花井さんの農事録
[花井さんの農事録]

須坂の4つの季節を巡る農事録 




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夏の暑い盛りの
風物詩が出揃う今日この頃、
今宵は夜風にのって
町内の祭り囃子が
聞こえています。

少しくらいお祭り気分に浸れるかな?
と淡い期待を抱いてみても、
やっぱり今年も
プルーンの荷造り作業に追われ、
気が気ではない楽しみ方に
なったのでした。

たまには
翌朝の収穫なんて気にせずに
飲んで騒いで(?)
祭りを謳歌してみたい!

...果樹農家の叶わぬ夢です。



 

 

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月に入り、いよいよ桃・プルーンの連日収穫がはじまり、慌(あわ)ただしくなってきました。今年は開花の遅れが影響し、そのまま収穫期がずれこんでいるため、旬がちょうどお盆休みと重なる品種もあり、困ったことになっています。盆は市場が休みになり、その期間は農家も出荷ができません。植物には盆も正月も関係ありませんので...こんな時は、ほとほと困ってしまいます。




農家としての在り方を見失わないために


が家では通常の出荷以外に、わずかながら顧客への直接販売を行っています。消費者の方々へ直接届けることは、様々な反応や意見を肌で感じることの出来る大切な機会です。互いに顔の見える関係の中で「誰かのために」「誰かを想って」育てるということが、農家としての在り方を見失わない一番の方法であると、そう考えてはじめた直販ですが、気持ちのズレを感じることが時々あります。



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一番おいしい時期のものを食べてもらいたい

の一例で「○日に桃が欲しいんですが...」という問合せをいただくことがあります。もちろん、わが家では8月に入れば桃とプルーンを毎日のように収穫します。ですが、ずっと同じ品種ではありませんので、当然収穫の切れ目もあれば本当に良い時期(旬)も、それぞれ存在します。せっかくなら一番おいしい時期のものを食べてもらいたいと思うと、桃やプルーンの場合は、品種につき、せいぜい4、5日間程度しかなく、農家ですら直前まで読めない熟期を、消費者の方がわかるはずもありません。

ーパーなどの青果売り場には、常時さまざまな果物が揃えられていますが、それは旬を迎えた産地から次から次へとリレーのように集められたものです。いつでも手に入ることが当たり前のように暮らしていたら、ひとつの産地のごくごく短い旬など、知るよしもないでしょう。


気候がもたらす恵みを「待つ」楽しみ

地直送の最大の利点である鮮度の良さ、そして旬のお届け。工場で生産されるモノとは違い、「ナマモノ」は消費者が思うよりずっと繊細です。農家によって収穫のスタンスは違うので、一概には言えませんが、人の都合に合わせるのではなく、気候がもたらす恵みを「待つ」楽しみを多くの人が抱いてくれたらいいなと、この8月は幾度となくそう思うのです。


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作り手と食べ手が互いに「一体感」を持つ

時に、適期に収穫することが産地の旬を支えるのだという自覚を、より農家は持つべきだと感じています。自分の都合だけで収穫する農家はもってのほかですが、残念ながら皆無ではないという現実があります。双方の利益を守るためには、どんなことが今必要なのだろうかと、最近よく考えます。なかなかよい考えは浮かびませんが、ただひとつ、作り手と食べ手が互いに「一体感」を持つこと。それがより良く食べ、より良く暮らすことに繋がるのではないかと思っています。


真夏の果物をどうぞお楽しみ下さい。

それでは、今回はこのへんで。



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この記事を書いた人

花井かおりさん

花井かおりさんは長野県北部の須坂市で、ご主人とその両親との4人で農園を営みます。就農したのは6年前。もも、プルーン、りんご、ぶどう、そしてアスパラガスといった果樹や野菜の多品目栽培です。「地に足をつけた暮らし」をいとおしみ、母屋のそばに建つ小さな家とともに「生活の延長線上に仕事がある生き方」を楽しみつつ、農とそれにかかわる自己を見つめるかおりさん。彼女の4つの季節を巡る農事録です。

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