大樹の農事録
[大樹の農事録]

大樹の、安曇野うまい米づくり農事録 第1回

安田さん農事録

虹の掛かる北アルプス。こんな素敵な安曇野で農業をしています

はじめまして。安田大樹です。大樹と書いて「ひろき」と読みます!
先月まで農事録を執筆されていた、りんご農家の古田然君からのご縁がありまして、今月より農事録を担当させて頂きます。
図らずも令和元年、改元月からのスタートということで、令和の流れと共に日々の暮らしを綴っていけたらと思います。

 

まずは自己紹介

私は1986年生まれ、今年33歳になる牡牛座B型、長細い体形の働き盛りの3児のパパでございます。
大学卒業後しばらく建設会社の現場監督をしておりましたが、色々ありまして実家で就農することを決意しました。そして今年で就農8年目になります。
実家が農家だったので親元就農ということになります。「いつかは継がなきゃなぁ~。」と漠然と思ってはいたのですが、思いがけず早くの就農になりました。しかし今思えば、若いうちに就農しておいて本当に良かったと心から思います。
家は安曇野市で大昔から続く農家です。作っているものはお米と麦と大豆で、沢山の面積で耕作するいわゆる「土地利用型農家」と呼ばれるやつですね。現在耕作面積は22ha程ですが、担い手不足の影響で年々増えていっているのが現状です。

当時は遣り甲斐とか使命感などは特になく就農したのですが、色々な人との出会いや地域での暮らしを重ねていく中で、農業に対する考えは年々深くなっていきました。今では農業を仕事にできて本当に幸せだと感じています。そこら辺の考えを書き始めるとすごく長くなるので、家や私のことは追々小出しにしていければと思います(^^;)

 

安曇野の春は弾ける様にやってくる!!

私の住む安曇野市の紹介を少し。皆様ご存知のように長野県は寒暖差が大きく、一日の気温差が20℃以上になることはざらにあります。安曇野市ではこの時期最高気温が20℃を超えることが多いんですが、最低気温は5℃以下になることもあるので、まだしっかりこたつとストーブが活躍中です。多分5月いっぱいありますね(^^;)。また一年を通しても寒暖の差は非常に大きく、景色の変化だけでなく、季節ごとに変わる「空気」で四季の移り変わりを感じることができます。季節の変わり目には、頬に当たる風の質感や匂いが変わるのが本当に分かるんですよ。
そして、現在安曇野は春真っ盛り! 冬の間は白と茶色のモノトーン色だった大地が、4月に入ると一斉に動き出します。毎日の犬の散歩で変化が感じられるほどに草が生え、花が咲き、大地が色付いていきます。その姿は、安曇野の厳しい冬を耐えてきた植物が、春がきた喜びを身体いっぱいで表現しているようにも見えます。そのため昔から「安曇野の春は弾ける様にやってくる」と表現されています。昔の人は言葉遣いが上手いですね。

安田さん農事録

一斉に咲き誇る草花。文字通り「景色が色付く」安曇野

そして、この景色を見ると「今年も始まるなぁ」と思うと同時に、草との戦い(草刈り)の火蓋が切って落とされるのです(-_-;)

「あぁ、草刈り嫌だなぁ。。。」

 

4月の農作業

5月といえば田植えなのですが、実は田植えまでにやらなければいけないことが沢山あります。
簡単に挙げると、「苗の準備」と「圃場の準備」です。

苗の準備は、お米の種である種籾をそのまま苗箱に撒いても上手く芽が出ないので、まず種籾を10℃~15℃くらいの水に一週間くらい漬けておきます(浸種)。
次に29℃のお湯の中に入れて24時間くらい加温します(催芽)。そうすると芽が動き出し、籾の間から顔を出します。

安田さん農事録

 

白く見えているのが芽です(正確には芽と根)。この状態のことを催芽籾といいます。催芽籾を冷水で冷やし、芽の動きを止める芽止めの作業をし乾燥させ、ここまできてやっと種まき準備が整います。
これを播種機で苗箱に均一に撒いていきます。

安田さん農事録

 

播種機は苗箱に床土→水→種籾→覆土の順番で、それぞれが定量投入されていきます。
そして被覆材をかけてハウス内できちんと温度管理をすると、一斉に芽が伸び始めます。

被覆材をとった後は上に乗った土を洗い流す「芽洗い」という作業をして太陽の光で緑化させ、2週間くらいしっかり温度と水の管理をすると、やっと田植えの苗が出来上がるのです。

安田さん農事録

 

安田さん農事録

 

昔から、良い苗を作れば半分成功したようなものだという意味で「苗半作」という言葉があり、その通り、苗作りは全ての作物において非常に重要な作業なので凄く神経を使います。

安田さん農事録

 

朝一番の芽は水を吸い上げ葉先に水滴をつけます。近くで見ると凄く幻想的。
そして、この苗一本一本が安曇野の風景になります!!

