「分げつ」と言って、どんどん茎の数が増えていきます。6月下旬になると茎数が20本を超えるくらいまで分げつするのですが、このタイミングで「中干し」という作業をする必要があります。「中干し」とは田んぼの水を全部払って土を乾かすこと。水が無くなって地表面に2mmくらいの干割れが入るくらいまで圃場を乾かすのですが、そうすることで、還元状態(酸素が少ない状態)で有機物を分解する際に発生する土中の有害なガスを抜き、稲の根に新鮮な酸素を供給することができます。更に分げつを抑制し稲の茎数が増え過ぎるのを防ぐのです。
「稲の茎数は多い方が沢山お米がとれるんじゃないの?」と思う人もいるかもしれません。確かに全体量で考えれば多収になるかもしれませんね。当然茎数が多くなるとそれだけお米の粒数も増えるわけです。しかし圃場にある肥料分は限られているので、茎数が多すぎると全てのお米に栄養がいきわたらずに、白く濁ったお米や細く小さいお米が増えてしまうのです。そうなると良いお米が出来ずに品質の悪いお米が沢山とれるという結果になってしまうわけです。茎数を適正に保つことは全てのお米にしっかりと栄養を蓄えて、品質の良い美味しいお米を作るために大切なことなんですよ。
しかし、今年は中干しの時期に雨が続いて中々圃場が乾きません。4日くらい連続で日が当たってくれれば大分圃場も乾くのですが、お天気にはかないませんね。排水を切るなどの出来る限りの対策をするしかありません。そして、今後の水管理も稲の生育に大きな影響を与えていくのですが、それはまた次回ということで、田植以降の我が家の様子をお伝えしていきたいと思います。

 

蝶の背が割れると麦秋

前回の記事に麦の成長が早いと書いたのですが、予想通り麦の生育が早く、田植えが終わったと同時に麦刈りの準備に突入しました。
この頃見られるのが北アルプスの蝶ヶ岳の蝶の雪形です。

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写真が少し見づらくてすみません。この羽を広げて飛び立つ蝶の形をした雪形は「蝶ヶ岳」という山の由来にもなっています。はじめは白一色なのですが、雪解けが進むと蝶の真ん中に黒い地肌が見え始めます。地元ではこのことを「蝶の背が割れる」と言って、夏の訪れを告げる風物詩でもあります。
その頃収穫時期を迎えるのが麦!! 麦の収穫にあたる季節を「麦秋(ばくしゅう)」と言います。「麦にとっての収穫の秋」という意味らしいのですが、そもそも麦の収穫は初夏なので変な呼び方ですよね。それだけ昔の人が秋を収穫の季節と位置付けてきたということでしょうか。

 

麦刈りのタイミング

蝶の背が割れる麦秋の頃、大麦は未だかつてないほど素晴らしい姿を見せてくれていました。これは豊作の予感!

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一面金色の麦畑。一言で「麦」と言っても、うちで作っているのは「ファイバースノウ」という六条大麦です。

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大麦は文字通り小麦より大きくて、6条に並んだ粒の先に長く伸びた毛がついています。

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簡単に麦の収穫のタイミングを調べる方法を説明しましょう。まず、上の写真のように麦の穂の中で一番下(赤丸の所)についている粒を取ります。

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その粒を親指の爪で押します。

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そして軽く痕が付くくらいが刈りはじめの合図です。

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この様に爪で押してつぶれてしまう麦はまだ刈取りには早いということですね。

 

麦刈りはスピード勝負

刈取りスタートのタイミングはこんな感じ。さぁしかし、この大麦という作物、刈取り適期がめちゃくちゃ短いんです。なんと刈取り適期は4日間と言われています。その間に刈ってしまわなければ黒ずんでしまい、品質が凄く落ちてしまいます。更に遅れると穂首が曲がって刈取りの際に落ちてしまうこともあります。なので麦刈りが始まったら大忙し! とにかく早く刈って乾燥調製して出荷して。刈って乾燥調製して出荷しての繰り返しです。スピード勝負です。

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これは「コンバイン」という機械で、稲や麦を収穫するのに使います。我が家は稲と麦で別々のコンバインを使っています。この麦用コンバイン、かなり長く使っているご老体なのですが、とうとう今年の麦の収穫中に壊れてしまいました(:_;)
目指せアワーメーター(稼働時間を測る計測器)2000時間ということで、今年クローラーまで替えたのですが、1600時間で引退となってしまいましたorz。しかし悲しんでいる時間はないので、稲用のコンバインを引っ張り出してきて何とか麦の収穫を終わらせることが出来ました。

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コンバインは茎やごみ等を大まかに取り除いた状態で排出してくれます。今年は本当にピカピカの最高に良い麦でした。刈り始めの麦の水分は30%くらいあるのですが、これを乾燥機で13%以下まで乾燥させてグレーダーという機械で選別をして製品にします。

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余談ですが、麦の茎は中が綺麗な空洞になっていて立派なストローになるんですよ。三鷹の森ジブリ美術館でも麦ストローが使われてたりします。

