殿倉さんの農事録
[殿倉さんの農事録]

農家の事業承継

12月末から体調を崩していた父が、先月末に息を引き取りました。父は敗血症という、血液にウイルスが入って血液がうまく作れなくなる病気になり、倒れて入院した時には身体中に、それこそ心臓の弁にまで膿ができてしまっていて、すでに手の施しようがない状態でした。

数カ月前に病気にかかっていたのではないか、無理をさせてしまっていたのではないかと、悔やんでも悔やみきれません。

歩けなくなる直前まで普通に仕事をしていた父。人一倍、仕事をしなければという思いが強い人でした。

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事業継承のタイミング

そんな父から事業承継をしたのは約2年前のこと。じつは思ったよりも、ちょっと早いタイミングでした。今となっては、早めでよかったなと思います。父がまだ元気でしたから、代表を継いだとはいえ、困った時は一緒になって考えてくれました。正直、継いでから経営が苦しいことが多かったのですが、父が一緒にいてくれたから乗り切れたこともありました。

農家は定年退職が曖昧なこともあり、特に事業承継が遅くなるように感じます。しかし、私は事業承継は早い方がよいと思いますし、早くしておいてよかったと思っています。私の父が突然倒れたように、いつ誰に何が起きるかなんて、ほんとに想像できないんです。

事業承継する覚悟、そして受け渡す覚悟。どちらも必要ですし、お互いの気持ちが前向きにならないと、なかなか進まないことでもあります。「いつかは」と思っている人が多いかと思います。でもその「いつか」は20年後かもしれないし、明日かもしれない。

事業継承はまだ先と思っている人も、十分に準備しておく必要があると思います。先代が元気なうちに行うことが重要ではないでしょうか。

事業継承はどうやるの?

どんなことから始めればいいの?」と思う人も多いと思います。私の友だちの農家の後継が書いた、事業承継に関する書籍を紹介します。

tonokura01-20230222『今日から始める農家の事業承継』伊東悠太郎、竹本彰吾(著)

JA全農職員で富山県の種籾農家の長男の伊東悠太郎さんと、石川県の大きな米農家の後継である竹本彰吾さんが著した、事業承継の事例や方法をまとめた1冊です。

私が4Hクラブ(全国農業青年連絡協議会)の役員をやっていた時に出会った二人。伊東さんには全農職員の時に飯田に来てもらい、事業承継の講演をしてもらったことがありました。

竹本さんは以前、紹介した農業系Podcast界でも有名ですね。私と同じ年だけど、高校卒業する時から事業承継をお父様と一緒に10年かけてやってきたというすごい人。そんな二人の事業承継する側からの視点で書かれた本です。

 tonokura03-20230222『東大卒、農家の右腕になる。小さな経営改善ノウハウ100』佐川友彦(著)

事業承継、考えてはいるけど、まだちょっと。と思っている人には、こちらの本がおすすめです。佐川さんの「小さな経営改善」は誰でもできることばかりで、どんな農家さんにもおすすめです。

佐川さんは東大卒のエリートと思いきや、引きこもりになったり、鬱になった経験を持ちながら、栃木の阿部梨園のインターンに参加し、小さな改善を毎日続けることで阿部梨園の経営を改善されました。

ほんとにちょっとしたことから、やらなきゃいけないけど手をつけられていない、といった誰もが共感できることばかり。「自分でもできる」と思えるノウハウばかりなので、事業承継の第一歩としておすすめです。

じつは紹介した著者のみなさんは、JA広報誌『地上』でも連載中です。本の続きが気になったら『地上』も読んでみてくださいね!

この記事を書いた人

殿倉由起子さん

殿倉由起子さんは大学卒業後勤務した東京のホテルスタッフから転身して、子育てをしながらも地元の飯田市でぶなしめじとりんごを栽培する農業法人の経営者。農業のかたわら、野菜ソムリエプロの資格を持ち、夢だった農家民泊&カフェ「Cider Barn &more(サイダーバーン・アンドモア)」の運営も始まりました。

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