圃場の準備はというと。まずは「春起こし」。一冬越えて締まった土をトラクターで細かくし、よく空気と触れ合わせ乾燥させます。
次に「荒代(荒くれ)」で田んぼに沢山の水を入れ、トラクターでかき回し、水と土をよく混ぜ、表面の高低差のムラ直しをすると同時に、土をドロドロした状態にします。
水が引いてきたら「植代(代掻き)」です。ドライブハローという機械を使い、少なめの水で圃場の藁や草等のゴミを土中に埋没させ、表面を均平に仕上げます。とにかく平らでゴミがない圃場を作るのが大事です。

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植代後の田んぼは綺麗な水鏡になり、残雪の北アルプスをくっきりと映し出します

これで田植えをするための圃場の準備は完了です。圃場の仕上がりも今後の作業全てに影響してくるので、一枚一枚丁寧に仕上げていきます。

補足ですが、作業の方法や苗の作り方、管理の方法等は各農家さんによってやり方や呼び方が違います。私の家も同じお米でもいくつもの違った作り方をしていますので、ここでは代表的な作り方の一つを説明しています。これが全てだとは思わないで下さいね。

長くなってしまいましたので、今月はここら辺で。次回はいよいよ田植えの様子をお伝えできればと思います。

しかし今年は麦の生育もめちゃくちゃ早い! 田植えが終わったらすぐ麦刈りになるかなぁ。麦の顔色に焦らされながらの田植えになりそうですが、目の前の仕事を確実にこなしていくしかない! 頑張るぞ!

 

農事録番外編
長野県のおいしいつまみ:4月

「長野県のおいしい食べ方」というWebマガジンで記事を書かせて頂くので、私が大好きな長野県の"旬"の美味しい食べ物も紹介していきたいと思います。
やっぱ誰でも旨いものを食べると幸せになると思うんですよ♪
で、旬のものって季節を感じられるし、その時にしか食べられないし、めちゃくちゃ贅沢な気持ちになりますよね。
そんなあなたの暮らしをちょっぴり幸せにするであろう旬の食べ物を、私が自己満形式で紹介していきたいと思います。
※私が酒好きなので基本的につまみ的なものが多くなります(笑)

菜の花のからし和え

安田さん農事録

 

菜の花をだし汁と醤油とからしで和えたやつ。菜の花の香りと茎の歯ごたえが心地よく、つんと鼻に抜けるからしのアクセントがたまらない!
菜の花って見た目も楽しめるし、緑肥にもなるし、油も作れるし、凄いですね。

 

山ウドの粕漬とこごみ

安田さん農事録

 

長野県の春といえば山菜!!! この他にもまだまだあるけど、今回は山ウドとこごみを紹介。
山ウドは柔らかく風味が良いので最高です。春の味って感じです。味噌汁に入れてもいけます。ここら辺では畑に生えているウドは灰汁が強く硬いので「里ウド」と呼び、山ウドと区別しています。山ウドを採ってきて畑に植えても数年で里ウドになってしまうのが不思議です。やはり標高や気候の影響で山ウドの味が作られるんだろうなぁ。自然の恵みに感謝。
こごみは、茹でて鰹節と出汁で和えるだけ、と簡単に調理できます。茎のコリコリとした食感と丸まっている歯の部分のクニクニとした食感のハーモニーが楽しい。

春の食べ物は少しエグミがあるものが多いですが、春の苦味を食べると身体が起きるらしいですよ。「春の皿には苦味を盛れ」ということわざがあるように、少し苦いものを食べることで身体が冬モードから春モードにチェンジするそうです。
ん? そう言われてみれば、何か身体が春っぽくなった気がする\(◎o◎)/!!
それにしても、山菜を前にするとビールより日本酒にいきたくなるのは私だけでしょうか。これちょっとした飲み屋で頼めば結構な額取られますね。それが普通に食べられる環境。旬の山菜と地酒。幸せか!!

この記事を書いた人

安田大樹さん

北アルプスをのぞむ安曇野市は、1等米比率日本トップクラスの長野県を支える米どころ。25歳でお米農家を継いだ安田大樹さんは、おいしいお米を作り続けることが「ふるさと安曇野の景観を守り、地域を楽しくしていくことにつながる」と考えました。

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