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調整後の製品の状態がこれ。なななんと! 集計してみたら一反部(1000平方メートル)当たりの平均収量が562kgになりました! 我が家の反収レコードを更新です。品質も文句なしといえるでしょう。
梅雨らしい天気で思う様に収穫できずに焦りもしましたが、本当に良かった。やっぱり収穫が上手くいくと凄く嬉しいですね♪

 

すかさず大豆播き

まだまだ続く6月の作業。一息つく間も無く、麦を収穫したらすぐにその圃場に大豆を播きます。大豆は出来れば6月中に播きたいので麦刈りしたらすぐに圃場を耕起します。
しかし、雨で圃場がぐちゃぐちゃな場所に大豆を播いてもうまく発芽しません。そのため雨の切れ目を見計らい耕起から播種までを一気にこなします。

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大豆を上手く発芽させるには土をできるだけ細かく細土することと、排水対策をしっかりとることです。ロータリーという機械で圃場を丁寧に起こし、上の写真のロータリーシーダーという機械で大豆を播いていきます。このロータリーシーダーという機械、肥料を播いて土と混和し、ディスクで溝を切って種を落とし鎮圧するという作業を同時にできる優れものです。さらにアタッチメントで畝たてまで同時に行うことも出来ます。排水が悪い圃場だけ畝たてをするのですが、これが後々凄く重要な役割を果たします。

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写真のホッパーの中に黒く見えるのは黒豆です。うちでは「ナカセンナリ」という白大豆と「華大黒」という黒大豆を育てています。肥料も撒けるのですが、大豆に関してはうちでは基肥無しで育てています。何故か肥料を播くと過剰生育して倒伏してしまうので。まぁ肥料無しで問題なく育つならそっちの方が良いですしね。

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トラクターの中はこのようになっていて、左上に見えるモニターで一反部に肥料と種をどれだけ播くかを設定します。あとは車速に連動して機械がモーターの回転数を調整して、どんな速度で作業しても一定の肥料と種を投入できるのです。設定値と実測値の誤差は多少ありますけどね。誤差を加味した設定値にすればほぼ狙い通り播種していけます。

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播種が終わったら雑草の発生を抑える為ハイクリブームという機械で除草剤を播きます。この機械もモニターで散布量を設定すれば車速連動で薬剤を播くことが出来ます。
はぁ、、ここまでやってやっと圃場内の作業は一段落なわけです。
田植えが終わっても意外と忙しい怒涛の6月なんですよ。
読んでいるだけで疲れませんか? 私は思い出して書いているだけで疲れました(笑)
嫌いな作業No.1の草刈りも同時進行しているんですが、長くなるので今回は割愛します。
来月はお米の管理作業と大豆の成長の様子をお伝えできればと思います。

 

農事録番外編
長野県のおいしいおつまみ:6月

6月が旬の食べ物も沢山あります。そのなかでも私が特に好きなのが新玉ねぎ。略して新玉!
そのままスライスして鰹節をまぶしてドレッシングで食べるもよし! トマトスライスに合わせて食べるもよし! あのシャキシャキとした歯ごたえと瑞々しさは今しか味わえないんですよねぇ( *´艸`)
そんな新玉を使って嫁さんが作ってくれたのがこれ。

「生ハムの新玉のマリネ」

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生ハムの切り落としに新玉のスライスとレモンを加えて爽やかに仕上げてあります。
白ワインのおつまみに最高! 生ハムの生臭さを新玉とレモンが上手く抑えて新玉の食感とレモンの苦味が後を引きます。
辛口の白ワインと良く合うんだなぁ♪
また、新玉の代わりに旬の食材のズッキーニを使っても美味しいのです↓

「生ハムとズッキーニのマリネ」

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あと、「旬」というわけではないのですが、個人的に雨の音を聞きながら飲む日本酒が好きです。蒸し暑い梅雨の時期に雨の音を聞きながら、冷奴あたりをつまみに爽やかな冷酒をクイッと飲むのも粋ですよねぇ。つい先日、近所にある「安曇野アートヒルズミュージアム」というガラス工芸品を扱うお店で、ぐっとくる酒器を手に入れたので、最近はその酒器も含めて楽しんでいます。この「安曇野アートヒルズミュージアム」、昔から私のお気に入りスポットであります。お土産売り場もありますので皆さん安曇野に来た際は是非立ち寄ってみて下さい。

そこで購入した酒器がこちら! 竹をモチーフにした清涼感溢れるデザイン! これなら夏でも日本酒飲みたくなっちゃいますよね♪

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美味しく適量を、幸せを通り越さない程度に飲むのが大人の嗜みですな。
ぼつぼつ夏野菜も取れ始めています。7月のおつまみはやっぱりあれかな。
それでは皆さんまた次回(^^♪

この記事を書いた人

安田大樹さん

北アルプスをのぞむ安曇野市は、1等米比率日本トップクラスの長野県を支える米どころ。25歳でお米農家を継いだ安田大樹さんは、おいしいお米を作り続けることが「ふるさと安曇野の景観を守り、地域を楽しくしていくことにつながる」と考えました。

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