花井さんの農事録
[花井さんの農事録]

須坂の4つの季節を巡る農事録 




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照りつける日射しに
目もくらむような季節になりました。
顔を上げれば
そこには確かな夏空があり、
刻々と変化する雲の形が
面白くて日に何度も眺めてしまいます。
日頃、
果樹を見上げることが多いせいか、
空を見上げることも
クセになってしまったなぁ、
と感じる今日この頃です。



 

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かった摘果作業をほぼ終え、今は畑の草刈りや摘果の見直し作業に追われています。家の側に植わる早生の桃がほんのりと色付き、また周辺の農家もネクタリンやプラムの収穫を始めるようになり、まだまだ先と思っていた収穫期がいつの間にか目前です。

 

お湿りと日照りを繰り返し、果実はぐんぐんと大きくなります。そのスピードに毎年果樹農家は翻弄されるのですが、それに伴い、実の重みで垂れた樹の枝が折れてしまわないかという心配が頭を離れないのもこの時期です。もちろん、摘果期間中に荷重のかかる太い幹などを棒状のもの(支柱)で支えますが、嵐のような夕立があった時などは気がかりで落ち着きません。翌朝畑へ行ってみると「あぁ折れてしまった...」なんてことがあるからです。時には、支柱を設置するタイミングがほんの少し遅れたせいで折れてしまった、ということも年に一度か二度。申し訳ない気持ちと自分の怠慢さに落ち込むこともしばしばです。

畑に何十本とある樹にすべて支柱を設置することは結構な重労働です。それでも、ここまで育てた実をきちんと収穫したい、なるべく長く樹を育てたい、という気持ちがある農家にとっては、決しておろそかにできない作業です。

比較的若い樹は枝が柔らかく、しなりもあって折れる心配は少ないのですが、樹齢が20年30年になった樹は幹の中心部がスカスカになってしまい、強度はあまりありません。ただ、果樹は歳を重ねるほど良い実を付けるようになります。若い樹の実にはない風貌と、円熟した味わいが魅力なのです。

 

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が家の畑の一つに、私と同じ40年を少し過ぎた年齢のりんごの樹が植わっています。どの樹も内部は上述のような状態で、ところどころ病気の治療跡もあり痛々しい姿ではありますが、毎年立派な実を成らせます。その実の何とも言えない美しい曲線を見るたび、これに引き替え人間は年老いてもなお、このようないい仕事ができるだろうか?などと考えてしまいます。あの瑞々しさ、甘さ、酸味。くだものでしか得られない味に出会う時、いつか私もこんな風に味わい深さを持つことができたならと願うのです。

 

果樹農家は桃やりんごを作っているのではありません。くだものを生むのはあくまでも樹です。良い実を付けてもらうための世話や管理が私たちの仕事です。後継者不在により、老齢の大きな樹が切られてしまう光景は珍しいものではなくなりました。年老いた樹は得てして作業性が悪く手間もかかるため敬遠されがちですが、生育の盛んな若い樹ではやはりあの味を生むことはできません。恵みを永く分け合うために、前代から引継いだ本来のおいしさを後世に受け渡すことも、私たち果樹農家の使命なのかもしれません。

 

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本格的なくだもののシーズン。自然な水分を身体に摂り入れ、厳しい暑さを乗り切りたいものです。

それでは、今回はこのへんで。

 


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この記事を書いた人

花井かおりさん

花井かおりさんは長野県北部の須坂市で、ご主人とその両親との4人で農園を営みます。就農したのは6年前。もも、プルーン、りんご、ぶどう、そしてアスパラガスといった果樹や野菜の多品目栽培です。「地に足をつけた暮らし」をいとおしみ、母屋のそばに建つ小さな家とともに「生活の延長線上に仕事がある生き方」を楽しみつつ、農とそれにかかわる自己を見つめるかおりさん。彼女の4つの季節を巡る農事録です。

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